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MtG アグロデッキ向けの基本的な土地枚数の確率計算


△1:11/10 一部追記

◾️前提・留意事項

本記事は私がアグロの土地構成についての考えを整理する為に、その前提となる基本的な確率計算についてまとめたものである。従って、内容的には当たり前な、計算すれば誰でもわかることしか無いことをご留意願いたい。恐らく、少し探せば同様の検討をした記事は出てくるであろうと思われる。

また、私は特に確率計算が得意なわけでは無いので、もし間違いなどあればご指摘・ご意見あれば是非賜りたい。尚、本記事では計算を簡略化する為基本的には単色想定で記載した。

また、本記事の画像は全て下記から引用した。

◾️背景

アグロデッキは能動的なアクションを多用する性質上、土地を除くデッキの大部分はメインプランに貢献するカード(クリーチャーやオフェンシブなアクション)で占められ、その他のリアクションスペルや補助パーツは必要最低限に抑えられるのが一般的である。

デッキの安定剤となるドローやトップ操作と言ったアクションに頼ることができない為、他のアーキタイプに比べてどうしても安定性に劣ると言う欠点を有する。

だからこそ、アグロは最も真摯にデッキのトータルバランスと向き合わなければならない。

本記事では、デッキのバランスの基本となる土地構成を決めるにあたり、前提となる確率計算を行い結果をまとめた。

◾️土地構成に対する要件の定義

土地構成を決めるにあたり、まずはデッキの動きから土地の枚数に求められる要件を明確にする必要がある。実際のゲームを具体的に考えた時に、許容可能な動きをするために、

①何枚までストレートに土地を伸ばさなければならないか(スクリュー条件)
②何ターン目に何枚までなら土地を引いても動きを維持できるか(フラッド条件)

である。
尤も、よほど特殊なデッキでない限りある程度相場は決まっている。
例えば、1〜2マナのボリュームが多く、4マナ域が1スロット、理想的な周りで4〜5ターンキルを目指すスタンのアグロデッキであれば、

①3ターン目に1+2のダブルアクションをする為、3枚まではストレートに伸ばしたい(4マナまでストレートに伸びれば嬉しいが、止まっても許容できる)
②3ターン目までに5枚以上の土地を引いてしまうと以降のターンでマナを使いきれない

と言った感じになる。この辺りはある程度主観で見積もっても問題ない。フラッドの方は極端な例だと初手ランド7枚等も当てはまるが、その場合はそもそもキープできないので、3〜4ランドキープを想定して考えるのが良い。
私の趣味デッキであるモダンのカルドーサレッドの場合だと、下記のようになる。

①奇襲隊を2ターン目にプレイするために2枚までは必ずストレートに土地を置きたい(3ターン目に3マナあれば理想的だがなくても十分)
②2ターン目までにスペルを4枚+土地を2枚プレイするため、先手の場合2ターン目に4枚、後手の場合2ターン目に5枚土地を引くと以降のターンにアクションが無くなる

但し、土地さえ適正であればスペルはプレイできる前提である。受動的なスペルや特定の状況でしかプレイできない(プレイする価値がない)スペルを引いていると、更にシビアになる。
また、これはあくまで検討をスタートするための暫定値である。検討が進んでいけば土地構成もスペル構成も更新されて当初の想定からズレていくので、目安程度にとらえておいてある程度全体像が見えた段階で見直すのがよかろうと考えられる。

◾️初手7枚の土地枚数の確率分布

まず、初手に何枚土地が含まれるかを求める。検討を簡単にするために先に仮定を置いてしまうが、アグロのゲームレンジにおいてキープ判断ができる初手中の土地枚数はほとんどの場合2〜3枚である。1ランドや4ランドでキープしないことがないわけではないが、リスクに見合うそれなりの理由が必要になる。

・デッキの総枚数:d[枚] (本記事中では60とする)
・土地の総採用枚数:k[枚]
の時、初手7枚にx枚の土地が含まれる確率p(x)は、

で求められる。分子が土地x枚を含む初手7枚の組み合わせの総数、分母がxを限定しない初手7の組み合わせの総数である。
・k=18~25
・x=0~7
の結果を下表にまとめる。

