実習生と留学生【技能実習生との日々⑨】
お前ら何してたんだ?
外国人技能実習生にとって稼ぐことと同じくらい重要なことに日本語の取得がある。その日本語能力試験が毎年7月と12月に行われている。
この試験はN1からN5まで能力分けされており(、N2ともなればビジネス上の通訳は問題なくできるレベルだ。
この資格は日本ではもちろん帰国後に日系企業への就職でも有利になるため、合格証を偽造してまで欲しがる、いわゆるブラックマーケットすら存在するらしい。
さらに今年2020年7月の試験が新型コロナ感染防止のため中止となっていた。3年間の技能実習期間を考えると受験回数は限られている、さぞかし今回12月の試験に向け勉強を頑張っていると思いきや何ということか、実習生全員が受験を欠席していた。
「何で試験を受けなかったの?」と私が聞くと
「だってコロナが怖いから」と実習生全員
「うそつけ、試験会場が駅から遠いからだろ」と返すと
「へへへ・・・」と笑ってごまかされた。
技能実習生の面接時のこと
「あなたは何のために日本へ来たいのですか?」と私はハノイでの面接時、一回目の質問はこれと決めている。私は緊張をほぐすため鉄板中の鉄板としてこの質問を使っている。
「私は日本で稼ぎたいです。そして日本語と日本人の働き方を学びたいです」ほぼこの答えが返ってくる。その面接も集団面接であり、通訳も介しているのでほとんどこの返答だ。
「日本では仕事が忙しい時があります、たくさんお金を稼ぐことができます。しかし仕事が少ない時もあります、それでもいいのですか?」とこれも2番目に私が尋ねることにしている。
「どんなにつらくても一生懸命頑張ります、仕事が少ない時は日本語の勉強をします、会社の近くにボランティアの日本語教室はありますか?」とこれも同じく判で押したような返答だ。
日本へ入国、会社へ配属
日本に入国して会社に配属されると実習生は嫌でも日本語を使わなければならない。そのため私は1期生2期生を受け入れた頃、実習生のサポートのため工場内で日本人に注意喚起をし続けていた。
「そこの〇〇持ってきたってー」「これやったってー」「こここうして、これやって、あれやって」といった話し方をしないこと。主語と述語をつかうこと、動詞を使うこと、ナドナド細かく注文を出した。
それこそ私たちが中学生の時に英語を習った時のように【だれが、どうする】を使った丁寧な日本語で伝えるようにお願いをした。
そして実習生も周りに日本人しかいない以上必死でくらいついてきた。その結果1期生は1年目で、2期生も2年目には全員がN3に合格をした。
慣れなのか甘えなのか
実習生も3期生4期生と入ってくるにつれ、私たち日本人も甘えが出てきて丁寧な日本語で伝えるより、先輩実習生を通訳に介して仕事の説明をするようになってしまった。
ハングリーさが足りないのか、周囲のベトナム人が増え仕方がないのか、日本語を取得する・日本語を勉強するということを一番嫌がっているのが現在では5期生まで在籍する実習生の現状となってしまった。
一方留学生は
私は東南アジアの留学生を対象とした就職説明会に参加をしたことがある。2020年7月のこと、卒業を目前に控えながらも新型コロナの影響で就職活動が思うように進まない留学生対象の企業展のようなものだった。
私の所へ会社説明を聞きに来た留学生(2年生)の全員がN2以上の保持者だった。アルバイト先はファミリーレストランやコンビニがほとんど。つまり日本人相手に日本語で対応できるレベルなのだ。
コンビニの仕事といえばレジだけでなく様々な種類の仕事があり、以前から私も感心させられていた。私が英語でファミレスやコンビニのバイトができるかと言ったら全くできないと言える。断言するのも情けないが、それこそ何一つできないレベルだと感じているからこそ、留学生の頑張りを強く意識してしまう。
私がその時に出会った留学生達は、真面目な学校で(入学金や授業料欲しさに名ばかり留学生を受け入れる学校ではない)真面目な生徒だったのだろう。より良い企業に就職するために、より多くのお金を得るために当たり前のようにN2やN1を取得していた。
俺より良い生活してんじゃないのか?
外国人技能実習生はダークサイドな面ばかりがクローズアップされているが、普通の中小企業(つまり私の勤務先のような会社)は外国人技能実習機構(お役所)や管理団体から細かく厳しい監査を定期的に受けている。(その監査を受ける担当者が私)
実習生を受け入れている企業は法令順守は当たり前であり、実習生の居住する寮の快適さまでもが監査の対象となっている。具体的にいうと、5人家族で2LDKに住んでいる私よりも、4人で3LDKに住んでいる実習生の方が一人当たりの居住面積(寝室床面積)が広いのだ。(下記掲載資料の④がこれに該当する)
実際に役所に提出している書類が上のものだ。
給与面でも年俸制のような給与体系で勤務している管理職の私はどれだけ残業をしても1円も支給されないが、実習生は当たり前のことだが法令に基づいた支給となる。(給与計算については特に管理団体の監査が厳しい)
今の私からすると、厳しい周辺環境に耐えながら就職活動をする留学生と、【法】に完璧に守られ、それに無意識ながらも甘えている実習生の違いを強く感じてしまったのだ。
12月の日本語能力検定試験の全員欠席の事実を聞いたこと、最近私のサービス残業が増えたこと、それらが混ざり今回は少しきつめの文章となってしまった。今度休みの日にでも私の自宅より広い(くどいな)実習生の寮へ行ってベトナム料理で癒してもらおう。