実習生を追いかけて~B君の場合~【技能実習生との日々⑥】
B君、ベトナムへ行く
「キクさん!今度の出張に一緒に連れてって下さい!」
普段の何でもない業務中、日本人社員のB君が大真面目な顔でベトナムに連れて行ってほしい、私のハノイへの出張に一緒に行きたいと言ってきた。
前回の投稿に書いたように、実習期間の途中で帰国をした女性実習生(ファム)を好きになったのはB君であった。彼はファムが働いていた部署のリーダーだった。仕事を教え一緒に仕事をするうちに、そして二人だけで仲良く残業をするうちに彼女を好きになっていたのだ。
そのB君はクソが付くほどのド真面目な男、普段の言動からも冗談で「ベトナムに行きたい」などと言う性格でもない。ファムへの恋心、本気度が伝わってくる。工場長までもが「ファムは無理でも他のベトナム人を紹介してもらってこい!」とけしかける有様だった。
B君、ファムと再会、だがしかし
ハノイのノイバイ国際空港到着。私は仕事のため空港でB君とは別れる予定つもりだった。ファムが迎えに来るのだ。私なんかと一緒にいるより二人でタクシーに乗って遊びに行った方が良いだろうと考えていた。
ところが、である。
せっかく空港でファムと再会をしたB君、「キクさん、一緒に車に乗せて下さい」と言ってくるのだ。何を言い出すのかと思いながらも、私の担当通訳も問題ないと言ってくる。
「何なんだよ、せっかく二人っきりにしようと思ったのに」と私は拍子抜けしながらも、皆で空港からホテルまで行くこととなった。
私はハノイの取引先が選んだホテル、B君はファムが選んだ旧市街にあるホテルへ泊まる日程となった。
結局どうだったのよ
ハノイでは私とB君は完全別行動(だって私は仕事だし)、2泊4日の短期出張(帰路は夜行便)の最終日、現地の通訳の提案で夕食をB君やファムも誘ってみんなで食べようという流れになった。
みんなで集まったレストランではB君も嬉しそうに話をしていた。1泊目はハノイ旧市街のホテルに泊まってファムの案内で街を散策したこと。2泊目はハロン湾で遊び、ファムの親戚の家(民家)に泊まったこと。
B君は初の海外旅行だったため、何がどうなっているのか訳も分からずファムの言われるがままに過ごしていたようだ。それにしてもベトナムの地方の民家に泊まるとはB君もなかなかやるじゃないか。なんて楽しそうな旅なんだろうか。
この3日の間、B君はファムとファムの子供と3人で過ごしたようだ。だからファムの子供もすっかりとB君に懐いていたのが笑えた。ファムと楽しそうに遊ぶ写真を見せてくれた。3人で写るその写真は本当の家族のようだった。
笑劇の事実
レストランでファムと別れ私たちは空港へ。私は帰りの飛行機を待つ間、B君にいろいろ話を聞いてみた。
B君はファムが在日ブラジル人のボーイフレンドと結婚する事実は知っているようだ。だからB君はその二人の間に深入りをすることもなく、かつて一緒に働いた女性、好きになった女性とその故郷で思い出作りができてうれしい。そんな様子だった。何だか良い話だなぁと私は思いながら聞いていた。うんうん、B君、アンタいい男だよ。
すると突然B君が「キクさん、僕、本当はリンさんが好き」と言ってきた。
リンさんとはハノイで今回も含め毎回私を担当してくれる通訳の女性。30代前半で小柄で可愛く笑顔の素敵な人だ。その一言を聞いた時、あまりの突然さに私は空港のベンチから転げ落ちる思いだった。(なんなんだ、ファムとのあの綺麗な思い出作りは)
リンさんとB君は空港からホテルまでの送迎の間や、最終日の夕食の時に一緒に過ごしている。ノイバイ国際空港でも私達が出国するまで(見えなくなるまで)空港の出国ゲートの所で見送ってくれていた。夜も遅い時間だから帰ってくれと言っても「何かあったら大変ですから!」と言って笑顔で手を振ってくれる。
そのような気遣いのできるリンさんの優しさ、そして人懐っこさも持ち合わせている彼女をB君は【あっという間に】好きになってしまったようだ。
B君、次にベトナムに行くこと、ハノイでリンさんに通訳をしてもらうことを楽しみに今も過ごしている。
B君、ファムと再会part2
日本に再来日し、件の彼と結婚をしたファム。先日は会社に突然やって来た。大喜びのB君は午後休を取り遊びに出かけたが、ファムとファムの連れてきた友人(日本人女性)にしっかりと食事を奢らされたようだった。
おまけ
最終日に皆で食事をしたレストラン、高級レストランでもなく屋台でもなくおススメです。メニューも豊富、開放的なテラスで食事を楽しむことができるので私は気に入っています。