【メディア(情報流通)の変化と社会の変化】
インターネット以前の情報源は一元的で一方通行のTV、新聞、ラジオ等のメディアでした。ネット世代の情報源は個人です。つまり、中央集権情報から自律分散情報を選択する時代になりました。映像情報はスイッチをいれて一方的に流れる時代(受動的な情報)から、自ら発信したい情報を自由に発信し、欲しい情報を選択して観る時代に大きく変化しています。この情報の流通の変化は、社会構造に大きく影響しています。
第二次大戦の頃、中央集権の最たるものが大本営が発表するラジオの戦果です。国民の士気を鼓舞するために偽りの戦果を流し続け、国民はそれを信じるしかない時代で、これにより思想統一を行いました。TVが世に出た頃、多くの国民が豊かさを求めTVの広告で購買意欲を高め広告効果が経済成長を加速してきました。
今の組織で既得権益をもつポストや50代はこの時代を名残りを生きています。情報の流通が一元化されヒエラルキーの構造の中で経済成長を体感してきた人々は、一元化したメディア広告の力で成長幻想を現実に変えてきたと言えます。
90年代後半からインターネットが急速に発達してきました。その当時、インターネットがTVを超えるとだれが思ったでしょう?文字情報から画像、そして、動画と回線速度の高速化で重いデータが送れることになっていくことでコンテンツはどんどんリッチになっていきました。
この30年間で最大通信速度は10万倍になっています。
インターネットで初めてコマ落ちした動画を見た瞬間、私はTVはなくなると直感しました。その頃出会ったインターネット放送局で番組の企画をはじめ、当時は誰も試みる事がなかった屋外からの中継にも挑戦しました。そこでは東芝の協力を得て、当時世界最小のCCDカメラとWindowsPC「リブレット」で動画をその場でエンコードして中継をしました。その先進性を表現する為、web上で情報収集するアンドロイドキャラクター「人型異動情報端末 モバイルガール」を開発しました。人工知能キャラクターが中立の報道をする。という物語を中心にインターネット放送局の番組を作りました。
動画を最後まで見ていただくとわかると思いますが、まさかインターネットにTVが脅かされるわけがない、、ニュースキャスターの嘲笑が全てを表しています。
TVがメディアの中央集権を担い情報を独占していた時代から、ビデオカメラの登場で個人が主体的に映像を録画し観る事ができる様になり、さらにインターネットの登場で誰もが世界に情報発信する事ができる様になる。この未来を最初に表現したのが現代芸術家でビデオ・アートの開拓者であるナム・ジュン・パイクだったのではないでしょうか。彼は1965年、ソニーが発売した初の民間用ビデオカメラを購入し、ローマ法王訪問の映像を自ら収録し、TVのニュースと並べて上映しました。個人視点の映像メディア時代の到来をいち早く予言していたと言えます。同時に、彼の作品には一元的な情報メディアの独占に対する批判も込められています。この概念は今、インターネット広告収益がTVを超え、YouTuberやTikTokerが多くの広告収入を得た時点で実現したといえます。さらに広告の発信者は個人になりました。TVCM以上に個人の情報発信が価値を持ち、企業はそのYouTuberやTikTokerに広告媒体としての依頼をしています。
情報流通の大きな変化は、社会の構造にも影響を与えています。TVで育ったシニア世代と、生まれた時からインターネットのあるZ世代以降では接している情報流通に大きな違いがあります。情報は与えられるものから、発信するもの、選ぶものに変わった時点で経済成長を経験した情報受動型と経済衰退期のZ世代の発信・選択型では情報との向き合い方や扱い方がまるで違うのは当然と言えます。すでに彼らはTVを見ていないし、メディアの一方的な情報を信用せずインターネットの情報を自ら精査し、選択する能力を備えています。これからの時代、この情報の選択能力がライフラインにもつながってきます。
この概念が多くのZ世代に実装されているとすれば、旧式のヒエラルキー組織の情報流通が通用しなくなるのは理解できると思います。情報の流通は組織の構造にも影響しています。Z世代がいまだに回覧板を回す様な意思決定している組織のスピード感に耐えられなくなるのは当然と言えます。人間は情報と刺激で進化します。つまり、日頃接触している情報の流れが大きく変われば、情報の選択や意思決定にも大きく反映してきます。
この変化に柔軟な姿勢が組織にとっても大切だと感じています。