【モジュラーシンセ】Intellijelのモジュラーシンセケースについてのレビュー 良いところと注意点
ユーロラックモジュラーシンセで遊ぶのには欠かせないモジュラーシンセケース。大体8割くらいの人が既製品を利用して、残り2割くらいの人は自作しているような感じでしょうか。
モジュラーシンセケースにはいくつかメーカーがあります。日本国内で主に流通していて、よく見かけることの多いケースだと、4msの各種シリーズ、Tiptopのmantis、そしてIntellijelのケースが三大派閥でしょうか。他に見かける既製品ケースだとmakenoise、ericasynth、dotred、arturiaのrackbruteあたりに思えます。
私はIntellijelの84hp7uケース、および104hpおよび62hpのパレットケースを愛用しています。Intellijelのケースについて色々書いていきたいと思います。良いケースなんですが、色々癖が多いケースなので一概にお勧めできない気がしています。それでも、気に入った人は使い続けた方が良いというケースでないでしょうか。
ちなみに、、私はモジュールも好きなんですが、モジュラーシンセケースの既製品が好きなんですよね。なんというか、ただの箱なんですが、無骨な中にメーカーそれぞれの楽器として使うための工夫が凝らされているのと、どんな商品も謎のオーラが漂っていて道具として好きです。どれもただの箱なんですが、楽器としての矜持を感じさせます。
Intellijelのモジュラーシンセケース事情
私は最初に7u Performanceケースを2020年初頭に中古で格安に手に入れたのがモジュラーシンセの始まりでした。当時はまだモジュラーシンセもかなり安く、今の半額かそれ以下で買えたのでないでしょうか。Intellijelのケースから始めてしまったため、Intellijelのケースが増殖して今に至ります。
Intellijelはカナダのメーカーで、ケース以外にも良質なデジタルモジュールを多数リリースしています。余談ですが、基本メーカー名表記が頭のiが大文字でIntellijel、なんですがロゴは頭のiが小文字のintelljel なんですね。
デザインが70年代のHelveticaを利用した北米的なシャープなモダンデザインで統一されています。(いわゆるAmtrakのデザインとかに似てる感じの)私はかなり大好きで他にも色々なモジュール揃えたいですね。
Intelljelのモジュラーシンセケースの特徴
アルミ製で非常にスタイリッシュです。 Intelljelはモジュール全般にも言えるのですが、シャープなデザインなので、刺さる人には非常に刺さります。
また、Intellijel 1uという通常のユーロラックモジュールを小型化した専用の小型モジュールを嵌め込むことができます。
ケースそのものの作りや、電源など非常に品質が良いように思える気がします。高級なスーツケース並みに作りが良いのでは?と思える時も多く、値段が高いのもある意味仕方がないのかもしれませんね。また金属工芸のような所有感も感じさせます。特にpalletcaseのヘアライン仕上げとか非常に良い作りです。
TRSフォーンやmidi端子など、たくさん端子がついています。
最初からたくさん端子がついていて、色々便利に使えそうです。
各種端子がない旧パレットケースも発売されていたようで、たまに中古で見かけます。
ちなまにネジはm3で、スライディングナットではないタイプのネジ穴が切ってあるレールが付いてます。スライディングナットが苦手な人にはいいですね。
Intellijelのモジュラーシンセケース全体の注意点
下記の各ケースに詳細は書くのですが、Intellijelのケースには以下の注意点があるのでご注意ください。スタイリッシュで造りも素晴らしい良いケースなんですけどね…
なお、Intellijelケースについている大半の端子は端子用入出力のついた専用のモジュール(基本Intellijel製の1u たまに3uや他社の1uで対応)がないと使えないのでご注意ください。(例外もあってパレットケースのバッファードマルチプルは専用のモジュール買わなくても使えます)
そのため、中古で販売されてる時は端子を使えるようにする専用のモジュールが付いていることがあります。(大抵1uモジュール)
その他の注意点
頑丈なアルミ製なので重いです。厚さ数ミリの相当頑丈なアルミが使われています。ケースはやはりカーボンとかが軽いと言われていますね。
新品の入手性が極めて悪い時がある(特にPerformance Case)一時期、数年待ちと言われていましたが最近はどうでしょうか…
良くも悪くも1uモジュールを集める羽目になり、コストがかかり迷いが増える。普通のユーロラックモジュールを増やすのだけでも大変ですが、さらに1uモジュールも増やさないといけないので大変です。ユーロラックモジュラーシンセという茨の道に加え、さらにもう一つ茨の道が重なります。Intellijelのケースは買うときに覚悟した方がいいです。ただ、1uもそこそこシェアがあって、省スペースで便利なモジュールも多いですね。中古でも時々出てくるので、気になるモジュールがあったら買ってしまった方がいいです。
無理に買わずにブランクパネルで埋めればいいんですが、モジュラーシンセケースは隙間が空いてると埋めたくなるというどうしようもない病があります、、、1uはブランクパネルも入手性が正直イマイチですね、、、
