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「戻れない時」と「戻らない時」で祈る内容が違う?~DEEN「君がいない夏」

こんにちは、2000年前後のbeing作品の歌詞の解釈について書いている「品川みく」です。
今回は、名探偵コナンの主題歌にもなった、DEEN「君がいない夏」(1997年、作詞作曲は小松未歩)について語ります。
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主人公は「戻らない時」と「戻れない時」に何を祈っている?

名探偵コナンの主題歌として約4か月放映され、この曲も収録されたコナンベストアルバムは160万枚以上の売り上げを記録。現在も活躍するDEENの名曲の1つで耳に残っている方も多いのではないかと思います。

けれど、この曲の歌詞は、どうも難解で、ストーリーは分かったような分からないような不思議な感じがしている方も少なくないと思います。

おそらく、この曲最大の疑問は、サビに出てくる
「ahh もう戻らない(戻れない)時を小さく祈っている」というもの。
これはいったい何を意味しているのでしょう?

時間そのものは巻き戻すことができないので、戻すとすれば、二人の関係性が昔のように戻るかどうかということでしょう。つまり、祈るとすれば、このどちらか。

A)二人が元の関係に戻らないこと(時が戻らないこと)を祈る
B)二人が元の関係に戻ること(時が戻ること)を祈る

私としては、サビの歌詞「もう戻らない時」と「もう戻れない時」でこのAとBを使い分けているのではないかと思います。
「もう戻れない時」というのは、自分自身で「もう戻れない」と決断している感じがしているのに対し、「もう戻らない時」というのは、戻らないはずだけど「もし戻ったらば」という願望を描いている感じがするのです。

つまり、1番とラストのサビ、「ahh もう戻れない時を小さく祈っている」では、
Aの「二人の関係が元に戻らないこと」を小さく祈っていて
2番のサビ、「ahh もう戻らない時を小さく祈っている」では、
Bの「二人が元の関係に戻ること」を小さく祈っているのではないかと思います。

「小さく」とつけているのは、祈ってもどうしようもないことであることは主人公としても十分わかっているけれど、このような思いをどうしても抱いてしまう、ということなのかと思います。

それでは、この曲の中で、主人公の気持ちがどのように揺れ動いたのか、私なりの解釈を披露させていただきます。

1番はまだ二人が夢に向かう途中

主人公と「君」は、高校生か大学生くらいの若いカップルでした。
二人はとても仲良く付き合っていましたが、お互いの夢のために、二人は別れる決断をしました。お互い、譲れない夢を持っていて、お互いにそのことよくわかっていたら。

1番の歌い出しは、二人が別れて1年が経った夏のこと。
二人が別れたのが夏で、しかも、お互い好きなまま、最後に二人の時をかみしめるように別れたため、夏が君のことを思い出させたのでした。

このときはまだ、主人公も「君」も夢を追いかけている途中。
つまづいても、次へと向かって走りだそう。
君だって夢へと向かって頑張っている。私も頑張らなきゃ。
君と別れる前の夏の日々は甘いものだったけれど、振り返っていちゃいけない。
「ahh もう戻れない時を小さく祈っている」
君が私の元に戻ってきてはいけない。君は君で頑張っていて欲しい。

2番は主人公の夢が破れた後

2番は「君」と別れて5年か6年が経った夏のこと。
主人公は夢破れ、会社員としてありふれた日常を送っていました。
そんな中、「君」が夢を叶えたことを知ってしまいます。
メジャーデビューを果たし、この街にもライブでやってきます。

主人公はライブ会場に駆けつけます。大勢の歓声を浴びる「君」。
夢を叶えたことをうれしく思うとともに、あのとき一緒に過ごして笑い合った「君」がすごく遠くに行ってしまったようで、たまらない気持ちになります。

君は私と一緒に過ごしていた日々のことを覚えているだろうか。
それぞれ違う人生を選ぶことで少し大人になれる気がしていたけれど、本当は「君」の手を離さなければよかったんじゃないか。
「ahh もう戻らない時を小さく祈っている」
もう一度あのときに戻ったら、なんて、ちょっと思ってしまいました。

ラストは、もう一度君を応援する気持ちに

「君」がライブを終えてファンに向けてあいさつするときに、私と一瞬目が合いました。
「ありがとう――」そのメッセージは、確かに私に対して送られたものでした。
私の脳裏に、「君」と過ごした日々が鮮明に蘇ってきます。
あのときの日々は宝物だった、そして、私の選択は間違っていなかった。
「ahh もう戻れない時を小さく祈っている」

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私はこの曲からこんなストーリーを思い描きましたが、果たして、他の人はどんなものだったでしょう。
8月28日22:30~23:30にXのスペースで開催する #君がいない夏ナイト  で答え合わせをします。

もし興味があれば、ぜひ聞きに来て下さい。
それでは、また。