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千葉県富津の新名物:江戸前オイスター/Edomae Oyster@新富津漁業協同組合
2022/02/17訪問
先ず前回こちらのレポートに江戸前オイスターとは何かを書きました↓
今回は念願叶い、江戸前オイスターを養殖している新富津漁業協同組合さんに行く事が出来ました。当日現場を案内してくれた担当の浅倉さんに開発から今に至るまでの色々なお話しを聞いて参りました。そして現場付近でこの牡蠣を楽しめる店を併せてレポートさせて頂きます(^o^)
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最寄駅と思われるJR内房線大貫駅からだと車で約6分。徒歩だとおそらく45分位かかると思います。バスもないので行くならタクシーがベストでしょう。
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↑到着しました。ちょっと周辺を見てみます。
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ここは今も海苔養殖が主な漁業で、千葉県での生産量約5割を担ってると言われてます。
ちなみに千葉海苔は風味豊かな海の香りが大きな特徴です。初めて食べた時はあまりの旨さに本当に驚きました。よく行く浅草の寿司屋の大将も『いや千葉海苔は旨いよ!』と絶賛しています。海苔養殖に関して詳しくはこちらをご参照下さい↓
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さて、この日現場を案内して頂ける事になった同漁協指導部の浅倉さんが来てくれました。早速色々見て行きましょう(^o^)
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最初に見せて頂いたのは、海中から上げて牡蠣が入っているバスケットを高圧洗浄機のような物で洗ってる様子でした。海草だか海の藻のような物がびっしり付着してました。通常は一ヶ月位の周期で上げてカゴを変えたり洗浄したりするそうですが、忙しくてなかなか作業が追っつかないそうです。上記写真右側のブルーシートの中では、牡蠣を大きさによって振り分けてる作業もしてました。
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ちなみに養殖牡蠣生産量日本一を誇る広島県では垂下養殖法と言って、稚貝を付着させた帆立貝の殻を沖合のイカダから大量に海中に吊し牡蠣を成長させます。ここ富津ではオーストラリアで一般的なシングルシード方式で牡蠣を養殖してます。これは牡蠣を一つ一つバラバラの状態でバスケットに入れ海中に沈め、牡蠣の成長に合わせメッシュの大きさを変えていく養殖法です。垂下養殖法と違いかなり手間がかかりますが、一つ一つ殻の大きさが揃い、カップの深い身入り良い牡蠣に成長するそうです。
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次に見せて頂いたのがこのオレンジ色の物体です。
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これはクペルと言うフランス式の牡蠣稚貝採取器具です。これまで日本の牡蠣養殖は帆立貝や牡蠣の貝殻を海中に垂らし、付着した種牡蠣をそのまま育てる方法が一般的でした。このクペルはあくまでも稚貝を採取する為に特化した物で、帆立貝や他の殻は1回しか使えないのに対し、稚貝採取後も何回も使える優れ物です。
余談ですが、2011年3月11日の東日本大震災で壊滅的被害を受けた宮城県南三陸町の牡蠣養殖業者さん達は、フランスから牡蠣養殖器材の支援を受けました。その中にこのクペルが入っていたのは言うまでもありません↓
続いて、牡蠣を浄化するプールのある建物の中へ案内していただきました。
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牡蠣を生食で流通させるには、国で定められた検査基準をクリアしなければなりません。ここでは、水揚げ後24時間、紫外線で滅菌した海水を循環させている水槽につけて雑菌や糞を排出させ牡蠣を浄化させています。
個人的にこの浄化プールは非常に興味がありました。なぜならばスーパーの鮮魚コーナーで売られている生食用牡蠣と加熱用牡蠣の違いを説明出来ない自称牡蠣通の人が身の回りにいたからです。生で牡蠣を食べるという事はどれだけ生産者さんが経済的にも作業的にも苦労してるかが分かりました。今後はその様な方に生産者さんの観点で上手く説明出来そうです。
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『牡蠣がお嫌いじゃなければどうぞ』とおっしゃってましたが、いやいやいや、嫌いなどころか自称『魚介馬鹿一代』ですからもちろん大好きです!(#^0^#)♥まさか試食させて頂けるとは思ってなかったので、超嬉しい瞬間でした(#^.^#)
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先ず左側の『地種』ですが、2018年に養殖を始めるにあたり、当初は他の県から持ってきた種牡蠣を使うつもりだったらしいです。しかし貝毒やらなにやらの理由で千葉県or富津市から許可が下りなかったそうで『それならば目の前の海から在来種の牡蠣を探したるわ!』と熱い思いで浅倉さんが採取した今に至る江戸前オイスターの地種が正にこれです。
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そして右側の三倍体ですが、『三倍体って何?』と思われる方がいると思いますのでちょっと説明を。簡単に言うとこれは生殖能力を持たせないように改良された牡蠣です。タネ無しスイカをイメージすると分かりやすいかもしれません。魚介類は普通、繁殖期に向けて体内にエネルギーを貯め、産卵後はそのエネルギーを使い果たし身肉は痩せます。つまり三倍体の魚介類は産卵しないのでそのエネルギーで自分自身が成長していき身が痩せる事がありません。ですので生産する側としては通年での出荷が可能となりメリットが絶大なのです。
三倍体真牡蠣についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご参照下さい↓
ちなみに以前栃木県で食べたプレミアムヤシオマスも三倍体の魚です↓
では試食させていただきます(^o^)
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口の中に入れて最初に感じたのはボリューム感でした。一見小さく見えますがかなり食べ応えがあります。噛んでいる時に先ず気付いたのは貝柱の大きさです。そして噛み締めながら全体的な風味を感じ、飲み込んだ瞬間に口の中に残る後味に思ったのはここ富津の海でした。旨いです(^o^)。
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地種のあと三倍体も頂きました。かなり微妙な風味の違いは感じましたが、この時は具体的にその違いをどう表現したらよいか分かりませんでした。ただ明らかに言えるのは両方とも大きさの割にボリュームと食べ応えがあり、旨かったと言う事です(#^.^#)
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さて、実際の養殖現場にて直に江戸前オイスターを試食をさせて頂きました。この後は近隣の飲食店で調理された物を食べて行きます!
