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バベル号ガイドブック レビュー&感想

いいゲームなわりに知名度が低いと感じたので、「未プレイ者向けのおすすめレビュー」と「既クリア者が読んで楽しい感想」をひとまとめにした一挙両得記事を書いた。


【どんなゲームか?】

ビジュアルが可愛い 動くともっと可愛い

ビジュアルにグッときて購入した、バタフライエフェクトをテーマに盛り込んだパズルアドベンチャーゲーム。プレイ時間:9時間程度。
難易度は平易だと思うが、日本語での攻略情報があまりなく、詰まると大変かもしれない。

4人の主人公それぞれの視点でシーンが構成されており、各々のシーンでの振る舞いが他の主人公に影響していく。バタフライエフェクトのギミックは、「ある主人公のふるまいにより他の主人公にどういう影響が出るか?」の分岐を楽しむというよりは、「ある主人公で詰まった時にどうすれば打開できるのか他の主人公のシーンを見返す」という具合で、変化のバリエーションを楽しむというよりは、パズル・推理部分に重点が置かれている。

主人公らのタイムラインはこんな感じ

グラフィック・音楽・UI等全体を構成する雰囲気は高水準だが、ストーリーは万人受けするようなものではない。パズルは楽しいが量的には少ない。翻訳は好きじゃない部分もある…そんなゲームだ。


【何が面白いのか?】

ズバリ「倫理観の置き場が分からないストーリー」が面白い。
圧巻のビジュアルに誘われてゲームを起動したプレイヤーは、いきなり明るい調子で死を語り始めるキャラクターたちに面食らうことになるだろう。

このゲームの舞台である「バベル号」とは、死んだ人間から、記憶を消去し、遺留品を処分して、転生させるシステムのことである。そして物語は、とある客船が不幸な事故により転覆し、大量の死者が出たところから始まる。

キュートな絵柄と絵本を読むような語り口から一転、吐瀉を続ける人々とか、生臭い話とかそういうものが展開されていく。

吐きまくり 戻しまくり

物語の主人公となる4人は「事故で死んだ人間」「事故で行方不明となった家族を探す生きた人間」「バベル号の規律に忠実なバベル号職員」「規律に反抗的な職員」というバラバラな立場をとる。
つまり、倫理観や「正しさ」の置き場所が分からず、結果としてストーリーがどう転んでいくのか、どうなれば一番幸せなのか全く見当がつかないのだ。

記憶抽出装置で人間の記憶を抜き取りエネルギーに変換していくシステムは、人間の立場から見るとハードな光景だが、死んだ人間に対して施す措置としてはまったく正しい気もする。
規律に反するバベル号職員が、人間に接触してくるため「やはりこのシステムには問題があるのか?」と思わせておいて、その職員が私欲を覗かせてくるのでどう捉えればいいのか分からなくなる。というか普通に登場人物にクソ野郎が多い。

バベル号ガイドブックのストーリーには、そういう先の読めなさがある。
そしてこの混沌とした物語は、なんかいい感じの結末に帰結していくので安心してバベル号の行く末を見届けてほしい。


【人死にを独特の味でコーティングする】

事故で大量の死者が発生した…という重たいバックストーリーを持ち、明確に人の死を扱っている一方で、あまり悲壮感がないのがこのゲームの特色である。ワガママな客はたくさんいる一方で、自分の非業の死を嘆き、生き返りたいと喚く人物は少ない。
バベル号の船員たちも、客を楽しませようとごちそうを振る舞ったり、カーニバルを催したり、一生懸命次の命へと繋ごうとしてくれる。

たのしそう

そんな中で、現世の様子を覗く双眼鏡や、生者の夢にメッセージを送郵便箱の存在が、ふとした拍子に「これは人間の死を描く物語である」ことを思い出させる。バベル号ですれ違う客の中には子供も多く、彼らは一貫して状況を楽しんでいるが、時折嵐がすべてを奪っていった事故の痛ましさを感じさせる。

それでも、本編は空明るく進行していくのがこのゲームの奇妙さであり、良さだと思う。バベル号の旅を思いっきり楽しんで欲しい。

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ゲーム内の収集要素として「記憶ランナー」と呼ばれる、吸い出された人間の記憶がある。それを回収することで 本編の外で「亡くなった人々のサイドストーリー」を読むことができるが、こちらは 彼らにのしかかる理不尽な死を呪いたくなるような、しっとりとした内容になっている。このメリハリもいい。

記録ランナー専用の挿絵もいい

ただし、記憶ランナーはストーリーの進行と関係ない場所にある場合もあり、収集が難しい。攻略情報に頼りたいところだが、日本での攻略情報が現状少なく、筆者は全回収ができていない。

そういう意味でもこのゲームがさらに流行することで、攻略情報が充実してほしいという願いがある。


【パズルのヒントを見逃すな】

さて、このゲームのパズルにおいては「アレがあの状況になれば解決する!」という発想が重要だが、バベル号に登場するオブジェクトの数々はそもそも謎の生物だらけなので、何をどうすればいいのか推理しようがない局面が多々ある。あと目的のNPCがいつどこにいるのか把握してないよ!と思うこともあるだろう。

そこで頼りになるのが「地図」と「ヒントノート」だ。地図では時間帯ごとに、主要NPCがどこにいるのかを確認することができる。

またヒントノートを元に推理を進めていくことで、最終的に「どこで何をすれば解決できるか」を突き止めることが出来る。そもそもヒントが見つからなくて推理が出来ない…という場合、未発見のヒントをオンマウスにすることで、そのヒントがどこで入手できるのか知る事が出来る。筆者はこれに気付いたため詰みから脱却できた。活用しよう。

ちなみに終盤は難易度が上がりヒントが一部抹消されるため上記のアドバイスは全く役に立たなくなる。頑張ろう!


