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「正気のサタン」に思う四方山話

どえらいお久し振りのnoteになってしまいました。さて、みんな大好きヤッホーブルーイングが8月初に販売開始し話題になっている"正気のサタン”。今回はこの一本をマクラに少し展開してみます。

「醸造系クラフトドリンク」

商品開発から発売に至るまでの裏側は、公式サイトにド長文がしたためられています。

"ビールテイスト飲料"であることは積極的に避け、ビール屋さんが造る低アルコール商品というコンセプトからスタート。醸造後にアルコールを抜く、ビール風のテイストに調合する、のではなく醸造工程で低アルコールに仕上げているのだそう。そして辿り着いた「醸造系クラフトドリンク」。
醸造工程の開発、顧客セグメンテーション、クリエイティブ制作などなど、そのままマーケティングのテキストに使えそうな内容になっています。読み応えある文章ですので一読推奨。

ビール"テイスト"ではなくあくまでも"ビール"

物足りなさなく一方で飲みやすさを訴求ポイントとしている流れから、セッションIPA的な方向性に仕上がっていますね。COEDOの毬花などお好きな人には親しみやすいかと思います。主観的な表現ですが、ホップの味・香りを楽しめる、世間に認知されつつある「クラフトビール」として受け入れられる製品という印象。
エクストリーム系ビールに長年親しんでいる身にはやはり低アルコール故の軽さは少々物足りなさはありますし、「ホップの香りがガツン」のような感想には同意しづらいのも事実ではありますが、それは一部の好事家の目線です。1本200円台のプライシングもあって、特にライトユーザーが手に取りやすいのではないでしょうか。

改めて考える「なぜクラフトビールを飲むのか」

クラフトビールファンが安くないお金を出してわざわざクラフトビールを飲むのは、単にアルコールを摂りたいという理由からではないでしょう。日々生み出されるビールそれぞれの様々な味わい、その一杯に込められた造り手の意図や意思、ストーリーのようなもの、あるいはビールに引き寄せられ集まる人々との交わり。こうしたクラフトビールという「現象」を求めて、我々はクラフトビールに魅かれるのではないでしょうか。少し風呂敷を広げすぎたでしょうか。
その現象の核となるビールのABVがなんぼであるとか、あまり意味のある議論ではありませんね。造り手が自信をもって世に送り出し、飲み手がある程度の満足感を持って楽しめる、そんな低アルコールビールが手近な選択肢にあるというのは幸せなことでしょう。我々ビアギークは、多かれ少なかれ肝臓を虐めているわけですし…。

"間"を埋める新領域

クラフトビールを愉しみたいけどアルコールを摂りたくない、そんなシーンもなくはないでしょう。日々のアルコール摂取量の調整であったり、家事育児との兼ね合いであったり。そんなときに「クラフトビールを我慢する」と「やっぱり呑んじゃう」の間を埋める新たな選択肢として、相応な満足感を得られる低アルコールクラフトビールもとい醸造系クラフトドリンク領域は、思いのほか今後の発展が期待できるのかもしれません。

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