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【Vol.15】幹細胞培養上清液——骨髄由来の細胞の採取方法や培養について

*幹細胞培養上清液・エクソソームは医薬品ではありません。
本記事は、幹細胞培養上清液やエクソソーム・サイトカイン・成長因子のことを正しくご理解いただくために記載しています。

幹細胞培養上清液——骨髄由来の細胞の採取方法や培養について

骨髄は、血液細胞や免疫細胞の元となる造血幹細胞や間葉系幹細胞(MSC: Mesenchymal Stem Cells)を豊富に含んでおり、これらの細胞は再生医療や様々な治療に重要な役割を果たします。
ここでは、骨髄からの幹細胞の採取方法と培養、そして幹細胞培養上清液の生成に至るまでの具体的なプロセスを詳しく解説します。

1. 骨髄からの幹細胞の採取方法


1.1 骨髄穿刺(Bone Marrow Aspiration)


骨髄由来の幹細胞を採取する最も一般的な方法は、骨髄穿刺です。この方法は、骨の中にある骨髄から直接幹細胞を含む液体を抽出する手法です。
骨髄は主に大腿骨や骨盤内に存在し、血液細胞を産生する主要な場所となっています。

採取手順: 骨髄穿刺は通常、局所麻酔または全身麻酔下で行われます。骨盤の後側部(腸骨稜)から専用の針を使って骨髄液を吸引します。
この際に採取される骨髄液は約20~100ml程度です。
採取時には、患者への侵襲を最小限にするため、処置は慎重に行われます。

■利点: 骨髄からは、造血幹細胞と間葉系幹細胞が高濃度で得られるため、再生医療に非常に適した細胞供給源です。
また、骨髄からは多様な種類の細胞を同時に得られるため、複合的な治療に適応できます。

1.2 幹細胞の分離


採取された骨髄液には、造血幹細胞、間葉系幹細胞、その他の血球系細胞が含まれています。
これらの幹細胞を分離し、培養に供するためには、遠心分離や密度勾配分離といった技術が用いられます。

■遠心分離: 骨髄液は、遠心分離機を用いて幹細胞と他の成分を分離します。これにより、間葉系幹細胞や造血幹細胞を効果的に抽出し、治療や研究に使用する準備を整えます。

密度勾配分離: また、密度勾配を利用して細胞をさらに分離し、特定の幹細胞のみを高純度で抽出することが可能です。
この技術により、骨髄液中の不要な細胞や成分を除去し、目的の幹細胞のみを培養に使用します。


2. 骨髄幹細胞の培養方法

骨髄から得られた幹細胞は、通常、そのまま治療に使用されることもありますが、培養によって幹細胞の数を増やすことが多いです。
特に間葉系幹細胞(MSC)は、再生医療や組織修復において重要な役割を果たしており、培養によってその数を増やすことが求められます。


2.1 培養環境の設定


骨髄幹細胞の培養は、特定の条件下で行われ、細胞の成長と分化を促進します。

培養基: 骨髄由来の間葉系幹細胞を培養する際には、特定の栄養素や成長因子が含まれた培養基を使用します。
この培養基には、ウシ胎児血清(FBS)や無血清培養基が使用され、細胞の増殖と健康を維持します。
また、近年では無血清培養基の使用が増え、より安全かつ効率的な培養が可能となっています。

■培養条件: 細胞は通常37°C、5%の二酸化炭素濃度の下で培養されます。これらの条件は、体内の環境に近く、幹細胞の増殖や維持に最適です。また、培養中は酸素濃度も調整され、幹細胞の増殖と維持に寄与します。

2.2 幹細胞の増殖


骨髄由来の間葉系幹細胞は、その増殖能力が高く、適切な条件下で数週間にわたって培養することで、数百万~数億個の細胞を得ることが可能です。

パッセージ(Passaging): 培養中、細胞が一定の密度に達すると、パッセージと呼ばれるプロセスが行われます。これは、細胞を分散させ、新しい培養プレートに移すことで、細胞の増殖がさらに続けられるようにする作業です。この処理を数回繰り返すことで、大量の幹細胞を得ることができます。

3. 幹細胞培養上清液の生成

骨髄由来の幹細胞を培養している間、これらの細胞が分泌する成分が幹細胞培養上清液として収集されます。この幹細胞培養上清液には、成長因子やサイトカイン、エクソソームなどが含まれており、これらが再生医療における主な治療成分として働きます。

成長因子: 骨髄由来の幹細胞培養上清液には、基本線維芽細胞成長因子(bFGF)や血管内皮細胞成長因子(VEGF)・トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)などが含まれています。
これらの成長因子は、組織修復や血管新生、細胞増殖を促進する効果があり、再生医療や傷の治癒において重要な役割を果たします。

サイトカイン: 骨髄幹細胞培養上清液には、炎症を抑制するインターロイキン-10(IL-10)や免疫応答を調整するインターロイキン-6(IL-6)などのサイトカインが豊富に含まれています。
これにより、免疫系の調整や炎症の抑制に効果があり、自己免疫疾患や炎症性疾患の治療が期待されています。

エクソソーム: 骨髄由来のエクソソームは、細胞間のシグナル伝達をサポートし、組織の修復や再生を促進する役割を果たします。
これにより、骨や軟骨、皮膚、神経など多様な組織の修復において重要な効果をもたらします。

4. 骨髄幹細胞培養上清液の応用

骨髄由来の幹細胞培養上清液は、特に整形外科や血液疾患、免疫系の疾患において高い効果が期待されています。
これらの疾患に対して、幹細胞培養上清液がどのように応用されているのかを以下に示します。

骨や軟骨の修復: 骨髄由来の間葉系幹細胞は、骨や軟骨への分化能力が高いため、骨粗鬆症や関節炎、軟骨損傷の治療に有用です。
幹細胞培養上清液は、骨や軟骨の修復を促進し、整形外科の分野で注目されています。

免疫調整作用: 骨髄由来の幹細胞培養上清液には、免疫調整作用があるため、自己免疫疾患や移植後の拒絶反応の抑制に利用されます。
特に、骨髄由来の幹細胞培養上清液は、炎症を抑える作用が強く、免疫系の異常を抑制する効果が期待されています。

血液疾患の治療: 骨髄から得られる造血幹細胞は、血液疾患の治療において重要な役割を果たしており、骨髄由来の幹細胞培養上清液も造血機能の改善に寄与する可能性があります。
特に、白血病や再生不良性貧血の治療において、その効果が期待されています。

幹細胞培養上清液の骨髄由来に関して細胞の採取方法や培養についての内容をまとめました。
次の記事では、臍帯(ホウォートンゼリー )由来の幹細胞培養上清液の培養に関して細胞の採取方法や培養について記載します。


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