実習生を追いかけて~私の場合~【技能実習生との日々⑦】
私、ベトナムへ行く
「キクさん、いつベトナムに来る?私たちがハノイの案内をする約束を覚えてる?」
ベトナム人技能実習生を受け入れ、その1期生と2期生の5人が3年間の勤務を終え2019年3月と9月に帰国をした。そのうちの3人が更に2年間の制度延長を希望してくれたのだ。
3年間の技能実習期間を終えた実習生は、本人が望めば更に2年間延長して制度を利用できる。その際には上の図のグレー色部分のように、一旦1か月以上帰国する必要があった。
一時帰国中の間には日本へ再入国のビザが通るのを待つ必要もあるが、家族と過ごすこともできる。更に日本で勤務した3年間で支払った年金を脱退し、その脱退一時金をもらえるメリットもあった。
実習生が帰国する前の送別会で「おー、皆がベトナムにいる間に俺行くから絶対に案内してよ!」と私は盛大に酔っ払いながら約束していたのだった。
航空券も安い10月だったので私は妻も誘い夫婦でベトナム(ハノイ)へ出かけた。
いつものメンバーで
ハノイでは普段の業務出張でお世話になっている通訳のリンさん(B君が好きになったベトナム人通訳)も来てくれた。そして出張時、仕事が終わった夜にGoogle翻訳を挟みながらも意気投合して一緒にビールを飲んだ運転手のグエンも来てくれた。
到着した日の夕食時、実習生はもちろん通訳や現地の運転手にまで溶け込んでいる私を見て妻も本当に驚いていた。本当は私が出張時に現地で夜遊び(日本人が東南アジアで女性を買う遊び)をしているのではないかと心配をしていたのだ。
この夜は2人の実習生がハノイまで来てくれた。(二人ともベトナムとして考えればハノイ近郊だが電車やバスで2時間以上かかる所が故郷だ)
通訳のリンさんと運転手のグエン(写真には写っていないがタバコを吸いに外へ出ている)も含めて計6人の夕食会は賑やかで楽しかった。
仕事でもないので食事後はリンさんと運転手のグエン(本当は一緒に飲みに行きたがっていた)には早めに帰宅してもらい、私たちは旧市街を散策した。ぶらぶらと4人で歩いていた。途切れることのないおしゃべりをしながら。
この時の何とも言えない良い気持ちを私はよく覚えている。「技能実習制度の問題点はいろいろ聞くけど、こういう良いこともあるもんだなぁ」と人ごとのように。
頑なに支払いをしようとする、頑なにお金を受け取らない
翌朝、私たちのホテルの近くに泊まった実習生の彼女達と合流、朝食を食べに行った。
朝食はハノイのフォーの超有名店、フォー・ティンへ。私たち夫婦と実習生の4人分、さらに揚げ麩(のようなもの)を注文。
その朝食代を頑なに実習生が払おうとするのだ。妻も「あなたたちは遠くから来ているからいいの、大丈夫だから」と言っても。
「いえ、キクさんと妻さんはもっと遠くから来ています、だから私たちが払います」この一点張り。一緒に働いた3年間でも見られなかった頑固さで支払いを済ませてしまった。
名前等いろいろ伏せてはあるが、こんなうれしいやり取りがあったのだ。
そしてこんな微笑ましいやり取りも。
その後は問題なく彼女達の次のビザがおり、(元)実習生から(現)実習生となり今もにぎやかに働いている。
最大の味方、通訳のリンさんのファインプレー
ハノイ近郊とはいえ自宅まで遠い実習生の二人は帰宅、その後は再合流した通訳のリンさんとカフェで過ごしていた。リンさんの普段の業務は通訳(文書の翻訳)と、出張に来た日本人を食事や観光に案内することが主な業務だ。
その日本人を接待する話になった時、「私は日本人を接待する時は会社から(日本円換算で)20万円の仮払金を持って行きます。でもキクさんは5万円なんです!」と妻に伝えてくれた。
「その5万円は私の食事代も含まれているんです!」とも。
前述のように私の妻は私がハノイで自由に夜遊びをしていると【ほんの少しは】疑っていたようだ。妻の勤務先の男性社員にもそのような人も多いらしいから。
通訳のリンさんが言うとおり、出張に来ているのか夜遊び(女遊び)に来ているのか分からない日本人の方が多いらしい。女性でありながらその案内も兼ねているリンさんの気苦労も大きいだろう。そんな中、ハノイの屋台飯を大喜びで食べ歩き、運転手とビールを飲み歩く日本人担当者は本当に珍しいようだ。
「めんどくさい人の時はマッサージに行きます、そしてマッサージが終わったら次のマッサージに行きます」とリンさんは言っていた。
マッサージがどのようなものか、次のマッサージの【次】がどのような意味なのか私は知っている。リンさんと初めて会った時、私もこのような提案をされたから。
これも含めてこれまでの出張時のこと、滞在中の3泊の間に通訳(リンさん)の食事代も含め5万円で充分にお釣りが出ること、これ程お金がかからない日本人がどれほど珍しいかを妻に力説してくれた。(いやー本当にありがとう)
しかし私も考えた。いくら私がベトナム好きだからといって、いくら業務を超えて仲良くなったとはいえ、ローカルフード食べ歩きではリンさんも気の毒だなと。私が逆の立場なら経費で高級料理店に行きたいし。お互いに打ち解けてきたからこそ【接待用のお金】で高級レストランに行きましょう!と約束をした。
「それも良いですけど、次の出張の時は仕事を急いで終わらせてダナンに行きましょう。本当に良い所です!」とリンさんも言ってくれた。
今ではB君以上に
すでに登場済のB君はもちろん、今では私【も】リンさんにベトナム(ダナン)を案内してもらおうと日々楽しみに過ごしている。
※)リンさんは30代前半の小柄で可愛い女性とは書いた。分かり易く言うとプロゴルファーのしぶこちゃんを小柄にした笑顔の素敵な女性だ。(この写真はとても似ているし、妻も納得していたから合っているだろう)そして既婚者で小さな女の子の母親だ。(残念!B君)