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銀河フェニックス物語 <出品集>

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2023年1月の記事一覧

永世中立星の叛乱 あらすじ     銀河フェニックス物語<出会い編>    原作大賞応募作品

「ど、どうしてこんなことに?」  新入社員のティリーは出張先の惑星でクーデターの銃撃戦に巻き込まれていた。先輩たちの言う通り『厄病神』のレイターのせいに違いない。  宇宙船メーカーのクロノス社には奇妙なジンクスがある。『厄病神』のフェニックス号で仕事に出かけると、禍が降りかかり契約できない、というのだ。  銃弾が飛び交う政変の中、厄病神のジンクスを覆すことはできるのか。  おちゃらけた態度のレイターに反発していたティリーだが、命を救われ心が揺れ動く。    時同じくして、

永世中立星の叛乱 (第1話)    銀河フェニックス物語<出会い編>    原作大賞応募作品

 ティリーが取引先のビルから表に出ると、朝の風景とは一変していた。 「ど、どうしてこんなことに?」  思わず息を呑む。  路上を占拠した学生たちが連なって座り込み、プラカードを掲げて叫んでいた。 「王室の独裁反対!」 「議会を開催しろ!」  その向こうに、盾を構えた警官隊が整列していた。こちらへ銃口を向けている。信じられない。  宇宙船の検査を依頼するために訪れたこの星で、一体何が起きているのか。 「疫病神が発動したの?」  隣に立つレイターは平然とした顔で肩をすくめた。

永世中立星の叛乱 (第2話)    銀河フェニックス物語<出会い編>    原作大賞応募作品

 * *  レイターの部屋は相変わらずだな。アーサーは、ため息をついた。  どうしたらこんなに汚くできるのか。ソファーの上にある菓子やらディスクやらを片付けて座る場所を確保する。レイターは散らかったベッドの上に腰かけていた。 「わざわざ、次期将軍殿にご足労いただくとはね」   こいつ、わざと敬称を付けておちゃらけている。 「今、ラールシータの回線はすべて盗聴されている。直接会って話すのが一番安全だ」 「着いて早々、パチンコ玉と銃弾のお迎えだぜ」  「この星の永世中立が崩れ

永世中立星の叛乱 (第3話)    銀河フェニックス物語<出会い編>    原作大賞応募作品

 最初からいい返事がもらえるわけはない。想定内だ。一言も聞き逃すまいとメモを取る。 「金額面でご要望があれば交渉させていただきます」 「そういう訳ではないのです」 「では、どの様な理由でしょうか?」 「理由もお伝えできません」 「基本契約では一方的な解除の場合、違約金が発生することになりますが」 「構いません。お支払いいたします」  記録を取る手が思わず止まる。判断に迷いがない。しなやかな大人の女性。 「これまでの、私共クロノスとの関係に何か不満がございましたでしょうか?」

厄病神の宇宙船には負けられない   あらすじ 銀河フェニックス物語     原作大賞応募作品

厄病神の宇宙船を侮ってはいけない。 禍が降りかかり契約できないというジンクスがある。 宇宙船メーカーに就職したティリーは厄病神の船で出かけた出張先で散々な目に遭っていた。 クーデターに巻き込まれ、爆破テロに巻き込まれ、ハイジャックに巻き込まれたのだ。 二度と乗りたくない、と思っていた厄病神の船で、再度、営業に出掛けることになってしまったティリー。 厄病神に負けてはいられない、と用意周到に準備をし顧客の元へ向かった。 船主でボディーガードのレイターは「今回は何も起きないか

厄病神の宇宙船には負けられない   銀河フェニックス物語 原作大賞応募作品 

厄病神の宇宙船って、本当にあるんです。 先輩たちから聞かされました。その船『フェニックス号』で仕事に出かけると、禍が降りかかり契約が結ばれなくなってしまうと。 あれは初出張の時でした。 取引先の目の前でクーデターによる銃撃戦が起きたんです。契約どころではなくなってしまいました。 その一週間後には、宿泊したホテルが爆破されました。 テロリストによる爆弾テロでした。命からがら逃げ帰りました。 さらにわたしはハイジャックにも巻き込まれたんですよ。 これだけ聞いても、厄病神

大きなネズミは小さなネズミ あらすじ銀河フェニックス物語 <少年編>  原作大賞応募作品

銀河連邦軍 将軍家の跡継ぎである12歳のアーサー・トライムス少尉は、士官学校をトップで卒業し戦艦アレクサンドリア号に乗艦した。戦地へ向かう艦内に違和感を感じ、艦長に調査を進言したが相手にされないでいた。 そんな折、調理場で盗み食いが発生する。密航者の存在が明らかになり、艦は緊張感に包まれた。アーサーは罠を仕掛け、ネズミ対策に乗り出す。 捕まえてみると、密航者はアーサーと同い年の痩せた少年だった。 帰る家がない、という少年を艦長はアーサーの同室に住まわせることにした。 少

大きなネズミは小さなネズミ(第1話)銀河フェニックス物語 <少年編>  原作大賞応募作品

 戦艦アレクサンドリア号に乗って一週間。  僕は地球を出航してからずっと違和感を感じていた。  重量制限をオーバーしながら航行しているというイメージ。ただ、その原因がわからない。質量計も誤差の範囲だ。でも何かが違う。 「艦内に異常を感じるのですが」  僕は艦長のアレック・リーバ大佐に進言した。 「アーサー、いや、トライムス少尉。お前にとっては士官学校を出て初めての任務、しかも長距離航海だからな。神経質になるのも無理はないが大丈夫だ。順調に進んでいる」  と、相手にされなか

大きなネズミは小さなネズミ(第2話)銀河フェニックス物語 <少年編>  原作大賞応募作品

 機体は美しくぶれずに飛んでいる。敵の迎撃機が飛んで来た。トリガーを引いて撃つ。命中。 「いやっほーい!」  次の敵機がミサイルを撃ってきた。交わしながら撃墜。  続いて制宙空戦闘機が接近戦を仕掛ける。   三機の小型機が機関砲を連射しながら近づいてきた。レイターは器用にかいくぐりながら一発で撃ち落していく。  あっと言う間にレベルワンをクリアした。  アレック艦長があきれて笑っている。 「お前、学校行かずにゲームばっかりやってたんじゃないのか?」 「あはは、ご名答」

大きなネズミは小さなネズミ(第3話)銀河フェニックス物語 <少年編>  原作大賞応募作品

 海賊たちが応戦してきた。大型銃から飛んでくる白いレーザー弾を左右の噴射でよける。 「チッ、めんどくせぇな」  レイターは舌打ちしながら銃を操った。出力を下げて海賊たちの手元を撃つ。次々と銃を使えないようにしていく。  百発百中だ。彼は揺れながら降下する船から標的を狙うという難易度の高い状態で、的をひとつもはずさなかった。  訓練の時に感じた違和感を思い出した。基本のなっていない構え。そうだ、彼はわざと的をはずしていたのだ。  甲板にいた海賊たちは中型船内へと逃げ込んだ