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自分なりの音楽活動を続けていく思いを描いた曲~小松未歩「style of my own」
こんにちは、2000年前後のbeing作品の歌詞の解釈について書いている「品川みく」です。
今回は、小松未歩「style of my own」(2002年、作詞作曲は小松未歩)について語ります。
5枚目のアルバム収録曲であることが大きな意味を持つ
「style of my own」は小松未歩5枚目のアルバム「source」に収録された曲です。
諸説ありますが、小松未歩が描くストーリーは制作時期ごとに大きな特徴をもっており、それは長戸プロデューサーとの関係と関連しているように思われます。
1・2枚目の「初期」は、長戸プロデューサーのもとヒットチャートに一気に駆け上がっていくころ
3・4枚目の「転換期」は、セールスが落ち込み長戸プロデューサーの手から徐々に離れていくころ
5枚目以後の「後期」は、残ったファンに向けて自分なりの音楽活動を安定的に続けていくころ
「style of my own」は、「後期」のはじめとして、小松未歩として自分なりの音楽活動を模索し始める様を恋愛の歌に乗せて描いたのではないか、と私は考えています。
恋愛の歌として解釈するとちょっとヘン
この曲をストレートに恋愛の歌として解釈しようとすると、ちょっとヘンなことに気づきます。
1番サビの「ダイヤの指輪」や「花束」はおそらく恋愛相手から差し出されたもので、特に、「ダイヤの指輪」は婚約指輪を連想させます。
それが「物足りなくて」、「自分で勝ち取る人生だけが無限の可能性を秘めてる」というということは、結婚して家庭に入るのではなく、自分の夢の実現を目指すんだ、と言っているような気がします。
しかし、2番では「夢までの階段なら2段飛ばしで駆け上がれるけど」「猶予をもらった今だから風穴開けて休もう」といっており、どうも、夢に向けて全力で駆け出す、というわけでもなさそうです。
家庭に入るわけでもなく、かといって夢に向かって全力投球するわけでもない。それでいて、「明日が今日より輝くようにいつも心に希望持って」なんて言ってもいる。いったい主人公は何を目指して、どんな生き方を選ぼうとしているのか、すごく「気まぐれ」な存在に映ります。
小松未歩の当時の心境を思い浮かべてみると
だとすると、この曲でいう「夢」や「愛」は一般的な使われ方ではないのではないか、という気がしてきます。
では、この曲を小松未歩の活動時期に重ねる形で解釈してみるとどうでしょう。
「今はフリーな気持ちだから右に左に風任せ
誰も知ることなどできない 未来探してる」は、
長戸プロデューサーの手から離れ、いろんな曲の作り方を試し、自分なりの活動の仕方を模索しているところ。
「真実の愛はひとつ 欲しいなら手を伸ばさなきゃ」
は、自分に合った音楽活動の形は、誰から与えられるものでなく、自分で見つけなければならない、ということ。
「ダイヤの指輪も花束も何だか物足りなくて
自分で勝ち取る人生だけが無限の可能性を秘めてる」は、
このころ、当時の恋人から、結婚して家庭に入り、音楽活動から引退しては、という話があったのかもしれません。でも、まだここでやめてしまうのは物足りなくて、まだ自分なりの音楽活動のあり方を模索してみたい、と小松未歩が言ったのかもしれません。
「一緒に旅してた仲間もひとりふたり脱落して正直な心と誠意が揺らぎ始めてる」は、
BeingやGIZAで活動してきたアーティストたちが次々と引退していく中で、このまま続けていくべきか悩んでいることを表しているのかもしれません。
「夢までの階段なら2段飛ばしで駆け上がれるけど」は、
結婚して家庭を持つこと自体も自分の中の憧れの一つではあり、そこに一気に飛び込むのもありだけれど、という意味にとりました。
「猶予をもらった今だから風穴開けて休もう
悩みを抱えて生きた分だけ笑顔の威力を知るよね」は、
もう少し自分の納得のいくまで活動を続けさせて欲しい、と、正直な自分の気持ちを恋人に伝えたところ、恋人は笑顔で気持ちが固まるまで待っていてくれると答えてくれた。そのことへの感謝の気持ちを歌っているのだと思いました。
「失ったものは多いけど今の私が好きよ
明日が今日より輝くように
いつも心に希望持って」は、
ヒットチャートからは外れてしまい長戸プロデューサーの手から離れてしまったけれど、
自分を待っている人もいる。
自分らしい音楽活動ができるよう、いつも心に希望を持ってやっていこうと、そんなメッセージを残したのではないか、と思います。
その後、小松未歩は4年ほど音楽活動を続け、以後は音沙汰がなくなっています。
小松未歩は年齢を明らかにしていませんが、経歴などから推定される年齢は、5thアルバムのリリースが28歳ごろ、最後のベストアルバムのリリースが32歳ごろ。
結婚を前に、もう少し自分なりの活動を、納得のいくまでやらせてほしいとして恋人を待たせられる期間としては、このくらいだった、というような気もしてきます。
#スタイルナイト をお楽しみに
私はこの曲からこんなストーリーを思い描きましたが、果たして、他の人はどんなものだったでしょう。
2月20日22:30~23:30にXのスペースで開催する #スタイルナイト で答え合わせをします。
ついに4年目突入!
— 品川みく (@47_miku) February 4, 2025
小松未歩1曲1時間ラジオ 第26回、
style of my ownを扱う#スタイルナイト は、
2/20(木) 22:00〜開催です。
お楽しみに!
https://t.co/qe8Muf6UyM
小松未歩の楽曲について語る「小松未歩1曲1時間ラジオ」も気づけば4年目に突入します。小松未歩が自分なりの音楽活動の形をさがして、残してくれたたくさんの曲は、今もリスナーの胸に残り続けています。