宮之浦港到着
いつの間にか、船は屋久島にぐんぐん近づいていた。
時折、トビウオがジャンプしてキラリと光った。
朝は、相変わらず美しかった。
そのうち、船は港へと入っていった。
鹿児島の港で見たような、赤いのが出迎えてくれた。
6時54分。
あのギモーヴたちも。
船は、ぐるっとまわって・・・
いつもの場所に落ち着いた。
7時5分。
はいびすかすは、自分の仕事に満足しているように私には思えた。
生き甲斐を感じて、毎日が充実しているに違いなかった。
もちろん、大変なこともあるだろうけれど、それすら楽しめてしまうようなそんな人生を歩んでいそうだった。
本人に質問したら、案外「とんでもない!」という答えが返って来るかもしれないので、私は尋ねないでおいた。「そうだよ!」という回答を得られる可能性も、充分にあったけれど。
自他ともに認める、自分専用の場所があるっていいな・・・。
私の居場所は、どこなのだろう?
白黒の毎日から、命からがら逃げ出してきたばかりだ。
あの毎日にも、私の場所はあったけれど、なんだか居心地が悪かった。
今はもう、あの場所には戻れないけれど、ひとまず抜け出せて良かった。
私は、あてどなく、さまよっていた。
今回の旅で、そのヒントが見つかるかもしれない・・・。
私はこの朝、鳥の写真をたくさん撮っている。
小さな鳥が、ちょこんととまっている様子を。
かくして、廃車寸前の愛車と私は、屋久島に到達したのだった。
その後、どのようにして船から出たのかあまり憶えていない。
船のお腹で神妙にしていた愛車と共に、ローで一気に坂を上ったような記憶がある。そして、あの“橋”を恐る恐る渡り、陸地に乗っかったのだろう。