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謎のドローンシンセ NEUTRAL LABS – ELMYRA 2 V2.2の使い方
需要はあまり無さそうですが、ELMYRA2という、謎のドローンシンセKITを組み立ててみたのを、レビューしたいと思います。
機能を把握するとなかなか面白く、音も好みがありますが個人的にはかなり好きです。リバーブとか空間系エフェクトをかけてあげて、ドローンモードで発音したままにするとなかなか気持ちいいです。
現時点だと余り話題に上がることもなく、日本で10人も所有していないのでないでしょうか。メルカリやオークションでもごく稀に出てきますね。
大きさはvolcaより少し大きいくらいで、モジュラーシンセでいうところの42hpです。
デスクトップバージョンとユーロラックバージョンがあり、デスクトップバージョンでも後からユーロラック化できます。
キットはthonkに売っています。セールの時に安く入手しておきました。
組み立て済み商品もboutique pedal NYCに売っていますが、この商品はキットだと半額くらいになりますね。
NEUTRAL LABS ELMYRA2とは
ドイツのガレージシンセメーカー neutral labsより発売されている、ドローンシンセサイザーです。
デジタルとアナログのハイブリッドみたいですが、オシレータがデジタルでフィルターがアナログなのでしょうか。4つのオシレーターを金属製のパッドに触れることにより発音できます。左から1,2,3,4です。
よく見ると金属の線で1,2,3,4と書かれていますね。
それぞれのオシレーターは多彩な発音モードがあり、コードも鳴らすことができます。(一応、TUNEで音程を変えられて、CVで音程を変えることもできそうですが、普通のシンセみたいにアタックが強いわけでないので、普通のシンセみたいにシンセベースを演奏したりできないと考えた方が良さそうです)
フィルターはよく見るcutoffとレゾナンスがついている減算式フィルターです。他にも一部特殊な機能はあるものの、普通のシンセと実は余り変わらず使うことができます。
LFOやATT、ADDなどのモジュラーシンセでよく見る機能はついてますが、内部結線されておらず、実際にパッチングしないと作動しないのでわかりやすいかもしれません。
先代もあり、どうも元々はドローンシンセのLYRA-8をインスパイアして作られたみたいです(そういえば金属製のタッチパッドが似てますね そして名前もインスパイアしてると今更気がつきました)
組み立て
表面実装済みで一見簡単ですが、実はかなり難しいところがあります。
他のキットよりも極少の表面実装部品が大量に使われていて、非常に壊しやすいです。
当方、表面実装の抵抗を一個実はぶっ壊してまして汗
下の説明書キャプチャーのr118というやつです。
力技でショートさせたりしています。(まあ抵抗一個くらいなくても多分動くだろうという)
なんせ、1mmあるかないかのパーツと端子なので、あとでショートさせるのも正直地獄でした。
組み立て当初まともにタッチパッドが作動しなかったのですが、何故か今はまともに動いてます。
まあ動いていればいいんですよね。そのうちすぐ動かなくなってがらくた機材市行きかもしれませんが、、、(最初機材市でジャンク品ですぐ放出することも考えた汗)
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組み立て説明書にも、ここのネジ取り付けでは周りの部品壊さないように、とありますがペンチで締め付けて気がつくと周りの抵抗がすっ飛んでました。というより、ネジの周りにこんなに部品置くなよ、っていうそもそもの設計にかなり無理があるような。ここは道具を使うのは絶対にやめて、手回しでやるようにしましょう!
モジュラーシンセのdiyキットを色々作るとわかるんですが、なんとなく基板の並びとか組み付けが整然としてるモジュールと、建て付けとか部品の並びがなんかイマイチだなって製品の二つがあるんですが、正直この商品は結構ヤバめです。はんだ付けやねじ止めしないといけない周囲にも部品が詰め込まれています。その割には余っている基板のスペースが色々あります。
親切な機材やモジュラーシンセだと、半田付けさせるコントロール基板と制御基板が分かれている場合があるのですが、この機材だと1枚の基板にジャックやボタンなど全ての部品を配置していくので、ボタンやジャック抜き差しの負荷がCPUとかにもかかります。
多分寿命はそれほど長くなさそうです。なかなか良い電子楽器なんですけどね....
