「Dream’in Love」はデビュー時の小松未歩自身を描いた曲?
はじめに
こんにちは、2000年前後のbeing作品の歌詞の解釈について書いている「品川みく」です。
ふとしたことで小松未歩をはじめとしたbeingアーティストたちの曲への愛が一気に湧き出し、この溢れ出す気持ちを言葉にしなければ!という思いで記事を書いています。
私は2000年ごろ10代で、現在は30代。10代のころ好きになって何百回も聴いていた曲も、いま改めて聴くと以前とはだいぶ違った感じに聴こえてきます。私の場合は歌詞の「物語性」に特に着目しており、この曲はいったいどういう物語を描いたものなのか歌詞を解釈していくことが当時からすごく好きでした。20年の人生経験を経て、一つの曲の解釈がどのように変わっていったのか。その変化をお楽しみいただければと思います。
今回は、「Dream’in Love」(1997年)について語ります。
24年前はとにかく「謎」の一言だった
デビューシングルの「謎」で強烈な印象を植え付けられた私。そんな小松未歩のファーストアルバムがついに出る! といっても当時まだ小学生だった私は、そう簡単にCDを手に入れることができません。このため、最初はレンタルショップで借りたCDをカセットテープにダビングして、そのテープをポータブルカセットテーププレイヤーで何度も何度も聴いたのでした。
ちょうど「この街で君と暮らしたい」の途中でカセットテープが裏面に折り返しとなったことはいまでもよく覚えています。自分でCDを買えるようになり小松未歩の全作品を集めていくようになるのはもうちょっと後になってからでした。
さて、小松未歩のファーストアルバムの「謎」ですが、なんとジャケットどころか歌詞カードにも一切小松未歩本人の写真が載っていません。ジャケット写真が色鉛筆を真上から撮ったもので、鉛筆が歌詞カード全体を貫くように描かれていることにもすぐには気づかず、文字通り「謎」でした。
いったい小松未歩とはどんな人なのか、そのイメージを打ち出すアルバムの1曲めがこの「Dream’in Love」なのですが、明るくアップテンポな曲調はすごく好きでしたが、いったいこの曲がどんな光景を歌っているのか、まったく分かりませんでした。
現在の解釈:この曲は当時の小松未歩そのものを歌ったものだったのでは?
それから24年が経った今年2021年、ついに小松未歩デビューの秘密が長戸プロデューサーが出演するラジオによって明かされることとなります。
大手航空会社に勤務していた彼女は、長戸プロデューサーの秘書募集を聞きつけてビーイングの門戸を叩きます。秘書の採用は既に決まっていたものの、面接のなかで「カラオケに入っている曲はたいてい歌える」と語った彼女に可能性を見出し、シンガーソングライターとしてプロデュースする計画が持ちかけられるのでした。なんとこの時点では彼女には作詞作曲の経験もなく、ピアノも片手で弾けるかどうかという程度だったそうですから、そこからここまで才能が開花してしまったことには驚くほかありません。
それは、まるで「ダイヤの原石」を磨くようでもあり、これまでの自分が「生まれ変わる」ようでもある。長戸プロデューサーやビーイングのスタッフとの信頼関係の中で「小松未歩」をつくりあげていく様子が、まさに「Dream’in Love」だったのではないでしょうか。
小松未歩は後に連載エッセイ「ヘンな物さし。」で明らかにするように、「香り付き消しゴムを美味しそうにかじっていた経験」や「不思議の国のアリス気取りでウサギさんを追いかけてしまった過去」を持つ、妄想しがちな性格。その性格を見抜いた長戸プロデューサーは、彼女の持つ「不思議さ」を強く印象づけることで売り出すことを考えついたのかもしれません(あくまで私の想像です)。
(あくまで私の想像ですが)長戸プロデューサーに「自分の今の思いを思いっきり歌詞にぶつけてみたらどうだ」と言われてできたのがこの曲なのではないかと思います。
「泣き疲れた夜にとびきり熱いリライチャ飲んで鏡を見つめ呪文唱えてみる」ことで気分を一掃する、
「冴えない朝」は今の自分の状況を「シュールなフランスシネマ」だと思ってその役を「演じ切ればちゃんと幕は下りる」(冴えない状況が終わる)と思って乗り切る
この曲の歌い手の謎の行動二つは、もしかすると小松未歩自身の気持ちをコントロールするためのルーティンだったのかもしれません。
ファンの間で語り草になる謎の飲み物「リライチャ」は私は、彼女の実家で親に出してもらった何らかの飲み物のことであると想像しています。少数派でありながらも、「とにかく私は日本人の標準だと信じておりまして、外国からいらしたお客さまに「ニホンヲショウカイシテクダサイ」と言われたら代表の一人になれるなぁなんて本気で思っている」小松未歩。歌詞をいざ長戸プロデューサーなどに見せて「リライチャ」って何と問われたとき、彼女は最初「リライチャを知らないんですか?これはーーで」などと熱く語ったものの、よくよく聞くとスタッフ誰もその存在を知らず彼女の実家特製の飲み物だったことが明らかに。しかし、最終的には「不思議な雰囲気が出てていいね、このままリライチャで行こう!」などと長戸プロデューサーのGOが出たのではないか、なんて想像が浮かんできました。
ずいぶんリアルな情景が浮かんできてしまいましたが、私はビーイングの関係者でも何でもありません。あくまでいちファンの想像、いやここまでくるともはや妄想に過ぎないということは改めてお断りしておきます。
おわりに:「花の砂時計」さんに感謝
「Dream’in Love」について書きたいと思ったのは、フォローさせていただいている「花の砂時計」さんの「小松未歩さんの『Dream’in Love』のリライチャを考える」という記事を読ませていただいたため。面白い記事を読ませていただき、また私の想いを呼び起こすきっかけをいただき、ありがとうございます。
歌詞の解釈に正解はないのですが、20年聴き込んでくると、それぞれのファンが楽曲の世界観を作り込んだおり、それぞれどのように解釈したのかを知るのはとても楽しいです。お互いの解釈を知ることにより、20年経ってもまだまだ新しい発見があるところもすごく面白いです。まだまだこの曲、私の知らない一面が残されているかも。あなたはどのようにこの曲を聴いていましたでしょうか。ひとりでもふたりでもこういう話を面白いと思ってくれる人がいたら、ぜひコメントをいただけると嬉しいです。