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私の好きなカバーソング (2)ジャズ編
昭和歌謡もいいけど、ジャズが好き
高校の頃友人の影響で流行のフュージョン音楽を聴き始めた。当時はクロスオーバーとも呼ばれていた。ロックとジャズの中間的音楽で、多ジャンルの混合ということだが、耳触りがよすぎてだんだん飽きて本モノのジャズに傾倒していった。
ジャズではスタンダード曲の歌唱や演奏は当たり前で、カバーとはちょっと意味が違うかもしれない。耳に慣れ親しんだ曲がアーチスト独自の解釈で演奏されるのでスリリングだ。
ちなみに私の好きなジャズ音楽家ベスト5はマイルス・デイビス、キース・ジャレット、ビル・エバンス、ミシェル・ペトルチアーニ、パット・メセニー、次点はエリック・ドルフィーとサラ・ヴォーンだ。ベタですよね。
今回はキースとマイルスのモノを紹介したい。
キース・ジャレットのスタンダーズシリーズ
キースがピアノトリオ、スタンダーズを1983年に結成し早期に世に出した3作(Vol.1, 2とLive)はどれもが大傑作。主に米国のスタンダード曲をキースなりに解釈し演奏する。そもそも歌物で好メロディーの曲ばかりだが、静かに始まる曲でも3人は途中から自由気ままにアドリブでぶっ飛んでラストで必ず見事な着地を決める。とにかくカッコいい。
お薦めはVol.1の3曲目「It Never Entered My Mind」でこれはマイルスの名演もある。Vol.1ラストの「God Bless The Child」、ビリー・ホリディ、エリック・ドルフィーのバージョンもあるがキース版は終始ノリノリ、体が勝手に揺れるあっという間の15分。Vol.2の2~4曲目の流れは控えめに言って凄すぎる。神々しい。Live4曲目「Too Young to Go Steady」、ジョン・コルトレーンの演奏もあるがイントロからシビれる分だけキースの勝ち!Liveは全曲が素晴らしいがキースの唸り声がちょっと邪魔かな。
マイルス・デイビス「タイムアフタータイム」、「ヒューマンネイチャー」
これこそカバー音楽の極致、真髄だろう。ジャズの帝王マイルスがポップスのヒット曲を演奏して1985年当時話題になった。原曲はシンディ・ローパーとマイケル・ジャクソンの大ヒット曲。「タイムアフタータイム」はLPレコードサイズの12インチシングル盤レコードが発売された。時代はCD普及前夜だ。
大学を卒業し就職したばかりの私は、原曲が好きでその大きなシングルアナログレコードを買った。
卵の殻の上を歩いて渡るマイルス
マイルスのバラード演奏は「卵の殻の上を歩いて渡る」と称される。淡々とメロディーを吹いても切々と響き繊細で緊張感半端なく、他の演奏家と一線を画す。
この2曲はライブを含めると多くのバージョンがあるが、最初に発表されたアルバム「ユア・アンダー・アレスト」のものがいい。原曲に忠実な演奏で、タイムアフタータイムはイントロのマイルスの最初の一音を聴くだけで当時を思い出し切なくなる。音楽を聴く意味や愉しさがそこにある。まさに「音楽はタイムマシン」。
耳に残る素敵なヒット曲は多くのアーチストに歌われ、演奏されスタンダードになり、名曲になり、名演が生まれる。
畠山美由紀「歌で逢いましょう」
カバーソングでもジャズでもないが、ここでぜひ紹介したい。
なぜ私たちが歌や音楽を愛するのか、カバーソングを聴きたくなるのか。その理由がこの1曲に凝縮され、想いが溢れているからだ。