パッチングできる端子(いわゆるthonkicon)が異様にたくさんあるのもポイントですね、、、
こういう風につまみやthonkiconが沢山あると、パネルの取り付けがすごく大変だったりしますが、意外にパネルの取り付けはすんなりできました。
アップデート
最新版にバージョンアップするように通常の説明書に記載がありました。説明書通りにv2.2にアップデートして見ましたが、アップデート作業は簡単でした。
(裏側のジャンパをアップデートモードにして、USBマスストレージでフォルダー内にファームウェアをコピーするだけです)
重要な使い方のコツ
CUTOFFおよび、OUCHのCHOKEは時計回り最大(最大値) resonanceとdelayのmix、OUCHのBITEは反時計回り最大(最小値)が初期値です。これやらないとロクに音が出ません(っていうか説明書読まないとわからんという)だいたい他のシンセでCHOKEなんてツマミ殆ど見たことないですね。
各オシレーターのPGボタンを長押しするとドローンモードになり、タッチパッドの操作とは関係なく発音したままになります。
問題はドローンモードにしたとき、どこのオシレーターが鳴っているのかわからないので音を切るのが大変です(tuneとか回して、音の変化で鳴っている音を見つけて、PGボタンを再度長押しして消すしかない)
PGボタンは短く押すとwavetableの波形切り替えになるようです。
各ボタンや機能の説明
以下左側から各ボタンや各機能を抜粋して紹介します。
SYNCボタン
シーケンサーをシンクするときに使います。またタップテンポも使えます。
MODPボタン (MOD programs)
このボタンを押すと各オシレーターのモードを切り替えることができます
かなり機能を持っているんですね
赤 detune
緑 サブオシレーター
ミント コード この時はmodノブでコードの種類を変更するようです。
紫 シェイパー
青 サチュレーター
シアン ビット反転
黄色 ビットノイズ
白 ホワイトノイズ
ピンク LPF
ライム HPF
なお、このボタンですが、後述する機能設定のためのコード入力に使います。このコード入力は説明書読まないと絶対わからない暗号みたいな設定方法です。
また、任意のVOICEのPGボタンを押しながらMODPボタンを押すことで、特定のVOICEだけ変更することができます。
CHRM
クロマチックモード これをONにすると12音階もしくは、コード入力で設定した音階ベースで音が鳴ります。
PGボタンを押しながらCHRMを押すと設定したVOICEのみ音階が変わるようです。
REC
シーケンサーの録音をおこないます。長押しすると全部のVOICEで、短押しするとVOICE1のピッチの動きのみ記憶するようですが、正直挙動がよくわかっていないですね…
PLAY
シーケンサーの再生
なお、この機種のシーケンサーもかなり特殊なようで、音程しか記憶せず、ゲートは記憶しません。ってことですが、正直使い方がまだよく分かってません。
ouchの機能について
フィルターやオーバードライブを組み合わせた物みたいで、bit落としをさらに汚くしたようないい感じで汚れてくれる機能です。プログラムカードやスルーホールの電子部品を差し込んで音の特性を変えることが出来ます。この機能は他のシンセにない音が出るのでなかなかいいですね。前述のように、CHOKEを右側に絞ると音が出なくなるので気をつけましょう。
このメーカーのフィルターモジュールなどにも、このouchと同じように回路変化で出音を変えることができるみたいです。
VOICE部の構造
TUNEつまみがあり、MOD WAV ENVつまみがあり、PGボタンがあります。
MODつまみ
MODPで選択したモードで機能が変わります。
例えば、コードモードだとコードの種類が変わります。
PGボタン
PGボタン短押しでwavetableの波形グループ変更、長押しでドローンモード(音がなりっぱなし)になります。
また、コード入力モードに利用したり、このボタンが重要なようです。
WAVつまみ
WAVつまみでwavetableの波形を変化できます。
ENVつまみ
このつまみ一個でアタックとリリース両方を賄っているようです。
操作コード入力モード
MODPを押しながら、各オシレーターのPGボタンを押すことにより、オシレーターや各箇所の設定を変えていく機能です。
例えば、フィルターを初期のフィルターから、ラダーフィルターに変えたい場合(331)は、MODPを押しながらvoice3のpgを2回押して、voice1のpgを1回押した後にMODPから指を離すと設定変更できます。
フィルターをHPLPの連結にするにはMODP押しながらvoice3のpgを2回 voice1のpgを2回押します。
普通のシンセならディスプレイでエンコーダーで回したり、鍵盤とshiftキーとかで設定切り替えるんですが、この方式のuiは初めて見ました。
チートシートという操作早見表があり、コード入力のコードがわかります。
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ディレイ
volca keysのようなエモいディレイがついています。
ちゃんとmix time fdbkにパッチングできるようになってます。
ただ、なかなか音はノイジーで汚い感じです。
LFO
2機ついていまして、本体とはBPMだけ結線されてるようです。
他のパラメーターには内部結線されていないのである意味使いやすいです。
ADD
モジュラーシンセのユーティリティでたまにある信号をミックスしてくれる機能です。
2つの信号を1つにしてくれますね。
ATT
これもモジュラーシンセのユーティリティでたまにあるやつですが、ただのアッテネーターの機能だけでなく、1つの信号を2つに分配(マルチプル)してレベルをコントロールして下げる(アッテネート)できるみたいです。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/125340129/picture_pc_b4247911c7634cf19090dff57dd6bb58.png?width=1200)
シグナルフロー図見るとわかるんですが、LFOとかattは前述のように実際にパッチングしないと作動しないのでわかりやすいです。
これらの機能で単体でも結構遊べます。特にATTでLFOのかけどあいを変えるのが楽しいですね。
良いところ
音源やフィルターの種類がたくさんあり、なかなかの高性能
そんなに太い音でないものの、時々、4つのオシレーターの相互作用かものすごく良い音がする時がある 鳴らしっぱなしで楽しめる
オシレーターの種類が多い
パッチングポイントが多い
12音階でも鳴らせて、普通の減算式シンセに近いので実は気楽に使える
デスクトップ版は電源がUSB-type Cでなんとなく気楽
通常回路と独立して、アッテネーター(ATT)やミキサー(ADD)がついている
単体でもなかなか遊べそう
SE-02やVOLCA KEYSみたいなチープなディレイが良い
OUCH機能が他のシンセになくて良い
基板によるOUCH機能の変化が楽しい
volcaより少し大きいデザインとたたずまいがなかなか格好良い
コードによるコマンド入力が慣れるとなかなか面白く機能切り替えしやすい
イマイチなところ
コードによる機能設定は説明書必須
PG長押しによってドローンモードにしたとき、どこの音源が発音しているのかわからない 各音声の発音を見るインジケーターは必要だったのでは
各オシレーターのボリュームをつけて、ステレオにしてPANがあるともっと音作りの幅が広がったかも
実は案外普通のシンセに近い
ヘッドフォン端子が欲しかった
ディレイがチープすぎてノイズ発生器みたいになりがち
一枚の基板に全ての部品を取り付けているため、ボタンとかジャックの負荷が一枚の基板に全てかかる
いつ壊れるかわからない不安定さを感じるenvつまみが一個しかない(RELEACEのみ?)
フィルターの効きがおとなしい