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プロにこだわり続けた5年間 〜大元朱菜〜

5月も終盤に差しかかり、もうすぐ6月を迎えようとしている。
バレーボールも、2022-23シーズンが終わり、いよいよ新シーズンの幕開けだ。

各チーム、今シーズンをもって退団する選手たちが続々と発表されている。今年は例年より退団者が多いイメージ。そして、6月からはどのチームも新体制となり、新しい一歩を踏み出していく。

ヴィクトリーナ姫路も例外ではなく、4/28に11名の退団者が発表され、一時騒然とした。

過去を見ても、11人の退団者は最多。
V2降格、2024-25シーズンからの新リーグ開幕と、色々な要因が考えられるが…
その中に、大元朱菜の名前もあった。

遡ること5年前。
2018年度の内定選手として、ヴィクトリーナ姫路に5人の選手が加入した。
当時はヴィクトリーナ姫路が創設して間もない時期でもあったので、トライアウトを実施していた。大元選手は、トライアウトを経て入団。
当時関西2部リーグに所属していた天理大学出身。(彼女が4回生の秋に1部昇格)
関西2部リーグの大学から、Vリーガー(しかもプロ選手)が誕生するという、バレーボーラーにとっては夢のある話でもあった。

そこから5年間、プロバレーボーラーとして、トップレベルで戦い続けた。それだけでも賞賛すべきことだが、「大元朱菜」の凄さは、他にある。

プロで戦うためのポジション転向

私は大学時代を知らないので、後で本人から聞いた話だが、大元選手は天理大学在学中、アウトサイドヒッター(OH)としてプレーしていた。
そのままOHとしてプレーしていても、姫路に入団出来たかもしれない。が、当時のヴィクトリーナ姫路は、ミドルブロッカー(MB)不足に悩まされていた。
現に、OHの高木理江選手が、MB不足によりポジション転向した背景もある。

チームとしても、MBの補強は早急に対応すべき事案でもあった。
恐らく、そのようなチーム事情も知っていたであろう彼女は、MBとしてトライアウトを受検。見事合格。
プロになるという夢を叶えるため、バレーボールを続けるため、大きな決断をしたのだ。

全日本6人制バレーボールリーグ総合男女優勝大会
2018年3月 撮影

正直、不慣れなポジションで入団出来たとしても、そこから活躍するにはかなりの努力が必要である。並大抵の選手だったら、挫折しているかもしれない。
でも彼女は違った。
誰よりも努力を重ね、そしてヴィクトリーナ姫路のMBとして、欠かせない選手となったのだ。

バレーボールへの追及心・探究心

ヴィクトリーナ姫路には優秀なMBは多数いる。
ブロックに長けた長野有紗選手、全日本に選出された実績を持つ佐々木千紘選手、V2時代に3冠を獲得した吉岡可奈選手など。
(※吉岡・長野の両選手は、今季で惜しくも退団)
MB不足の暗黒時代から一変、今ではMBのポジション争いは激戦区となった。 

そんな中でも、大元選手がトップレベルで戦えたのは、バレーボールに対する姿勢である。

2020-21シーズン、彼女のレギュラーラウンドの出場は、わずか3試合にとどまった。理由は怪我である。
毎試合ベンチの外から試合を眺める歯痒さもあっただろうが、試合後に見る彼女の表情は、どこか先を見据えた表情をしていた。

そのシーズン、私は裏方としてバレーボールに関わっている時期であったので、夜遅くまでホームゲームの設営を行っていた。
そんなある日、時刻は19:30を少し回った頃だろうか。体育館の入り口付近に見覚えのある人影が現れた。そう、大元朱菜選手だ。
前日練習はとうの昔に終えている。わざわざこんな時間になぜ体育館に来たのか尋ねると、体育館周辺をランニングしていたそう。その際、遅くまで明かりがついた体育館が気になり、訪れたそうだ。

怪我で出場出来ない分、今の自分に出来ることを考えて行動する。それだけでも素晴らしいが、遅くまで準備していたスタッフのことが気になり、わざわざ体育館に立ち寄ったのだ。
ストイックにバレーボールに向き合い、さらに自分がプレー出来ていることに対しての周りへの感謝を忘れない選手。そういう姿勢が、本人を強くし、チームにとって欠かせない選手となったのではないだろうか。

「筋肉痛」は「成長痛」

2020年より、世間はコロナ禍になり、自粛ムードが漂っていた。
バレーボールもその影響は大きく受けており、試合は軒並み無観客・中止となっていた。

チームやファンが、バレーボールに対して何かもどかしさを抱いている中、大元選手はトレーニングの様子をInstagramに投稿し始めた。

自粛ムードの中、選手がSNSで発信していくことは大切だが、それ以上に、プロのトレーニング内容を見ることが出来るのはなかなか無い貴重な機会である。
始めは投げるどころか、扱いすら出来なかった20kgのメディシンボールを投げる様子の動画を載せている。彼女の成長が見てわかる他、実際にその成果はプレーにも表れていた。

2022-23 V.LEAGUE Division1 WOMEN 岡山大会
2023年3月 撮影
ボールが潰れるほど体重が乗っているのがよく分かる。

スパイクに体重が乗ったことも大きいが、何よりMBとしてブロックの軸が安定したのが1番大きい。ワンタッチを取るにしても、シャットするにしても、身体が流れることが少なくなった。
これはこの5年間見てきた私の中で、1番躍進を遂げたポイントだと断言できる。プロバレーボーラーとして、日々の努力を積み重ねてきた彼女の賜物だ。

応援してくれる人は自慢の人ばかり

彼女はよく、感謝の言葉を口にする。
自分を支えてくれる人たちや、どんな時でも応援してくれるファンの人に向けてー。

応援したい選手とは、実際どんな選手だろうか。
プレーで魅せてくれる選手かもしれないが、必ずしもそれだけではないと思っている。
選手としての振る舞い、ファンへの接し方。私はどちらかと言うと、プレー以外の部分も大切にしている選手が好きである。彼女はまさに、お手本のように体現してくれている。
ただ、それが自然に出来る選手は少ない。
彼女がプロバレーボーラーとして振る舞えるのは、日頃から周りへの感謝を忘れていないからだろう。

いつだったか、彼女が私にくれた言葉が印象に残っている。
「いつも応援してくれてありがとう。バレーボールを続ける理由になってます」
応援してくれる人がいるからこそ、バレーボールを続けることが出来ている。また、応援してくれる人がいるから、バレーボールを続けようと思っている。この言葉は、きっと彼女の本心だったのではないだろうか。

ヴィクトリーナ姫路として最後の大会だった黒鷲旗。大会終了後、彼女はInstagramにこう綴っている。

1つ言いたい事はどんな時も支えてくれた人や応援してくれた人達が素敵過ぎると言う事です。
私にとって尊くて自慢の方々ばかりです。
そんな人達をいつまでも大切にできる人間でありたいと思います。

Instagram(@shunalri)より

最後に

ここまでたくさん「大元朱菜」という選手について語ってきた。今回、noteを綴るにあたって、出会ってから今までのことを振り返ってみたが、やはり私にとっては全てが一流で、自分の時間を使ってまで応援したい選手のひとりであると再認識した。

大好きなバレーボールを心の底から楽しんでいる彼女を、たくさんの人に知って欲しい。

そして私は、彼女がバレーボールを続ける限り、これからも応援し続けるであろう。

2019年3月 撮影

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