「今はむかし」 四国88カ所編final
暑いまま日々は過ぎ淡々と御寺を巡る
初めての一人旅、母の介護の苛立ち、書家として思う自分の描いた想像との大きなズレ、自分を取り巻く生活の虚しさ、ハンドルを握りながら思い御寺で問う
山奥の険しく長い階段の先の御寺も
暑さも煩いほどの蝉の音も苦にならずただひたすらに
回答なき答えを探し88番を目指す
お化けが出そうな宿、寂しい宿、古い宿に泊まりながら
電話も、LINEもほぼ無音の夜、寂しい夜はレモンサワーを飲んでさっさと寝た
朝も昼も夜も味気なく食事を済ませたからか美味しさは感じない
時々、早く宿に着いた日は街にも出て美味しそうな店も探して入ってみるが
1人で食べて1人で飲んで会話相手もいない日々の見知らぬ街では
特に旨いとは感じない
時々何番かの御寺で見かけたお遍路の方と違う御寺で再会することも幾度かありそれだけはなんだか嬉しくほっとした気持ちになれた
一日同乗した喜寿の先輩はどうしているんだろうとふと思ったり
見知らぬ綺麗にお化粧をした着飾ったお婆さんにある御寺の階段で
「あなたの手を貸しなさい、私東京から来たのよお墓参りに、あなたも一緒に来なさい」なんてことも言われた、今は面白い思い出
徳島から9日目ようやく87番88番の最後の御寺
自分が見た番組でお遍路を決意したTVの番組を見たことを伝えると話が弾んだ
特に88番のお土産屋さんの店主の息子さんとお母さんはTVのまま優しいお2人でお茶をいただきながら楽しそうに松山ケンイチさんの話をしてくれた
帰り際に「帰ってしばらくしたらまたお遍路をしたくなりますよ、
待ってますね」と言われ僕は手を振った。
88番で“結願証“をいただき1人で苦戦して記念写真を撮ろうとしているとライダーが「撮りましょ」と言ってくれた時は嬉しかったなー
ありがとうあの時のライダー
これで終わり明日からは岡山だと思うと一気に解放された気持ちになったが
答えの欠片も得られないまま高松の夜を迎えた。
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