見出し画像

音楽教室のレッスンでの楽曲演奏から著作権使用料を徴収できるか?

◆弁護士 飛田 博

2022年10月25日 日経新聞朝刊43頁

「生徒の演奏、著作権料不要」「音楽教室から徴収 最高裁も認めず」との見出しの記事から

第1小法廷はまず、楽曲の利用主体を判断する基準を整理。考慮すべき具体的な要素として▷演奏の目的と態様▷(事業者の)演奏への関与の内容と程度-といった事情を踏まえるのが相当とした。その上で、音楽教室での生徒の演奏について検討した。
判決は、生徒の演奏は「教師から技術の教授を受けて習得し、その向上を図ることが目的で、楽曲の演奏はその手段にすぎない」とした。
JASRAC側は音楽教室側の強い管理支配の下で演奏していると主張していたが、「生徒は任意かつ自主的に演奏しており、強制されていない」と指摘。演奏の主体は生徒自身で、音楽教室から使用料を取ることはできないと結論ずけた。

(飛田コメント)
 記事中に著作権法の説明があるとおり、「著作権法には営利目的がなく無料、無報酬の演奏には演奏権が及ばないとの規定があり、学校の授業などでの演奏は徴収の対象外。」とありますので、生徒の演奏を生徒が演奏しているものとみるのか、実質的には音楽教室が演奏しているものとみるのかの争いだったのでしょう。
 そして最高裁は、生徒が演奏しているのだから無料無報酬の演奏で、著作権使用料はかからないよ、と言ったわけです。私が言うのはおこがましいかもしれませんが、妥当な判断だと思います。
 ところでこの判決は、教師の演奏は著作権使用料の徴収対象になることが前提です。音楽教室で教師が演奏しないことはないので、結局、音楽教室はJASRAC側に著作権使用料を支払うことは間違いないのです。ただ、生徒の演奏部分が著作権使用料の対象から外れましたので、含まれる場合よりも金額が少なくてすむのでしょう。記事によると、JASRAC側は、著作権使用料を(年間包括契約の場合)「教室の受講料収入の2.5%」と考えているようですので、これがどのように変化するのか(減額されるのか)がポイントだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?