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綺譚 毛むくじゃらのユニコーンが語る「極意」とは?
ユニコーンと言っても、多数の人(存在)がいる。
個性溢れるユニコーンたち。
毛深いユニコーンもいる。
そんな不思議なことを真顔で語るのは、「ユニコーンと縁が深い」という女性である。
50代前半の彼女は最近、夜な夜な見る夢の中で、ユニコーンの一族が住む城を訪れて、特別な訓練を受けているのだという。
どういうことか。
■
彼女の一回り年上の夫は、十数年前に若くして病気で亡くなった。
喪失感に浸る暇もなく、働きながら育てた子どもは、工芸分野の専門学校を卒業したばかりだという。
子が独立してホッとした折に思い出したのが、ユニコーンのことだった。
幼少期に、夢の中、あるいは白昼夢のような状態の時に、よく見た存在であった。
角を持ったその馬は、夢の中、あるいは白昼ぼうっとしている時に、たまに語りかけてきた。
少年向け小説やマンガに触れるようになって、「あれはユニコーンと言うのだ」と知ったのだった。
■
彼女は、日本が高度経済成長期を享受している頃に生まれた。
鎌倉時代からの家系図があるという由緒ある血筋だが、一族は太平洋戦争後の混乱で、資産をだいぶ失ったようだった。
彼女の幼い頃の印象的な風景と言えば、名家の名残を示す立派な家から働きに出る父の背中。同じくらいの良家から嫁いできたという母も、家事の合間を見ては働きに出ていた。
そんな事情から、彼女の親代わりは、もっぱら父方の祖父と祖母だった。
祖父母は確かに彼女を熱心に育ててくれたが、そうは言っても年が離れた相手である。
次第に彼女は、ふんだんに買い与えてくれた童話や図鑑に、熱心に見入るようになった。
文字を読むのが好きな彼女は、勉強もなかなか出来た。地元では評判の良い高校に順調に進学した。
同級生たちが部活、遊び、はたまた恋にと若者生活に勤しむなか、彼女が夢中になったのは、小説やマンガの世界だった。
すでに少女マンガ雑誌は主要メディアの一つとして、女子学生たちの間で強く支持されていた。
理由は分からないが、どうしても周囲になじめなかったのだ。
■
ある日、彼女は自宅でマンガ雑誌を開いていて驚いた。
小さい頃、夢の中によく出てきていた獣が、ほぼそのままの姿で誌面に登場していたのだ。
夢の中の獣のほうは、もうすこし毛深いが。
獣の種類の名は、どうやらユニコーンと言うらしい。
ユニコーン。
その言葉を視界に入ってきたところ、急速に彼女の脳内には、夢の空間が広がった。
目の前にあるはずの自宅の部屋、あるいは手に取っていたマンガ冊子の様子や手の感覚は、一気に薄れていった。
睡眠中の夢で見ていた空間そのものが、白昼堂々と目の前の繰り広げられていった。
■
空には太陽、地には草原。
それ自体は地球そのものだが、遠くにとんでもない巨木が視界のあちこちに見えている。
おそらく、新宿の高層ビルの高さと大して変わりない。
加えて、それ以上に高いであろう巨大な山々が、景色の向こう側で崖のようにそびえ立っている。
山のてっぺんの縁からは、巨大な瀧が大量の水をこぼしている。
いくつもの虹が、その付近を彩っていた。
まるで現実味のない風景だが、彼女の意識内では、鮮やかに見えている、まさに“リアル”な光景であった。
ふと地上を見やると、水に浸されたような瑞々しい草原の奥から、少しずんぐりした馬が小走りでこちらにやってくる。
額からは、大きな角が伸びている
馬にしては毛深い気がするが、その真っ白な毛並みは、美しくなびいている。
近寄ってくるたびに、不思議な安心感が漂ってくる。
決して怖い存在ではないようだ。
いやむしろ、前から知っている。
「彼」も、私のことを知っている。
近寄ると確かに美しい馬だ。
彼に名前を何度か訪ねて、その名前を(夢の中だが)耳にした。
しかし、日本語ではうまく表現できない。何度聞き直しても、覚えられない。
ただ、印象としては「なかなか可愛い名前」というのが彼女の感想だ。
結局、何十回と聞いて一番近い言葉を見つけて、それで呼ぶことをこのユニコーンに納得させた。
「ムニュス」という呼び名である。
たびたび見る夢の中で、彼女はムニュスと共に、この壮大な光景の中を旅していた。
時にはこの聖獣の背に乗り、その足で旅をした。
■
あるとき、ムニュスが彼女を背に乗せながら、こんなことをつぶやいた。
「悪しき者たちのやり方が、より巧みになっている」
「土が痩せてきているだろ。草の育ち方がいまいちなんだ。
この土地の具合が、それを示している」
夢の世界における土と草の状態が、なぜ、どのように「悪しき者のやり方」と関係しているのか、彼女にはそこはうまく理解できなかった。
だが少なくとも、ムニュスが相当懸念していることだけは理解できた。
重ねてこのユニコーンは、少し怖く感じることを言った。
「君たちの世界にも同じことが起きている」
どういうことなの、と彼女は素直に聞いた。
少し考えた雰囲気を見せつつ、ムニュスは説明を続けた。
「僕たちが今いる世界、つまり僕ら一族の世界と、君たち人間が住んでいる世界は連動しているんだ。
この宇宙において、まったく関係のないものなんて、何一つない」
悪しき者たちというのは、ここにもいるの?