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先ず最初はこのお店。養殖場からは車で5分位です。↓
余談ですが、以前この店でアナゴの刺身を食べました。もっぱらここ富津ではアナゴは『はかりめ』と呼ばれていて古くからご当地グルメとして親しまれています。
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江戸前の『はかりめ』も旨いので一瞬ついでに刺身も頼んじゃおうか迷いましたが、グッと堪えました。
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『はかりめ刺身』は我慢できましたが、これは頼んじゃいました。なんてったって江戸前オイスターは海苔養殖の現場で育ちますし、江戸前千葉海苔の生を食べられる機会はあまりありません。
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先ほどの養殖現場では2個頂き牡蠣そのものの味を確認しました。今日4個目はポン酢で風味の変化を確かめて行きます。
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1つは上記画像のように万能葱、紅葉おろし、ポン酢をかけ実食。やはりこの薬味とポン酢は本当に生牡蠣に合うなと改めて感じます。旨味が際立ってきます。もう1つはレモンのみを絞りポン酢をほんの少し垂らして頂きました。これもレモンの爽やかな香りが際立ち、かつ牡蠣がミルキーに感じ非常に旨いです。やはり貝柱が大きく食べ応えがあります。
焼牡蠣も頼みたかったのですが、次があるので諦めました(>_<)。ちなみにここ大定さんでは江戸前オイスター提供期間中事前に予約すれば牡蠣尽くしを作ってくれるそうです。
では次へ。
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昨年初めて江戸前オイスターを食べた『いそね寿司』さんに来ました。今度は加熱調理された物を食べてみましょう。
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ここでは酢ガキ、天ぷら、フライが1品としての注文になりますが、さすがにそこまでの量は食えない(>_<)。どうしようか悩んでいた私の表情を察してか、マスターが『各2個づつで作りましょうか?』と言ってくださいました!(^o^)。相変わらずさすがホスピタリティー抜群のマスターです!
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ここ、いそね寿司さんでは若干蒸して提供していますので完全な生ではありません。先ほど生は充分食べたので、この絶妙な仕事が施された寿司職人の技が光る1品は本当に嬉しいです。若干加熱された事により旨味が際立っているのが口の中で良く分かります。
余談ですが、私の好きな寿司バトル漫画『将太の寿司』のエピソード仙台寿司コンテストで、主人公将太を圧倒的な実力で負かした幻の寿司職人『大年寺三郎太』が作った牡蠣の握りもこのように若干蒸していたと記憶してますw
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徐々に味の変化を楽しむには、この3品の中では2番目に天ぷらを頂くのが王道でしょう。衣の中のカキは柔らかくジューシーでカキの旨味汁が天つゆにベストマッチしています。塩→天つゆの順で食べ、どちらも旨いんですが、私個人的には天つゆの方が好きです(^o^)
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自家製タルタルソースも付いて来ました。
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先ほどの天ぷらと違うこのザクッとした食感に、ジューシーな牡蠣の旨味が合わさって非常に旨いです。フライだとなんか味が濃く感じました。更にこの自家製タルタルソースの玉ネギがフライとベストマッチしてて良かったです(^o^)
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さて今回初めてここ新富津漁業協同組合さんに訪問しましたが、案内して頂いた浅倉さんによると、牡蠣は今後『地種』『三倍体』そして何と『岩牡蠣』の3本柱で養殖を進めて行くとの事です。
『地種』のシーズンは大体3月くらいまでとして、その後『岩牡蠣』『三倍体』と収穫出来れば正に通年での出荷が可能になります。
『江戸前千葉海苔』の生産者さん及び収穫量は激減の一途を辿る中、漁協存続の危機を救うのがこの『江戸前オイスター』ではないかという事を案内して頂いた浅倉さんのお言葉から強く感じました。
最後に、ネットで『江戸前オイスター』で検索すると色々な情報がヒットします。↑上記テレビ朝日ごはんジャパンでも取り上げられたように、その魅力は自然に広がり関東圏のオイスターバーや飲食店などで取り扱う店が増えている様子。
次に新富津漁業協同組合さんに行く時は、三倍体と岩牡蠣(夏でも爽快に食べられるよう『爽夏(そうか)』と名付けられてる)の方ももっと詳しく調べたいと思います(^o^)