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銀河フェニックス物語Ⅰ【少年編】

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レイターとアーサーが十二歳から十五歳まで乗っていた、戦艦アレキサンドリア号での物語。
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2022年11月の記事一覧

銀河フェニックス物語<少年編>第十一話 情報の海を泳いで渡れ(3)

「帰るさ」 「次の店へ行かないのか?」 「もう一度計画を立て直す。飢え死にするまでには時間があるが、射殺されたら終わりだからな」 「ダグ・グレゴリーに教わったのか?」  答えるまでに間があった。 「う~ん、そうだな。一か八かはどうにも手がない時だけにしろ、って言われててさ。この船には一か八かで乗り込んだぜ。どこ行きの積荷か選んでる余裕はなかったからな」  慎重かつ大胆な行動。  アレクサンドリア号に密航したレイターが二週間もの間、誰にも見つからずに潜んでいられたのは偶然で

銀河フェニックス物語【少年編】第十一話 情報の海を泳いで渡れ(まとめ読み版)

 戦艦アレクサンドリア号、通称アレックの艦。  銀河連邦軍のどの艦隊にも所属しないこの艦は、要請があれば前線のどこへでも出かけていく。いわゆる遊軍。お呼びがかからない時には、ゆるゆると領空内をパトロールしていた。  僕は落ち着かないでいる。  同室のレイターは鼻歌を歌いながら戦艦のプラモデルを作っていた。三百五十分の一スケールという大型で高価なものだ。アルバイト代を貯めて買ったのではなく、元機関長のハインラインさんにプレゼントされたという。  彼はアレクサンドリア号の隊員

銀河フェニックス物語<少年編>第十一話 情報の海を泳いで渡れ(2)

 僕とレイターは年は同じ十二歳だが、噛み合う共通の話題はほとんどない。それでもレイターは話しかけてくる。 「なあなあ、バルダンってさあ、めちゃくちゃカレーが嫌いって知ってるか? あいつやっつけるならカレー食べた後がいいぜ」 「銀河の歌姫の新曲がまたエロいぞ、特に歌詞がヤベエんだよ。あんた、興味ねぇの? あ、音楽は嫌いなんだっけ」 「ザブが玉ねぎ切らしちまったんだ。注文ミスってやんの。あすのランチメニュー変更になるぜ。知りたかったら金くれよ」  他愛無い内容。これが普通の十二

銀河フェニックス物語<少年編>第十一話 情報の海を泳いで渡れ(1)

 戦艦アレクサンドリア号、通称アレックの艦。  銀河連邦軍のどの艦隊にも所属しないこの艦は、要請があれば前線のどこへでも出かけていく。いわゆる遊軍。お呼びがかからない時には、ゆるゆると領空内をパトロールしていた。 <少年編>第十話「二段ベッドの上で見る夢」 <少年編>マガジン  僕は落ち着かないでいる。  同室のレイターは鼻歌を歌いながら戦艦のプラモデルを作っていた。三百五十分の一スケールという大型で高価なものだ。アルバイト代を貯めて買ったのではなく、元機関長のハインライ