すごく平和そうで、奇麗な場所なのに。
「ああ。
君たちの世界と同じように、悪しき者たちはここにも存在する。
そして僕ら一族は、戦う方法を常に学んで、鍛えている。
悪しき者たちを追いやるための方法をね」
ずっしりと重い話題に反するように、ユニコーンの足取りは軽い。
ずんずん草原を進んだ先には森がある。
森の向こう側に小高い山があり、その山の頂上にはずいぶん立派な家が建っていた。家と言うより、ほとんど城のような仰々しい建物にも見える。
突然の重い話題に、少女はなんと応えて良いか分からなかった。
少女が困惑している様子を察知したのか、ムニュスは言った。
「悪しき者たちといっても、実は普通の身なりで、普通に暮らしていることが多い。
そして意外に、表面上まったく悪意はない、普通の者たちなんだ。
いきなり暴力を振るうこともない。
しかしその代わり、君の【ほんとうの自分】を失わせるように、非常にわかりにくいやり方で、巧妙に、君にいろいろな攻撃を仕掛けてくる。
そして君から、魂のパワーを奪うんだ」
魂のパワーを奪うってどういうことだろうか?
例えばどんなふうに?
「『君は間違っている。だから言うことを聞け』
単純に言えば、こんな具合だよ。
本当に君は『間違っている』のだろうか?
相手が言う『間違っている』というその内容をよく吟味すべきだ。
君に罪悪感を抱かせて、要求をうまく君にのませるための、脅しや言い訳であることが多いからだよ。
もし、うまく言いくるめられて、罪悪感を抱かされて、相手の言うことを仕方が無いとばかりに受け入れていると、だんだんと、君の魂のパワーが奪われていく」
「魂のパワーが奪われても、いきなり死ぬことはない。
けれども、まるで生気をなくした生き方になり、そのまんまで人生が終わってしまう。
君は、相手の言う『間違っている』と主張する内容を疑ってしかるべきだ。
『君は間違っている』という前提を受け入れさせて、行動を誘導するのは、悪い連中の常套手段なんだ。
便利だろ? 強制的に脅して動かすのではなく、君を自発的に行動させるんだ。罪悪感を抱かせて、煽ってね」
ふと、家や学校のことを思い浮かべた。
親や学校の先生は、お前が間違っているからいうことを聞きなさい、と、よく言うよ。
クラスのみんなは、うつむいた顔で学校に通っている。
魂のパワーが奪われているからかな。
「君が、周囲になじめていなくて、どことなく『居場所はここにはない』という感覚を得ているのは、察しているよ」
少しびっくりした。あなたは私の日常を知っているの?
「そもそも悪しき者たちも、魂のパワーが枯渇している。
君たちの世界で語られる架空の魔物の、ゾンビみたいなもんだよ。
悪しき者たちも、かつてそうやって他者から魂のパワーを奪われたんだ。
魂のパワーがないから、他者からパワーを欲しがる。
コントロールしやすい子どもや、素直で純粋な者に攻撃を仕掛けて、魂のパワーを奪う。
そうやって、世界はどんどん、悪しき者たちによる魂のパワーの奪い合いでまみれていってしまっている」
「君を操作したくて強制してくる人間の言うことを、真正面から聞いてはいけない。
相手の要望は聞いてもいい。間違っているというその主張を、一つの見解として耳を傾けても良い。
だけど、相手の要望や見解以上のものではない」
ということは、少なくとも彼女がいる世界は、ほんとうに戦いでまみれている。
でも、避けられなかったらどうする?
家出するのも現実的じゃないし、学校をいきなり退学するわけにもいかない。
そう返すと、彼はこう答えた。
「当面、悪い連中のテリトリーの中で過ごすしかないのであれば、こういうことをするといい。
僕らの一族に伝えられていることなんだ。極意だよ」
なかなかすごい前置きを言った後に、このユニコーンは続けた。
「【仮想の自分】を置くんだ。
自分の目の前に、【仮想の自分】が代わりに立っている、と想像するんだ。
その【仮想の自分】に、相手が望むような人物を演じさせる。
でも、君自身である【ほんとうの自分】は、何一つ変えない。
そもそも、変える必要などないからね。
だから【仮想の自分】を使って、外の人や、外の世界との付き合い方を決めればいい」
仮想の自分??
彼女は、ちょっと面食らった。
そんなことができるのだろうか。
そもそも、わざわざそんなものを用意する必要があるのだろうか?
