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【Vol.16】幹細胞培養上清液——歯髄由来の細胞の採取方法や培養について

*幹細胞培養上清液・エクソソームは医薬品ではありません。
本記事は、幹細胞培養上清液やエクソソーム・サイトカイン・成長因子のことを正しくご理解いただくために記載しています。

幹細胞培養上清液——歯髄由来の細胞の採取方法や培養について

歯髄とは、歯の内部に存在する柔らかい結合組織であり、乳歯や親知らず(第三大臼歯)から採取される歯髄幹細胞(DPSC: Dental Pulp Stem Cells)は、再生医療において非常に有用な細胞源とされています。
歯髄幹細胞は、神経・骨・軟骨・歯の組織に分化する能力を持っており、その再生能力が注目されています。
ここでは、歯髄からの細胞の採取方法、培養プロセス、そして幹細胞培養上清液の生成について詳しく説明します。

*市場に流通する「歯髄由来」の幹細胞培養上清液は「乳歯髄」幹細胞培養上清液がほとんどです。

隆聖会ラボでは10代後半から20代前半の健康な日本人の親知らずの歯髄から幹細胞培養上清液を培養しています。

理由は、本文中に記載します。

1. 歯髄からの幹細胞の採取方法

1.1 歯の選定


歯髄幹細胞を得るためには、乳歯や親知らずの抜歯が必要です。
国内で流通する「歯髄由来」の幹細胞培養上清液は〝自然に脱落する乳歯〟や、成人の親知らず(第三大臼歯——歯科でいうところの8番)です。
これらは倫理的にも問題が少ないため、幹細胞の供給源として適しています。

■乳歯の採取: 乳歯は幼少期に自然に脱落するため、この脱落した乳歯を用いて歯髄幹細胞を採取します。
自然に抜けた歯を新鮮な状態で、歯髄から幹細胞を分離するとされています。
*市場に流通する「歯髄由来」の幹細胞培養上清液は「乳歯髄」幹細胞培養上清液がほとんどです。

隆聖会ラボでは、〝自然に脱落する乳歯〟の歯髄よりも10代後半から20代前半の成長期にある親知らず(第三大臼歯——歯科でいうところの8番)の歯髄の方が幹細胞培養上清液の培養には有効だという考えです。

親知らず(第三大臼歯——8番)の採取: 成長した10代後半から20代前半の親知らず(第三大臼歯——8番)の抜歯手術が行われる際に、歯髄幹細胞を採取することができます。
この方法では、抜歯した歯を直ちに処理することで、歯髄組織から有効な幹細胞を取り出します。

*Dr. 歯髄幹細胞上清液 は、院内 CPC(ラボ )で培養しています。
歯髄を取得するために抜いた歯を同じ院内のラボに移動し、抜歯からすぐに歯髄の中の細胞を取り出し、培養しています。
まさに「取り立て」処理で、幹細細胞の劣化を最低限に抑えています。

1.2 歯髄の抽出


歯が採取された後、速やかに歯髄幹細胞を抽出するために、以下の手順で歯髄組織が処理されます。

歯の切断: まず、採取された歯の表面を消毒し、滅菌処理を行った上で、歯を横方向に切断して内部の歯髄組織にアクセスします。
歯髄は歯の中にある軟組織で、ここから幹細胞を抽出することが可能です。

歯髄の分離: 歯髄組織は、酵素処理や物理的な方法を用いて歯の硬い部分から分離されます。
酵素としては、通常コラゲナーゼやトリプシンが使用され、歯髄組織を効果的に分解します。
こうして分離された歯髄組織から、幹細胞を取り出すことができます。

 2. 歯髄幹細胞の培養方法

歯髄から分離された幹細胞は、再生医療や研究のために増殖されます。
歯髄幹細胞(DPSC)は特に神経や骨の再生に効果が高いため、培養を通じて細胞数を増やし、治療に利用します。

2.1 培養環境の設定


歯髄幹細胞の培養においては、最適な環境を整えることが細胞の増殖と維持において重要です。

培養条件: 歯髄幹細胞は37°C・5%二酸化炭素の条件で培養されます。
また、酸素濃度が低い環境(通常は1〜5%酸素)での培養が、幹細胞の維持に効果的であり、この条件下で細胞は健康な状態を保ちながら増殖します。


2.2 幹細胞の増殖


歯髄幹細胞はその増殖能力が高く、適切な条件下で培養することで、細胞数を短期間で増やすことができます。

■継代<パッセージ(Passaging)>: 培養が進むと、細胞は培養容器で密集し、成長が阻害されるため、パッセージ処理が必要です。
パッセージは、細胞を分散して新しい培養皿に移し、増殖スペースを確保することで細胞数をさらに増やすプロセスです。
これにより、数百万〜数億個の細胞を得ることが可能です。
細かくお伝えすると、幹細胞を1つの培養容器で増殖させることには限界があります。
細胞は同じ環境で増え続けると、その密度が高くなり細胞増殖が進むとある一定量で細胞は増えるのをやめてしまいます。
その状態では細胞は老化してしまったり、壊死してしまったりする可能性が高くなってしまうのです。
この限界を迎える前に、一部の細胞を新しい培地や環境に移すことを「継代(けいだい)」と呼びます

3. 幹細胞培養上清液の生成

歯髄幹細胞を培養する過程で、これらの細胞が分泌する生理活性物質を幹細胞培養上清液として収集します。
歯髄幹細胞由来の幹細胞培養上清液には、成長因子やサイトカイン、エクソソームなどが含まれており、神経再生や組織修復に寄与します。

■成長因子: 歯髄幹細胞培養上清液には、神経成長因子(NGF)や基本線維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)が含まれています。
これにより、神経や血管の修復が促進され、脳卒中や脊髄損傷などの治療において有望です。

■サイトカイン: 幹細胞培養上清液に含まれるサイトカインは、免疫系の調整に役立ちます。
特に、歯髄由来の幹細胞培養上清液には抗炎症作用を持つインターロイキン-10(IL-10)や、免疫調整作用を持つインターロイキン-6(IL-6)が豊富に含まれており、自己免疫疾患や炎症性疾患の治療に有効です。

■エクソソーム: 歯髄幹細胞由来のエクソソームは、細胞間のシグナル伝達をサポートし、組織修復を促進する役割を果たします。
特に神経再生に関する研究で注目されており、神経損傷や神経変性疾患の治療に利用されています。

4. 歯髄幹細胞培養上清液の応用

歯髄幹細胞由来の幹細胞培養上清液は、主に神経系や骨の再生に関する治療において大きな効果が期待されています。以下に、その応用分野を示します。

■神経再生: 歯髄幹細胞培養上清液は、神経成長因子を含むため、神経損傷の治療や脊髄損傷の回復、さらにはアルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の治療にも応用されています。神経細胞の再生を促すため、これらの疾患に対する再生医療の可能性が高まっています。

■骨再生: 歯髄幹細胞は、骨や歯の再生にも効果を発揮します。幹細胞培養上清液に含まれる成長因子やエクソソームは、骨形成を促進し、骨折治療や骨粗鬆症の改善に利用されています。
また、歯科治療においても歯髄再生や歯の修復に用いられています。

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