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人との出会いは自分との出会い Xong Lao ゾン・ラオ

今回はパリで航空機メーカーに勤めているゾンに話を聞きました。最近、仕事やプライベートで充実できる道を模索中の彼女。キャリア、自身のルーツ、そして、大切にしている “人との関り ” について語ってくれました。

メル氏:やぁ、ゾン。ゾンは何をしてる人なの?

ゾン:何をしているか、、、?!どう答えればいいんだろう。

メル氏:あ、質問が悪かったかな。深く考えないで思ったことを言ってもらえば大丈夫だよ。

ゾン:深く考えない、、、えっと、自分は会社員で、アレッサンドロっていうパートナーと一緒に暮らしていて、友達がたくさんいて、、、歌うのが好きで、、、歩くのが好きで、良い天気が好きで、、、旅が好き。

メル氏:「何してるの」って聞くと、仕事のことだけ答える人が多いんだ。ゾンは 色々なことに興味があっていいね!
でもとりあえず、、、どんな仕事をしているの?

ゾン: 航空関係、航空機を製造する会社に勤めてるんだ。

メル氏:へぇ、飛行機をつくる会社なんてカッコいいね!

ゾン:もともと企業の仕入れや調達のポストを探していて、たまたま採用されのが航空系の会社だったんだ。 すごく大きな会社で色んな部署があるの。

メル氏:仕入れとか調達の仕事をするのに学校で特別な勉強をしたの?

ゾン:私は高校の後2年間、学校の経営管理アシスタントという科で、中小企業の経営に関わる基礎的な勉強(経理や法律)をしたの。そのあとリヨンにある機械製造会社で9年間仕事をしていたんだ。当時の彼がパリに来ることになったから私も彼に着いてパリに来て、今の会社に入ったんだ。

メル氏:高校を出てすぐに仕事に繋がる勉強をするなんて、しっかりしているなぁ。

ゾン: とにかく早く実家を出て独立したかったんだ。親は大学へ行って、医者とか弁護士とか立派に聞こえる職業に就いてほしかったのかもしれないけど、勉強ばかり続けたくなかったし、自分の周りにそういう職業の人が全然いなかったの。両親は移民だったし、とにかくピンとこなかったのよ。
中小企業の経営に関わる知識を身につけておけば社会へ出るのに役に立つと思ったんだ。

メル氏:今の会社での仕事はどう?

ゾン:会社に入ってから長い間、部品の仕入れの部署に居たの。私が担当していたのはネジの仕入れ。
飛行機に使われてるネジってすごいの! 間違えが絶対許されない精密な部品で、航空会社はネジに想像できないような予算ををかけてるんだよ。 あまりに高いから、ネジが宝石に見えて来るもん。笑
自分はどんなネジがどこの会社からいくらで買えるか全部覚えてたよ。すごいでしょ。

でもね、だんだん、もう少し”人”に関係する仕事がしたいなと思うようになって、部署を移動したの。今は外部の契約エンジニアの書類や社員の出張のデータを管理する仕事をしているよ。

メル氏:今の部署は気に入っている?

ゾン:異動したばっかりで、もちろんまだ覚えることはあるんだけど、既に先々、今の役割では刺激が足りなくなるような気がしてる。仕事内容を広げるか、もう少し責任のある役割を目指すか、何かの形で身のあるものにしていかないとなぁ、って思う。

メル氏:ご両親は移民って言っていたけれど、彼らはどこから来たの?

ゾン:私の両親はモン族*という民族でもともとラオスに住んでいたの。私が1歳の時に政治難民としてフランスに来たんだ。
彼らがメコン川を渡ってタイへ逃れて滞在している間に私が生まれたんだ。だから私はタイ生まれ。

*中国の雲貴高原、ベトナム、ラオス、タイの山岳地帯に住む民族。モン族はベトナム戦争の時期にアメリカに命令されて動いており、アメリカが撤退したときに、ベトナムやラオスの共産勢力に攻撃をされる立場になり、多くのモン族がタイに亡命し、それからアメリカ、オーストラリア、フランスなどに移住した。

両親はフランスに来たくて来たわけじゃなかったし、国を離れて知らない土地で知らない言葉を使って生活していかなければならなかったから大変だったと思う。
私が子供のころ、彼らが「フランスでの生活なんて嫌だ、フランス人は親切じゃない」って文句を言っていた記憶があるよ。
私は大人になってからラオスに行ってモン族の暮らしに触れる機会ができたんだけど、フランスでの暮らしと全く違うの!
両親は一体どうやってフランスで暮らせるようになったのかって不思議に思う。

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私は家庭の中ではモン族として過ごして、家の外では完全にフランスの文化に囲まれて育ったから、「自分は2つの文化のどっちに属しているんだろう?」って考えた時期もあった。特に10代の頃は。
不思議なことに、同時にモン族とフランス人ではいられないんだよね。家に居る自分はモン族だと思って過ごしているし、学校に居た時はフランス人だって意識で過ごしてたし。自分が「2つの文化によって分け合われている」ような不思議な感覚なの。

メル氏:何だかカメレオンみたいだね。

ゾン:仕事に繋がる勉強をして早く経済的に自立したかったのは、両親が経済的に苦労していたのを見ていたからだと思う。私、6人兄弟なの。父はラオスに居る兄弟にも仕送りしていたみたいだし。 国からの補助はあったかもしれないけど、生活は楽じゃなかったんだ。