逆に1uを集めるという謎の楽しみも見出すこともできますね。1uの新品モジュールは安いのもありますが、高いのも多いです。特にIntellijel純正品のmidiインターフェースが円安もあり異常に高いです。(下記のリンクを参照ください)純正ケースのmidi端子を生かすために必要なのですが、midiとCVを変換するだけのモジュールですが新品だと3万円以上します….新型だと幅も狭くて高機能なのですけどね。量産効果とか色々な事情があるのは理解できるんですが、これはなかなかきついかな。1uモジュールは中古も結構出回っているのですが、新型の1u midiインターフェースはあまり見たことがないです。多分ですが、新品で高いのでそもそも買う人が少なく、中古も出回りずらいという事情があると推測します。幅の広い旧型モジュールはたまに中古で見かけます。
Intelljelケースのmidiを活かすことのできるモジュールはたぶん純正でしか出ていないんじゃないかな…1uモジュールとケースの専用端子の接続が結構めんどい。マニュアル見ながら接続しますが、端子がわかりづらく正直結構難しいです。palletcaseに1uのmidiインタフェースを取り付けるのですが、midiと電源を間違えて取り付けていて作動しないことがありました、、、壊れずに済みましたが、、、
電源周りの取り回しで足りなかったり、接続が大変という問題が出ることがあります。
Intelljel 1uモジュール
Intellijelは一般的なユーロラック規格を元に1uサイズという高さが3分の1くらいの小型モジュール規格を開発しました。大体ケースの最上段に1uサイズのモジュールが入っています。中古で売られる時はいくつか1uモジュールも付いていることが多いです。
なお、1uモジュールにはpulplogicという規格もあるのですが、Intellijelと全く互換性がないのでご注意ください。かつては世界でpulplogicの方が人気があったらしいのですが、ここ数年はintellijelが殆どとなっていて、Intellijel以外のメーカーからもIntellijel規格の1uモジュールが開発されています。(befaco、mosaic、endorfin.esなど)
現在でもごく稀にpulp logic規格の1uモジュールやケースが中古で流通していることがあるのでご注意ください。
またIntellijel以外のケースでもIntellijelの1uモジュールが入るケースも最近時折見かけます(befacoなど)
1uモジュールは通常のモジュールと同じようにオシレーターや各種ユーティティーなど、それだけで普通のシンセサイザーが構築出来るくらいたくさんのモジュールが発売されています。
世界中のモジュールを検索可能なmodular gridでintellijel 1Uを検索するとたくさん出てきますね。
海外だとIntellijel 1uモジュールだけ入れられるケースなんかもあるようです。また、通常のユーロラックモジュールに1uモジュールをはめる変換パネルや、逆にIntellijel 1uモジュールに3Uモジュールを横にしてはめるパネルもあります。(4hpくらいまでのサイズのユーロラックモジュールを1uのスペースに変換してはめることができます)
前述しましたが、Intellijel以外に、befaco、endorfin.esあたりが1uモジュールを生産しています。メルカリやヤフオクでそこそこ流通してるので、Intellijelと検索すると大抵見つけることができます。ただ、1uでも全然見かけないモジュールやすぐ売れてしまうモジュールも多いですね。1uだとIntellijelのアッテネーターとか結構人気な気がします。lineinやエフェクターの入出力端子モジュールは結構見かけます。
Intellijelの所有ケース各種とレビュー
84hp/104hp 7U Performance Case
比較的大きなモジュラーシンセケースです。
非常に頑丈で安心感を感じるケースです。取手などの作りがいいです。
84hp版だと通常のモジュール168hp分と、1uモジュールを84hp分詰め込むことができます。104hp版もあり、色も黒と銀色の2種類があります。
同じサイズ同士のケースならオプションの頑丈な鉄のパネルで連結して2台を連結することができます。
何度かバージョンアップされているようで、古いものとは電源と端子周りのコネクタが違うようです。新しいものは電源がボックス端子になっていて、-12vの逆接続が起こりづらくなっています。
また、裏側に赤い金属製の足がついていて角度を変えることができます。
旧型は肩掛けベルトも付いてました。
少々大きいですが、それくらい大きくないとモジュールを入れるスペースがすぐ足りなくなりますね。
なおこのケース、クラブとか現場だと何故か小さく見えますが、家だとデカいです。銀色と黒色バージョンがあります。
ちなみに寸法は以下の通りとなります。
Intellijel Perfomance Caseの良いところ
金属製の純正蓋付き
スタイリッシュでかっこよく、全部金属で出来ていてものすごく精度が高い
din midiなど、入出力端子がたくさんついている
頑丈な足で角度を変えられる
作りの良い専用のソフトケースもある。私が昔中古で買った時は記載がないのですがついてきました。
Intellijel Perfomance Caseのイマイチなところ
重い