また、この結果を横軸:初手7枚中の土地枚数x、縦軸:その初手を引く確率、で整理したのが下図である。

より直感的にするために上述の計算結果をまとめて、
・x=0~1:スクリュー
・x=2~3:適正
・x=4~7:フラッド
としたときのそれぞれの確率は下表の通り。

単純に数字だけで見た場合、適正な土地枚数(2~3枚)の初手7枚を引ける確率が最も高いのは、土地枚数k=21枚の構成で、それでも59.6%に留まることがわかる。
また、分布の頂点であるk=21(59.6%)に対し、隣接するk=20(59.3%)、22(59.5%)はそれぞれ0.3%、0.1%しか差が無いのに対し、k≦19、23≦kの領域では土地枚数kを1枚増減させた場合の変化率が1%前後になることがわかる。1%の変化を大きいと捉えるか小さいと捉えるかは別として、どの枚数が分布波形のどの領域であるかは覚えておいて損はないだろう。

◾️1マリガンまで許容した場合の確率

前項は一発勝負(0マリガン)で土地を何枚引くか、適正な枚数でキープできるかの確率だが、実際のゲームではマリガンによって仕切り直すことが可能なので、1マリガンを許容した場合に適正な土地枚数でキープできる確率p'(x)を求める。
但し、あくまで1マリガンしても土地を適正な枚数引ければ十分なパフォーマンスが発揮できるデッキであることが前提である。
また、デッキの構成や引いたスペル次第でもあるが、1マリガンした上でキープの判断をするためには、序盤数ターンのプランを立てるのに必要な十分数のスペルが(1枚ボトムに戻す前の)7枚時点で見えている必要がある。従って、本項で言う「1マリガン後の土地枚数」とは、「1枚ボトムに戻す前の7枚時点」での土地枚数を示すものとする。

p'(x)は
・0マリガン時点で土地を適正枚数引きキープできる確率
・0マリガン時点で適正土地枚数でキープできず、かつ1マリガン時点で土地を適正枚数引きキープできる確率
の和となり、下式で表される。

適正土地枚数をx=2 or 3 とすれば下記の通りである。また、その場合の土地総枚数k=18~25の時の計算結果を合わせて示す。

分布波形の特徴は0マリガンの場合と同じである。
k=18~25いずれにおいても、80%以上の確率で適正な土地枚数の初手を引くことができることがわかる。
従って、1マリガンを許容さえできれば、また土地以外のマリガン要因を抑えることができれば、80%以上の確率でパフォーマンスを保った状態でダブルマリガンを防止できる。
また、スクリュー/フラッド率を見ると、k=21,22では大きな差はないものの、k=20ではフラッド率に対してスクリュー率が約3.5%と明確に高い。本記事では詳しく触れないが、デッキのトータルバランスを考えるにあたり、スクリューに振るのかフラッドに振るのかをコントロールすることには高い価値があるためこの傾向は押さえておきたい。

◾️通常ドローで土地を引く確率

前項までで初手の土地枚数に関わる計算をしたので、次にゲーム中の通常ドロー時の土地ドロー確率を整理する。

・通常ドローの枚数:a[枚]
・a枚中の土地の枚数:x'[枚]
とすると、ドローa枚中に土地をx'枚引く確率p(a,x')は、下式で表される。

分子が
・ライブラリー中の土地(k-x)枚から任意のx'枚を選ぶ組み合わせ
・ライブラリー中のスペル{d-k-(7-x)}枚から任意の(a-x')枚を選ぶ組み合わせ
の総数の積(=ドローa枚中の土地x'枚とスペルの組み合わせの総数)、
分母が
・ライブラリー(d-7)枚から任意のa枚を選ぶ組み合わせの総数
である。