例えば私、子供のころは一度もバカンスに出かけたことが無かったんだんだよ。12歳ごろになると学校の休暇中は農家で収穫のアルバイトをして家にお金を入れていたんだ。家に入れたお金は家族にとって必要なことに使われていたからそういうもんだと思っていたし。でもね、周りのフランス人の友達の生活を見ると全然違うの。彼らはお小遣いとかもらっていたけど、私は自由になるお金なんて持ったことなかったなぁ。

両親は「お金がない」と直接的なことは言わなかったんだ。ただ「生きていくにはお金が必要。だから苦労をして働くことも必要。楽しいことばかりしている訳にはいかない。」そういうメッセージを私たちに色々な場面で伝えていたんだと思う。
だから私も自然と仕事をしてお金を稼ぐのが当然っていう考えになったんだろうな。

メル氏:親の背中を見て育つっていうもんね。 働き者のご両親なんだね。

ゾン:ちなみにもしその時、「何になりたい?」って聞かれて何も考えずに素直に答えたなら「歌手」だったよ。でもお金稼がなくっちゃ。歌手で食べれるとは限らないでしょ。歌は好きだったけど放っておいてスターになるような天才では無かったし。
ただ、もし家が裕福だったら、音楽の教育を受けて、もう少し才能を伸ばせたような気はしたけどね。

メル氏:ゾンにとって働くことは生活の原点のようだけど、さっき他にも好きなことがたくさんあるって言ってたよね。今、仕事はゾンの人生でどれぐらい重要?

ゾン: う~ん、仕事には生活の6、7割の時間とエネルギーを注いでいるけれど、重要度で考えたら3、4割ってとこかな。やっぱり プライベートやパートナーや家族、友達の方が大事だよ。

本当は仕事でもっと人生の満足感を得られればいいんだけどね。
例えば私のパートナーはプロのイラストレーターだけど、彼のように情熱を注げることが仕事になっている人も居る。 だから仕事を通して個人が満足感を得られる道はあるっていうことよね。自分も自然にそういう生き方にシフトしていけたらいいなぁ、って。

特に数年前からそういう思いが強くなって、仕事とは別に興味があることに積極的に挑戦し始めたの。
例えば、結婚式のオーガナイズや、イベントを企画する活動を始めたんだ。役立つかと思って、フラワーコーディネートやウエディング・プランナーの講習を受けてみたり。
自分自身も人と出会うことが好きだし、他の人たちが出会ったり集う場をつくることが好き。そこでその人たちが心地よく感じていてくれるとすごく嬉しい。結婚式のパーティーの場合、新郎新婦の望みに300%応えようと思っている。 頼まれたことはもちろん、それを一人一人に適した形で実現させたいと心から思うんだ。
お金にはならないから、今のところ、これが仕事に繋がるかどうかはわからないんだけど、、、。

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メル氏:話を聞いていると、ゾンは自分のことだけでは満足しない性格なんだね。

ゾン:例えば周りの人が何か悩んでいる時、話を聞いて楽になるなら聞く。仮に彼らが悩みを話さなくても、周りに人が集まって一緒に時間を過ごすと 酸素カプセルに包まれてるみたいで楽になるんじゃないかって思うんだ。そうやって自分の時間や空間を分かち合うことで誰かに何かを与えられるっていうのが大切。
誰かのためにって言うと聞こえはいいけど、他の人が良い気分だと自分もいい気分なんだから、結局は自分のためだよね。

特に私、輝いている人が好きなんだ。何かに興味をもったり熱中している時、人って表情、特に目が輝くの。自分とコミュニケーションをとっている人が生き生きしていられることが大事なの。
もっとそういう人に出会いたいし、人の目を輝かせられるような何かがしたいな。

メル氏:人との繋がりを大切にしているゾンが、人間関係で何か意識していることはある?

ゾン:相手に興味を持つことかなぁ。
そういえば、きのう友達に会いに行くために電車に乗ってる時にふと思ったんだけどね、「どうして自分はパリが好きなんだろう、多様性が好きで、新しい人との出会いが好きなんだろう。」って。

私、幼い時から、誰が物事や良し悪しを決めたんだろう?って不思議に思っていたんだ。どっちが普通でどっちが普通じゃないとか。みんなそれぞれ自分のままでいればいいのにって。
色々な人生もあるし、色々な人々が居る。正しい考え方とか真実も一つではない。こういうことを時間をかけて自分自身で感じて、理解してきた気がする。

私、人との出会いは自分自身との出会いだと思うんだ。その度に、今まで知らなかった自分の一部を発見していると思う。 自分を知るチャンスが増えるなら絶対オープンで居た方がいいよね。

メル氏: これからどうしたい? 近い未来や遠い未来に、何か希望はある?

ゾン:自分らしく居ることに尽きるなぁ。外から見たら5年後の自分の生活もあまり変わっていないかもしれないけど、 自分が心地よく、納得できる自分自身でないとね。 そのために日々進歩や改善をしていくよ!

メル氏:今日は話を聞かせてくれてありがとう!

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インタビュー後記
ゾンは初めて会った人にも、どんな立場の人にも気さくに話しかけます。だから、彼女が居ると場が温かい雰囲気になります。
人をホッとさせる優しさというのは、相手に合わせることではなくて、心を開いて相手に興味をもつ姿勢なのかもしれません。(私も彼女のようになりたいと何度も思いましたが、、、話を聞いてなるほど、心根が違います。)

“ゾン”という名前はモン族の言葉で“影”、“光を護(まも)る影”の意味だそうです。影が光を護るという考え方が興味深いです。そして周りの人の瞳の輝きを大切にするゾンにぴったりの名前だと思いました。

彼女が好きなことや好きな人に囲まれて、ますます充実した生活が送れるよう、心から願っています。 Merci beaucoup Xong! 😀


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