【脳の創造性とは?クリエイブ・マネジメントを脳の機能で説明します】
脳の機能(アイデア発想のモデル)について、かつては右脳と左脳という区別で創造性の右脳、論理の左脳という区別がなされていましたが、最新の脳科学では脳には3つの機能があるといわれています。
ボーっとしている時のデフォルトモードネットワークと、論理的に判断する時のエグゼクティブコントロールネットワーク、そして、それを切り換えるサライアンスネットワークが脳の右左関係なくグルグル回ってアイデア創発している事がわかってきました。
アイデアはボーとしているデフォルトモードネットワークの状態から生まれ、アイデアをひらめくだけでなく、エグゼクティブコントロールネットワークが検証して、論理的に説明できるようにしてから表現したり、実行したりしているという事です。ひらめきだけでは形にならない。芸術家は「自分軸」を起点に直感やひらめきの心像をそのまま表現していますが、ビジネスにおいては、そうは行きません。
この脳の構造ですが、実は漫才に似ています。
アート思考でボケる、それにツッコミを入れるロジカル思考。この構造が脳の創造性ともいえます。ギリギリまで飛躍したボケにツッコムからウケる訳です。このボケとツッコミの拡散と収束の乖離があればあるほど面白いネタといえます。さらに、ボケとボケやツッコミとツッコミでは面白くない。2人のバランスとタイミングが重要です。
デフォルトモードネットワークでボケの状態から生まれたアート思考のひらめきや直感をデザイン思考で顧客のニーズにになるかを検証して、ロジカル思考で事業化へ落とし込んでいきます。
この全体のプロセスが重要で、このプロセスを通じて形になってきた企画に新規性があればあるほど新規事業になり得ると同時に新規性が有ればあるほど、最初は顧客に見向きもされません。
そのいい例がSONYのウォークマンです。発売当時全く売れなかったところ、ローラースケートを履いた若者がウォークマンとヘッドフォンをつけて街を走るというプロモーションをして初めて認知されはじめ爆発的な売れ行きで今日に至ります。今では当たり前の音楽を持ち歩くという行為は当初全く理解されなかったのです。それだけ新規事業つまり、新しい価値の創造はハードルが高いのです。
「音楽を持ち出したい!」という自分軸の内発的欲求から世に出る過程で、経営陣は経験値から「録音もできない商品」に顧客のニーズは無いという判断をしました。プロトタイプ繰り返しやっと出荷しますが、全然売れない。そこへ商品だけでなく新しいライフスタイルとして見せた(これはipodのCMと似ています)ところヒットに繋がったけケースです。顧客ニーズがあるわからないけど欲しい!とひらめいたデフォルトモードが社内のエグゼクティブコントロールで一度は否定されるものの新しいライフスタイルの提案によってイノベーションに結びついたのだと思います。
つまり、個人の頭の中でも、組織でも、ひらめき(創造)を形にする時の思考フローはアートだけ、デザインだけ、ロジカルだけでは成立し得ないのです。
全ての従業員がアート思考になれば錯乱状態になるでしょう。デザイン思考だけならほぼ叶えられてしまった顧客のニーズを探して行くうちにコモデティ化して差別化できなくなり、頭の硬いロジカル思考だけでは創造性が乏しすぎます。だからこそ、このアート、デザイン、ロジックの3つをバランスよく瞬時に回して行く「クリエイティブ・マネジメント」が新規事業やイノベーションを産むのに必要な思考のフローなのだと思います。