・d=60[枚]
・k=21[枚]
・x=1~4[枚]
・a=1~5[枚]
・x'=0~a[枚]
の場合のp(a,x')の計算結果を下記に示す。

・x=1(1ランドキープ)の場合、通常ドローa=1(先手2ターン目のドロー)で土地が引ける確率は37.7%。余程特殊なケースや相手も事故している場合を除いて、1ターン1ランドストップして勝てる環境・マッチアップは存在しない。「土地さえ引けば勝てるからキープ」と思ってキープしても土地は40%弱の確率でしか引けず、引けなければほぼ負けなので、スペルがどんなに魅力的でも、「先手1ランドキープをすること」は「勝率40%を受け入れる」ことと同義である。

・一方、x=1、a=2(後手2ターン目のドロー)の場合、土地を1枚以上引けている確率は47.9+13.8=61.7%であり、十分とは言えないまでも現実的な数字になってくる。後手勝率・マリガンのリスク・マッチアップ相性等を考えれば、38.3%のリスクを取ってキープする判断もできなくはないであろう。

・x=2の場合、3ターン目までに土地を1~2枚引く確率は、先手(a=2):59.3%、後手(a=3):70.3%。→スクリュー条件が3ターン目まで土地を伸ばす、フラッド条件が3ターン目までの土地ドロー枚数が初手と合わせて合計4枚以下、の場合の適正ドロー率である。先手の場合スクリューのリスクが40%程度存在することがわかる。

・x=3の場合も上記と同様に考えると、先手:88.9%、後手:73.7%の確率で3ターン目に土地を3~4枚の範囲に抑えられる。

・x=4の場合、3ターン目まで土地を引くことが許容できないので基本的にはキープできないことがわかる。基本的に4ランドキープできるのはミッドレンジスピードでロングレンジのゲームを想定する場合のみであろう。

前項含めて計算結果を見るとわかることだが、アグロデッキは「軽く寄せるが1ランドキープはできないし早期のランドストップも許容できない」「デッキが軽いのでマナフラッドの閾値も低い」という性質上、土地ドロー枚数の成立範囲が他デッキタイプに比べて狭い。
その上、「ドローやルーティング等の安定化アクションを取りにくい」ことからスペル側での回避策も限られており、これが「アグロは不安定」という評価の根本的な原因であろう。
だからこそ、できることはしなければならないのである。

△1:11/1追記
k=21[枚]の場合だけでは限定的なので、k=19~23の計算結果を追記します。

◾️フェッチランドの圧縮効果について

前項までとは毛色が違い、やや主題とは逸れるが、土地枠単独で土地のドロー確率に影響する内容なので触れておく。
但し、内容自体は「フェッチを切ったらライブラリー中の土地が1枚消えるのでトップの土地率が変動する」というだけなので、計算結果だけ置いておく。

但し、土地総枚数21枚、ドローa枚中に土地は含まないものとする

フェッチランドの圧縮効果(トップ土地の確率の減少率)は1枚あたり約1.3%。
正直劇的な効果はないが、カルドーサレッドのような「初手はしっかり2~3ランドでキープしてそのあとは土地を引きたくない」ようなデッキであれば背反のない範囲で採用しない理由もない。
色の安定性やライフ1点の価値、シャッフルしたいギミックの有無、墓地利用有無等、様々な相互作用があるので、許容できる範囲でできるだけ入れる、が良いだろうと考えられる。

◾️終わりに

長々と賢しらに数字を並べたが、これらの計算結果はあくまでただの数字、デッキのバランスを考える前提条件でしかない。しかし、たかが数字、さりとてそれは紛れもなく事実であるからして、その事実を直視してどうやって土地事故に立ち向かうか・付き合うかを決め、また土地構成に立ち戻り…の繰り返しがデッキ構造の設計である。

正直、計算してる中でアグロデッキの不安定性を示す数字に何度か直面しているが、そこを追及して少しでもデッキの素性を良くしていくのも、mtgの、アグロの醍醐味の一つであろう。

これらの結果を受けたデッキ構築に関するアイデアについても考えを整理してアウトプットしていきたい。
その検討にあたり調べている中で発見した、先人の素晴らしい記事を紹介しておく。

正直言いたいことはこれらの記事に書かれている気もするが、せっかくなのでよりアグロに向けた整理の仕方をしてみようと思う。

以上
感想とかもらえたら喜びます。ぜひ。



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