電源端子が全然足りない(84hpの場合) 1uもあるので入るモジュールも多く、結構電源端子が必要になるのですが、標準だと足りずにタコ足ケーブルが必要になることがあります。
構造上1uにより多くの電源端子が必要なんですが、1uまで電源が遠い気がします。そのため、長い電源ケーブルでないと長さが足りない時もあるかもしれません。
電源部分は構造上、深いモジュールが入らないところがあります。
使用時に蓋を置いとく場所がない。結構邪魔ですw あと金属製でシャープなので置き場とかによっては怪我するかもしれないのでお気をつけください。
高い 円安も相まってなかなかのお値段がします。昔はもっと安かった記憶があり、私も今の半額以下で入手できた記憶があります。
62hp/104hp 4U Pallete Case
薄型でシャープで非常にかっこいいアルミ製のケースです。
使っているのを見ていると欲しくなりますね。
上から専用接続端子、1uモジュール、通常のモジュールの3段構成になっています。
たまに上下を逆にして使う人もいますね。
これは62hp版と104hp版があります。かつては専用端子がない旧型もあったみたいです。このケース、非常に良いのですが、癖が非常にあるので買う際はそこを覚悟してください。中古で結構出てるのは品質の良さと癖が相反してるせいなんでしょうね。
104hpは結構細長いので、ボストンバックなど運搬をどうするか悩みどころかもしれません。(専用バックがおすすめです)
Intellijel pallet caseの良いところ
薄くてシャープでかっこいい ライブで結構見栄えもする気がします。
decksaver(のような)蓋が出ている(移動時は100円ショップでゴムベルト買って付けておくのがおすすめです)
専用端子が便利 特にバッフードマルチプルが多いのが便利です。104hpだとsum端子もあります。
専用バックの作りが良いです。104hp用しかありませんが、持ち運びがしやすいですね。
Intellijel pallet caseのイマイチなところ
かなり薄く、使えるモジュールを選びます。公称45mmまでですが、電源ケーブルの取り回しやモジュールの電源接続位置によってはもっと薄いモジュールしか入りません。2hp製のモジュールでギリギリでないかなという気がします。
Intellijel純正の1uの安いリバーブモジュールがあるんですが、これ入れるのもかなりギリギリです、、、、特にdiyキットは厚いものが多く、入らないモジュールもかなり多いです。蓋つきだと結構厚く、持ち運び時は正直もっさりしたデザインになってしまいます。蓋の高さが5cmくらいあります。
最大の問題点ですが、各種端子のせいで電源端子が奥まってるせいで非常に電源ケーブルの抜き差しがしづらいです。電源ケーブルの抜き差しするのに、側面のネジを外して全部分解する必要があります。専用端子のケーブルの抜き差しも同様です。(分解せずに取り付けもできないことはないのですが、正直分解しないで全てのケーブル取り付けるのはかなり難しく現実的でないです)
対処法として、あらかじめ電源ケーブルを接続しておくというやり方があります。全部出しておいてマスキングテープで止めてますが、正直邪魔です。あと、電源周りのショートなどの事故が起きる危険性があります。ユーロラックモジュラーシンセの電源は大抵10pinなので、10pin電源ケーブルを接続したままにしてます。たまにある16pin電源を入れる時はかなり面倒です。上記の電源対応でたまに分解するとわかるのですが、設計が非常にタイトでギリギリのスペースで作られているのがわかります。1uモジュールの建て付けも結構ギリギリで後からはめて調整するのが大変な時があります。その調整をするのもある意味楽しみの一つですが、、、
構造上仕方ないかもしれないのですが、重量バランスが上部の1u、端子寄りに傾いており、立てて使おうとすると倒れやすいです。
まとめ
Intellijelのケースは、作りが良くて結構流通していることもあり、見かけることも多いかもしれません。非常に良いケースなのですが、癖とうまく付き合うことが必要なので、そこを把握してぜひ付き合ってみてください。
もしかすると、すでに新型とか検討してるかもしれませんが、勝手に要望を書いてみました。
Intellijelの新型モジュラーシンセケースに期待すること
midiインタフェースやオーディオインアウトは内蔵してもいいかも。
端子をつけるだけだと端子を使うのに別途モジュール揃えたり大変なので、最初から機能をモジュールに埋め込んでもいいような気がしますね。作りが良すぎて高価な気がするので、多少コストダウンしてもいいかも
幅や深さにもう少し選択肢があるといいかも 1uモジュール使えるケースはまだまだ少ないので、32hp版で安いケースとかあっても良いのかもしれません。奥行きの深いモジュールの入って、可搬性の良いケースって少ないですね。
acアダプターが一昔前のノートパソコンみたいな大型のものです。もう少し小さいアダプターだったり、USB付きのアダプターだと便利かもしれませんね。
モジュラーシンセケースは必ず必要になるものでして、色々な意味で生産とか在庫管理が大変だと思うのですが、もっとたくさん既製品のケースが出ればいいなと思っております。Intellijelのケースは癖はあるものの、楽器として非常に良さを感じるもののような気がしており、ぜひ選択肢の一つにしていただけたらと思います。