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「トランスクライブ」は最高のジャズ演奏練習!単純な「耳コピー」との違いは?

2025年からギター・レッスンのカリキュラムを一新しつつ、改めてビー・バップ・ジャズの演奏アプローチの開発をしていますが、このブログではその工程の際に抽出した概念を少しだけ公開します。

前回はCharlie Parkerの演奏から「ピッキング」の概念を形成していきました。

今回はジャズの演奏練習には欠かせない(?)であろう「トランスクライブの練習」に関しての自分の概念を整理していきつつ記事にしていこうと思います。


トランスクライブについて

ここでの「トランスクライブ」とは以下の内容全てを指します。

1. 演奏を耳コピーして譜面に起こす

2. 対象となるメロディー(ライン)を暗譜し歌えるまで覚える

3. 実際の演奏と全く同じように演奏できるようになる

演奏を耳から採譜していく工程は、トランスクライブ練習のあくまでスタート・ラインです。市販されている楽譜などには、基本的に間違いがあるのでご自身で納得いくように採譜するようにしましょう。
また、耳から演奏を採譜する工程で何度も演奏を聴くことになるので、暗譜(記憶)する練習としてもとても良い練習になります。

また対象となる演奏のほかに、背景となるコード進行の採譜を一緒にするようにしましょう。対象とする録音のバージョンでは、リアルブックなどに掲載されているジャズ・スタンダードとはコード進行やクオリティーが異なることが往々にしてあります。

採譜する際のコツ

採譜の際は、ニュアンスまでしっかりと聞き込んで採譜するようにしましょう。
ただ、記譜法には限界があるので個人的には演奏練習の際に作成した楽譜に手書きで注意書きや記号などを書き添えています

ニュアンスを真似ることで、ジャズ独特のフィーリングを掴むことがはじめて可能となります。

ニュアンスの形成こそ重要な要素

ニュアンスは理論的や数値的にといった概念ではなく、非常に感覚的な概念となるので本物をモノマネするのが一番効果的でしょう。

ちょうど英語などの語学学習における「シャドーイング」のような感覚でしょう。
文法や単語は理解しているけど、スピーキングやリスニングではその内容として捉えることができなかったり、伝わらなかったりすることがあった経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
「サウンド」として理解していないために、その理論は意味をなさなくなってしまうのです。これはジャズをはじめとする音楽でも全く同じだと個人的には考えています。

「フレーズのアイデアや構築方法は理解しているけど、なーんだかジャズのフィーリングが出ないんだよねー」
といった方は、興味のあるアイデアが使われている演奏を耳でキャッチして、ご自身で採譜して真似をしてみてはいかがでしょうか?

技術の習得に効率化を求めないようにして、学習の工程を楽しんでみましょう!

演奏アイデアを拝借する

演奏のトランスクライブを通じて、お気に入りのラインを分析してご自身の演奏に昇華させるようにもしてみましょう。
個人的に、演奏のアイデアを取り入れる際は1拍や2拍程度のラインを参考にすることがほとんどです。

例えば…
「あえて2拍目から始まるフレーズ」
「1拍目に掛留を起こして、前のコードの内容を温存しているアイデア」
などと言語化する感じですかねぇ。

フレーズの丸暗記をしない

フレーズの丸暗記は個人的に推奨していません。
そもそもアドリブの演奏(インプロビゼイション)とは、暗記した内容から紡いだ演奏ラインを演奏する行為ではないためです。
何度も何度も演奏練習を通じて、頭の中にそのラインが聞こえるようになるとが大切です。
単にフィンガリングで暗記する程度では演奏のアレンジもできませんし、キーチェンジやコード進行によって演奏できたり、できなかったりしてしまうと思います。

「暗記をしたフレーズを入れるぞ!」と考えている段階ではまだ練習が足りないと考えてください。

シングルラインは管楽器から

私のメイン楽器はギターですが、シングル・ラインの演奏は、サクソフォニストやトランペッターの演奏を参考にすることがほとんどです。
「管楽器のニュアンスをいかにしてギターで表現するか?」といった思考が必ず発生するので、ギターといった楽器をさらに深く理解することができると思います。

トーンの工夫と考察

サックスの音色に近づけるためにあえてギターのトーンを歪ませたりもします
とはいってもハード・ロックのようなサステインがある「ギュンギュン」の歪みではありません(笑)

ハーモニー開発は鍵盤楽器を軸に

和声は基本的にピアニストの演奏を参考にします。ギターでピアニストのヴォイシングを完璧に再現するのは音数や音程の関係からほぼ不可能です
しかし、これも管楽器のトランスクライブ練習と同様に…

「このハーモニーのアイデアをギターで再現するにはどうすれば良いだろう?」

といった工夫を強いられるので大変勉強になるでしょう。

確立された演奏方法を学習する際はメイン楽器のトランスクライブ

ある程度確立された演奏方法を参考にしたい場合はメイン楽器のトランスクライブをするようにしましょう。

ジャズ・ギターでは?

シングル・ラインのメロディーに対して、アンサーを加えるような「スモール・コード奏法」であったり、スウィング期のメイン奏法である「シェル・コードによるストラミング奏法」などが対象となるでしょう。

かつてリットー・ミュージックより「Drop2」ヴォイシングに内容を固定して、さまざまな演出方法に昇華させるコード教則本を執筆しましたが、多少は参考になるかと思いますのでまだチェックされていない方は是非!

ギター・レッスンでは実際のジャズ・ミュージシャンの演奏ラインを真似していただき、さらにそれを分析し「抽出した概念」を軸に生徒様にフレーズを作ってもらったりもしています

理論的な理解や学習中のマテリアルと照らし合わせて理解しやすい内容をその都度ご提供できるのはマンツーマン・レッスンの醍醐味です。

現在は無料体験レッスンも実施していますので、練習方法にお悩みのある方は是非以下のリンクからお問い合わせいただければと思います!

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