見出し画像

整理解雇

◆弁護士 飛田 博

2022年11月7日 日経新聞朝刊15頁

「整理解雇、下がるハードル」「裁判所、『4要件』を柔軟運用」「企業の回避努力カギ」という見出しの記事から

「労働契約法16条は「合理的な理由がなく社会通念上相当でない解雇」を無効と定める。従業員の整理解雇がこの規定に接触するかどうかについて、裁判所では長らく「整理解雇4要件」と呼ばれる判断基準が定着していた。具体的には①人員削減の必要性②解雇回避への努力③解雇者選定の合理性④解雇までの協議の妥当性-の4点を精査する方法だ。1975年の大村野上裁判判決で登場し、50年近く行われている。当初裁判所は4要件を厳格に捉え、一つでも満たさなければ「解雇不当」の判決が出ることが多かった。特に人員削減の必要性について、企業が破綻に直面するような状態でなければ認めない傾向があった。」

「ただ2000年以降、雇用管理の実態が日本企業と異なる外資系企業の裁判を中心に、人員削減の必要性と解雇回避努力について柔軟に解釈し、経営判断による人員削減でも場合により解雇有効とする判決が出始めた。」

(飛田コメント)
 Twitter社の大量解雇が話題となっているときに、とてもタイムリーな記事だと思います。
 記事では、ユナイテッド航空小会社の案件とクレディ・スイス証券の案件が紹介されていますが、ユナイテッド航空小会社の案件では、「年収維持を前提に地上職への異動を提案。さらに通常の退職金に基本給の20ヵ月分を加え、1人1545万~1824万円を支払う退職条件を提示」、クレディ・スイス証券の案件では、「元部長に割増退職金を含め1885万円強の退職パッケージや、社内公募で異動できる可能性がある複数のポストを示すなどしていた。」とのことであり、手厚い退職補償があったようです。
 この2つの案件の詳しい事情は知りませんが、実務弁護士としての経験から言うと、実は従業員側も復職を希望していないのに、和解金をつり上げるために争うということがあり、そのような場合、会社側からそれなりの金額の提示がなされていると、裁判所も「もうこの辺で解決したら?」という雰囲気になることがあります。この2つの案件はそれなりに手厚い退職金を提示できたのですが、そのような退職金を提示できない場合にまで裁判所は4要件を緩和するものではないのでは?と推測します。実務弁護士としては、上乗せ退職金がどれくらいであれば整理解雇が認められやすくなるのかというところをもう少し明確化してほしいように思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?