実習生と晩ごはん【技能実習生との日々③】
扇風機を持って行く
私の実家には【捨てるにはもったいないけどほとんど使わない物】がゴロゴロある。古い電化製品がけっこうあるのだ。このような物をプレゼントすると実習生は本当に実に喜ぶ。
初めて実習生を受け入れた頃は「ベトナム人は貧富の差が大きい所で育っています。富める者が貧しい者に与えることは当たり前と思っており、感謝もされないことが多いです。だからあまり甘やかすことのないようにして下さい」と説明をされていた。
扇風機がベトナム料理に変わった
でも実際のところ、実習生に家電等の新品を買おうとすると結構な割合で拒否される。それも【遠慮】という理由で。蒸し暑い日本の夏、電気代節約のためにエアコンの使用も極力控えている実習生なので、会社の経費で扇風機をまとめ買いしようとしたところ拒否されたのだった
「先輩は古いもの屋で買いました、私たちだけが新品はだめです」とのこと。
すでに入国済の先輩実習生はリサイクルショップで年代物の扇風機を探して自費で購入、自転車でアパートまで運んだそうだ。それを自分たちは会社から買ってもらうということに遠慮をしているのだ。
普段からジュースおごれだのファミチキおごれだの図々しい実習生もしおらしいことを言う。
そんな訳で私の実家の両親に使わない扇風機がないか聞くと、3台もあるとのこと。(しかも1台は私が中学生の時に使ってた昭和からの年代物だ)
両親も家電リサイクル法が面倒で捨てられずにいた物、使ってもらえる人がいてありがたいと一石二鳥のこととなり、実習生の寮まで運んで行った。しかも夕方でタイミングが良かったのか「ありがとう!キクさん、いっしょにご飯を食べよう!」ということになった。
私が近所のスーパーでビールを買って戻って来ると漬けダレが出ていた。ベトナム醤油、ニョクマムかな?臭いの強い醤油にニンニクと唐辛子がどっさり入っている。
「キクさん、ニンニク大丈夫?唐辛子大丈夫?」一つ一つ聞いてくる。そしてこのタレ、寿司を食べる時のように醤油を少しつけてといった感じではなく、ざる蕎麦を食べる時のつゆ程の量がお椀に入っている。量は多いが日本の醤油程に濃くはない。
ここから料理が出てくるまでの長いこと長いこと。ワイワイと話をしながら、私がビールと一緒に買ってきた菓子を食べながら料理をするのだ。しかも時々フルーツが出てくる。話をしているのか料理をしているのか分からないくらいだ。
この日、実習生が作ってくれたのは生春巻。ハノイのベトナム料理店で食べたものとは違う純粋な家庭料理としての生春巻でうれしい。豚肉と卵と野菜(胡瓜・レタス・パクチー)、これにブンという米粉の麺を一緒に巻いて食べる。やはり美味い。
ビールがアサヒスーパードライであることが残念だ。せっかくなのでビアハノイが良かったが、近所のスーパーで売っていないのでこれはしょうがない。
さすがというか当たり前というか、彼女たちは慣れた手つきで器用にライスペーパーを巻いていく。
「キクさんもやってみて」と言われ私が巻いたものが白い皿の手前のもの。一口食べて手を放すとみごとにバラバラになってしまった。
『いつか誰かが使うかもしれない』と実は捨てるのが面倒で何年も実家で眠っていた電化製品がベトナム家庭料理に変わるのだ。もう少し探してみよう。
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