流星群
帰省初日、「いってらっしゃい」と見送られ、ぶんぶんとしっぽを振るぷーちゃんとおさんぽに出た。
春らしい草の匂いがして、夜はまだ少し冷える。
子どもの頃ツツジの蜜をよく吸った公園を通り抜けた。
今日はこと座流星群が見えるらしい。
坂道をのぼりながら広がる星は、東京よりもずっと多い。
立ち止まって、ぐるぐると夜空を見渡す。邪魔になる高いビルやマンションもない。
ぷーちゃんは星なんて知ったこっちゃなく、必死に土や草の香り、電柱の匂いを嗅ぎまわっていた。
ここにいるのはわたしとぷーちゃんだけで、見渡す限り誰もいない。蛙と虫の鳴き声はすごい。
「ちょっと肌寒いから帰ろっか」
まだまだ歩きたいぷーちゃんを諭して、灯りのついた家に戻る。
昔なら流星群が見えるまで意地でも待っていたけど、今は「流星群見えなかったや」で終わる。
簡単に諦めるようになったというより、それはそれで思い出と思えるように変わったからかもしれない。
「あのとき流星群見たよね」が絶対いいと思ってたけど、「あのとき流星群見に散歩に出たけど、寒くてすぐ帰ったよね」もいいなとおもうようになったんだよね。
こうだから、歳をとるって面白いなとおもう。
見上げたら北斗七星。
この町を出たばかりの頃は、なんでもないこともこんなに愛おしいなんて、よく知らなかったな。
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