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世界に一つの贈り物:ファビアンとチェンソー彫刻 Fabien Retterer ファビアン・レットレー

今回は、趣味でチェンソー彫刻に取り組むファビアンに話を聞きました。彫刻を始めたきっかけ、自身の仕事や暮らしについて語ってくれました。

メル氏:こんにちは。 ファビアンはどんな仕事をしているの?

ファビアン: 市役所で公道整備の仕事をしているよ。歩道の壊れている箇所を直したり、線を引いたりする役割で、今は主に工事の予算や進捗の管理監督をしているよ。

メル氏:どんな経緯でチェンソー彫刻をするようになったの?

ファビアン: 自分は元々木が好きで専門学校で木材建築を勉強したんだ。
あと、父親が指し物師(木工職人)だから、いつも身近に木材が置いてあったしね。
でも学校を出たタイミングで自分の希望する内容の仕事が無くて、ちょうど市で募集していた今の仕事に就いたんだ。
仕事では木に触れる機会が無いから、段々、木が恋しくなってきたんだろうなぁ。
フランスには、きこりのコンクールがあって、そこにチェンソー彫刻部門があるから、そういうのがあるってのは元々知ってたんだ。
それで自分も「やってみようかな」って。

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メル氏:いつからチェンソー彫刻をしているの?

ファビアン:5年前、従兄弟(いとこ)の30歳の誕生日に、彼が好きなバットマンの彫刻をプレゼントしようと思いついたのがきっかけなんだ。
その時点で彼の誕生日まで1年あったから、道具を買ってできるかどうか試してみたんだ。
バットマンを彫る前にちょうど親友の誕生日があったから、まずは彼にアイアンマンを彫ったのが一体目だね。

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↑記念すべき第一作アイアンマン。胸にライトが埋め込まれている。眩しい!

メル氏: 木材を扱うなら他の方法もあると思うけど、どうして彫刻を始めたの? 一本の丸太から形を作るなんて難しそう。彫刻の勉強をしたことがあったの?

ファビアン:全然。美術系の勉強もしたこと無いし。でも 趣味だから気負わずに始めたんだ。
間違って削り過ぎたらもとに戻せないし、もちろん難しいことは難しいかな。

メル氏:チェンソーを使うのは怖くない?

ファビアン:う~んそれほど。 感覚的なものだろうけど、自分は工房で使うような工具よりも 、チェンソーの方が好きだし怖くないんだ。
車と同じだよ。車も使い方を間違えれば危険だけど、みんな乗ってるでしょ。
もちろん安全靴や作業用ズボンを着用して、安全には気を付けて作業しているよ。

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↑スターウォーズファンの友人の結婚祝いに彫ったヨーダと、従兄弟の30歳の誕生日に彫ったバットマン。器用にBATMANと彫ってある。

ファビアン:チェンソーって、来木彫刻をするための道具ではないでしょ。それであえて彫るっていうのが面白いんだよ。
同じ理由で、自分は細かい部分とかやすりがけも、なるべく電動工具を使うんだ。

メル氏:プレゼントを受け取った友人や従兄弟はよろこんだ?

ファビアン:うん、大喜びしたよ。
プレゼントを開けるまで、まさかアイアンマンやバットマンの木彫が入ってるとは思わないもんね。笑。
従兄弟はその後も、バットマンの彫刻と自分の娘が一緒に写った写真を送って来てくれたりするんだ。嬉しいよね。
受け取った本人はもちろん、バースデーパーティーに参加していた周りの人たちもみんな興味をもって自分に話しかけてくれたよ。
そういう周りのリアクションが、その後も彫刻を続けるモチベーションになったかな。

メル氏:なるほど。それ以来ずっと続けているんだね。

ファビアン:大切な人の特別な機会があると彫刻を作ってプレゼントしているんだ。もらう方も置き場所に困るだろうから、毎回の誕生日に作る訳ではないけれど。笑。

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↑ボードゲーム、ウォーハンマーのキャラクターと、ファイナル・ファンタジーのサボテンダー。
サボテンダーの台座には本物のサボテンを設置できる。

メル氏:彫刻を一体作るのに、どのぐらい時間がかかるの?

ファビアン:ものによるけど、例えばアイアンマンは仕事の後の時間を使って一ヵ月間、でも時間にしたら正味5~7時間かな。
バットマンは実は材料の木が手に入ったのが従兄弟の誕生日の直前で、3日間で仕上げなきゃいけなかったんだ。結構大変だったなぁ。

メル氏:3日!?何だか思ったより早い!

ファビアン:一度始めたらダラダラせず集中したいタイプなんだ。
作業には集中力が必要だから、こまめに休憩して気分をリフレッシュしているよ。

メル氏:材料の木はどこで手に入れるの?

