優れた物語について
それは職場近くの韓国料理屋だった。仕事帰りにいつも前を通るときにちらりと目に入る店内はいつも閑散としていて、よく潰れないな、と思うのです。ただ、味は美味しい。
よく小説や映画を見る同僚が優れた物語には二種類あると語った。
優れた物語の一つは、作者の奥底からの内面が表出した精緻なプロットを持つ物語だと彼は言う。
例にあげたのは羽海野チカの「3月のライオン」だ。
もう一つの優れた物語のタイプは「鏡のような物語」だと言った。
その鏡のような物語は精緻なプロットで感情を盛り上げることはなく、物語らしい物語は一見して見つけにくいが、その物語は自分を写し出すのだと言う。
なにかと話題になっている村上春樹の「騎士団長殺し」や、井上雄彦の「バガボンド」がその鏡のような物語に属するのだと言う。
わたしはそれを聞いて、何かを掴めそうな感じがしたが、どちらの作品も未読だったので、それについてはっきりとした理解を得ないまま、日常の時間に押し流されてしまった。
ただ、何日経っても彼が言った「鏡のような物語」について気になり続けていたので、このエントリを書いた。