ここまで書いたが 伝えたいメッセージはただ一つ、バベル号での奇妙な旅路を全力で楽しんで欲しい。


以下ネタバレを含むクリア者向け感想





【参考にしたnote】

クリア後に読んだ。各人物に対する感想まで書かれておりかなり読み応えのあるnoteであり、こういういい記事があるなら自分は書かなくていいかな…と思ったがそれでも書きたかったので書いた。
詰まった時に攻略情報を求めて辿り着いたが、詰まると想定される個所が筆者と全然違った。
汽車がトーマスのゴミのせいでストップし、エネルギーが足りずランチーがデッキから横借りしたせいで、灯台の明かりが消えてジャヴェールが路頭に迷っていたのだが、散々探した結果 汽車の燃料にゴミを投げ込むトーマスはブレイスのep3のなぜか見落とした部分にいたし、ヒントを探していたつもりがその現場が答えだった。


【感想】

とにかく終盤、物語が一ヶ所に収束していく描写が(期待値が低かっただけに)とてもよく、二転三転しながらも、バベル号というシステムには切り込まず、生者が生き返り、死者は次の人生に向かうという物語の結末が非常に好みだった…のでこの記事が出来た。

規律を違反しブレイスに接触するトーマスを見た時、トーマスは人間サイドの協力者→トーマスと秘密を共有するランチーも人間に協力的なのか?と考えていたが、ランチ―は野心のために動いていただけだったし、トーマスというか鑑賞会も大概私利私欲の組織だったので、ただブレイスが不幸なだけだった。

この序盤の勘違いのせいで、どんどん過激になっていくランチーに引くことが出来たので楽しかった。ゴフマンもレイクもワガママで面倒な性格をしているが、ランチーはすごい(プレイ時の記録を見返すとランチーの話ばかりしていた)。

なのでモーセが出てきた時には、ランチーの野望が本人の知らないところで終わったことに湧いたし、一番好きなパートはランチーがボコボコにされるオークションかもしれない。

みんなレアナキスギの手持ちがなすぎだろ

本人の知らないミスで怒られるランチーは面白いし、鑑賞会を即売るスピード感がすごい。

ゲーム内でブレイスは、レイクと再会するためにあらゆる困難を突破する。二人の抱擁に感動した身としては、未だ父の死を認識してないないレイクに真実を告げる決断をするのは胸が締め付けられる思いだった。

ブレイスから逃げるレイクが最終的にたどり着くのがランチーの元なのがまたいい。

バカランチー

あと別データで2周目を始めた時に、最初にCMをやっているのがマンディ(かわいいから覚えていた)とランチーだったので笑った。冒頭からいたのに全然記憶に残ってなかった。

生者と死者に分かれた親子はブレイスとレイクだけではない。

パティオも父との最後のひと時を過ごし、バベル号を脱出する。エンディング後にゴフマンから手紙が届くのがこれまた良い。一番好きなのは、家族のそばに転生させてくれというゴフマンの希望が普通に却下されゴフマンが怒っている一幕だ。

このストレートなご不満さがいい

最近「人の死を死として受け入れる」ストーリーを好んでいる気がする。親子愛は元から好きなテーマだった。つまり内包する要素に好きなものが多く、総じて軽さと重さのバランスが優れた作品だった

ゲームが終わり、真実を告げない選択肢の方も一応回収した。真実を告げるエンディングを短縮した内容だったので、こんなもんか…と眺めていたが、暗い画面に 実績獲得のアイコンが映りこんだ時、レイクの表情と「さよならがいらない夢を見る」というテキストを見て一気に感情が揺さぶられた。

いいゲームだった。



モーセが好きなのだがネタバレ要素が強い(このゲーム唯一といってもいい名前がネタバレになるキャラクター)(「モーセの加護を…のモーセって神様じゃなかったのか!?」「モーセ=キャプテンだった!?」「お前がモーセだったのかよ!?」が同時に襲いかかる)ため名前を出しにくい。

あとマンディのことめちゃくちゃ可愛いと思っていたけど詳細アイコンがそんなに可愛くなくてビビった。

記事は以上で、月並みな感想で恐縮だが 良いゲームを遊んだ感動を記録したかった。ガイドブックをまくるようなUIもいいし、BGMもいい。記事を書くために起動し直して クリア後BGMを聴き入ってしみじみ「いいゲームだ…」と浸ってしまう。

バベル号よ永遠なれ

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