ファビアン:木は買わずに、知人や友人にもらったものを使うんだ。

メル氏:じゃあ、その都度使う木の種類が違うっていうことだよね。

ファビアン:そうそう。バットマンとアイアンマンは松かな。
鷲はオーク。木によって硬さが違うし彫りやすさも違う。

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↑友人のために彫った鷲のベンチ。翼の細かい表現も、すべてチェンソーで彫ってある。

メル氏:題材の選び方は?

ファビアン:あげる人の希望や趣味に合わせて決めるよ。

メル氏:一番難しかった彫刻は?

ファビアン:特にどれが難しかったっていうのは無いかなぁ、それぞれに違った課題があるから。
課題と言えば、自分がまだ挑戦していないのは人間の顔の表現なんだ。すこしバランスが崩れると違和感が出てしまうからきっと難しいんだろうなぁ、って思って。
スターウォーズだと、ヨーダは人間ではないからザックリと特徴を掴めるけど、ルーク・スカイウォーカーは難しいだろうな。オビワンは髭が多いから何とかなるかな。

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メル氏:チェンソー彫刻はファビアンにとって何?

ファビアン:趣味?、、、課外活動かな。体を動かすのが好きな人が週末にスポーツをする感覚で、自分は彫刻をしているんだと思うよ。
彫っている時は自分の世界に入っているし、実はチェンソーで大きな音を立てるのも結構気持ちがいいんだ。

メル氏:趣味と言えば、チェンソー彫刻の他にも趣味はあるの?

ファビアン:うん。ミニチュアゲーム用のフィギュアに色を塗ること。
実際、自分が今仕事の次に時間を費やしているのはこれなんだ。
SNSを通して仲間で画像を見せ合って意見を交換するんだ。 良い仲間と切磋琢磨できるのがとても楽しい。

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↑世界中で人気のミニチュアボードゲーム、ウォーハンマー。単色のプラスチックで売られているミニチュア達に着色をして使用することがルールになっており、この色塗りに多くの人々が情熱を傾けている。

メル氏:チェンソー彫刻はダイナミックだったけど、これは物凄く細かいなぁ!

ファビアン:細かいから、すっごい時間がかかるんだ。「こんな風にしたい」とイメージは次々出てくるけど手が追い付かないのがもどかしい。

メル氏:ファビアンの趣味が充実しているのは仕事が大変だから?

ファビアン:う~ん、仕事は誰にとってもストレスがかかるものだと思うし 、自分は「好き」を仕事にしている訳では無いけど 、わりと満足しているよ。
ささやかだけれど市民生活に役立つ仕事ってことで、モチベーションも保てる。
何より通勤に時間がかからないのがいい。職場まで車で10分、8時始業で、夕方17時半には家に戻ってこられるんだ。就業時間が安定しているから、趣味に使う時間が持てるのはありがたいな。
不動産業に転職した友達が居て、彼は自分よりずっと稼いでるけど、夜遅くまで、そして週末も仕事をするから仕事の時間がプライベートの時間に食い込んじゃうよね。
まぁ、それぞれ生活のリズムを選択している訳だ。

メル氏:ファビアンが一番好きなことは?

ファビアン:たまに友達と会って時間を過ごすこと。時々飲み過ぎるんだけど、 気のおけない仲間と時間を過ごすと精神的に健康になるよ。
あ、あとスキーが好きで、毎年友人と山へ行っている。やっぱり山とか木とか好きなんだよね。

メル氏:ファビアンは、たくさん時間の過ごし方を持っていて、とてもバランスの取れた生活をしてるように感じるな。

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メル氏:ところで、次に彫るものは決まってるの?

ファビアン:実はいくつも予定があるんだ。
父の友人の定年祝いに庭師の像、友人の叔父家族からは家族全員をかたどってトーテムポールを彫るように頼まれているんだ。
何より、年末に弟の30歳の誕生日が控えてるんだよ。
ちなみに弟はファイナル・ファンタジーが好き。材料の木はもう用意してあるんだ。

メル氏:どれも完成が楽しみ!!今日は話を聞かせてくれてありがとう。

ファビアンのInstagram。作品が見られます。
https://www.instagram.com/fabou_kikoup_et_kip1/

インタビュー後記
チェンソーで彫刻をするなんて、豪快な人なのかなぁ、と思って会いに行ったファビアンは、どちらかと言えば物静かな印象で、彫刻を始めた経緯や方法をとてもわかりやすく説明してくれました。
彼の趣味は木を彫ったりフィギュアに色を塗ったり、作業自体は一人でできるものですが、材料の木を色々な所からもらってきたり、彫刻は必ず人に贈るためのものだったり、周りとの交流をとても大切にしている様子です。
すっかり彼の彫刻のファンになり、「自分にも彫って欲しい!」という言葉が喉元まで出かかるのを何とか抑えて帰って来たのでした。
これからの作品も楽しみです。ありがとう、ファビアン!
Merci Fabien. Bonne continuation! 🙂

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