「『偉い人』に従わなくてはいけないことは、これから数多く出てくるだろう。
だけど、【ほんとうの自分】を消してはならない。
そして、【ほんとうの自分】の気持ちを、絶対に譲ってはならない。
そのための【仮想の自分】なんだ。
【仮想の自分】を立てて、【仮想の自分】に、相手に従っている自分を演じさせておくんだ。
【ほんとうの自分】は、冷静に相手の言うことを聞いていればいい。
そうしてやり過ごしながら、何とか生き延びるんだ。
状況を覆せるタイミングを見計らって、その時に【ほんとうの自分】を出す算段を考えておくんだ。
【ほんとうの自分】さえ失っていなければ、魂のパワーは温存できる。
魂のパワーさえあれば、本格的に悪い連中と戦うときに、大きな助けとなるだろう。」
「多くの場合、【ほんとうの自分】でさえも譲ってしまうことが多いんだ。
責められて、脅されて、恐怖に駆られて、要求者の言うことをまるごと受けとめてしまう。
まるごと受けとめると、【ほんとうの自分】さえもかき消されてしまう。
そうなると、形勢逆転は難しくなる。
自分の心が、相手に侵略されて、植民地のように支配されてね……」
貫けるだろうか。
「自分の感覚に耳を研ぎ澄ませるんだ。
繰り返すけど、【ほんとうの自分】を死守するべく、【仮想の自分】を上手く立てること。
かならず、後で形勢逆転のチャンスがやってくる。
そう信じるんだよ」
自分の感覚に耳を澄ませて、【仮想の自分】を使いこなして、【ほんとうの自分】を守ること――。
身体が振動してきた。胸の辺りが熱くなってきた。
わたしは、これを知りたかったように思う――。
■
気がつくと、目の前にはマンガ雑誌があった。自宅の部屋の雰囲気が五感を通して感じられるようになり、急速に肉体に意識が及ぶ。
ムニュスの背に乗り歩いていた、あの壮大な光景はまったく消え去っていた。
彼女はまさに白昼夢を経験していた。
時計を見ると、どうやらほんの一瞬の出来事だったらしい。
ただし、その白昼夢における記憶だけは確かだった。
あの毛むくじゃらのユニコーンが教えてくれた、【仮想の自分】のことだ。
■
結局、その後何年、いや何十年もの時が過ぎた。
その間、【仮想の自分】のことは記憶の彼方に追いやってしまっていた。
しかし、何十年もの時が経過してから、彼女はユニコーンの夢と同時に、突然、思い出したのだ。
ユニコーンが言っていた【仮想の自分】のことを。
彼女は約半世紀の人生を過ごす中で、すっかり【ほんとうの自分】を失っていることにも気がついた。
女はこうすべき。
女はこう生きるべき。
「すべき」にまみれて生きていた。
亡き夫を愛していないわけではなかった。
子どもももちろん大事である。
だが、彼女は妻としての人生、親としての人生を生きる中で、自分のほとんどすべてを明け渡し、世の中から「こうすべき」と押しつけられた自分で生きてきたのだった。
急に焦燥感、不安、そして涙があふれてきた。
あのとき、あの賢そうな一角の馬が言っていたことが、ようやく分かった気がする――。
■
すると彼女の意識は急速に、少女時代の「あの日」のように、別の世界へと移っていった。
目の前にある日常生活の空間が遠のき、彼女はまるで現実味のない、壮大な自然の風景に身を置いていた。
遠くから、あのユニコーンが早走りで駆け寄ってきた。
少女時代に見た光景と、まったく変わりない。
「いよいよ、君の本来の仕事を始めるときがやってきた」
本来の仕事?
「君は十分に【ほんとうの自分】ではない状態を生きた。
ここから【ほんとうの自分】を取り戻すんだ。
その歩みを通じて、より多くの人に、どうすれば【ほんとうの自分】を取り戻せるかを伝えることができる」
できるだろうか。
「できるよ」
じつにあっさりとムニュスは返しつつ、4つ足をたたんでひざまづき、彼女に背中に乗るよう促した。
彼は結構、毛むくじゃらだったことを思い出した。
毛は艶めいていて、この世界の日の光を反射していた。
「【ほんとうの自分】の声を聞く者は、世界の声を聞ける。
世界の声は、本当に美しいんだ。
訓練は、あの城で行うよ。
僕らユニコーンの一族の、いわば道場さ」
立ち上がったムニュスは、彼女が若かりし頃に見た、夢の最後の場面へと向かった。
ここからがわたしの人生の本番、ということなのだろうか。
最近、世間では「100年人生」などと言うらしいけれど。
数十年越しに、あの夢の続きが始まった。
(了)
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これを受けた人は、まさに形而上学が語る最大の教え、「I am God.」の一片――素晴らしき自らの潜在的な可能性が拓かれます。徐々に心の平和、心の豊かさ、さらには自らの人生を切り開いていくことができるようになるでしょう。
私がDNAアクティベーションを最初に受けたのは2005年9月のことでした。そしてDNAアクティベーションの施術法を最初に学んだのは、2009年でした。初めて学んでから10年以上もの月日が経過していますが、このヒーリングの威力については発見の連続です。
受けた人が備える可能性を最大限に開く、古来の叡智・DNAアクティベーション。このヒーリングの恩恵を、ぜひ、多くの人に受けていただきたいと思います。