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【Vol.7】幹細胞培養上清液の主要成分ーエクソソームとは!? -2-

*幹細胞培養上清液・エクソソームは医薬品ではありません。
本記事は、幹細胞培養上清液やエクソソームのことを正しくご理解いただくために記載しています。

エクソソームの発見と歴史

「エクソソーム」という言葉が美容広告などで見られますが、エクソソームは脂質二重膜構造を有する小胞のことを指しています。

エクソソームは、1983年、Philip D. StahlらとRose M. Johnstonらによって、哺乳類の未成熟な赤血球(網赤血球)の中から発見され、1987年にJohnstoneらによって「エクソソーム」と名付けられました。  

ただし、エクソソームのルーツはさらに古く、1946年に初めて細胞外小胞(EVs)が確認されていました。

当時は、細胞が不要な物質を排出するための単なる機構と見なされていましたが、2007年にスウェーデンのGöteborg大学のLötvallらによる研究により、エクソソームがmRNAやmiRNAを他の細胞に運ぶことで情報伝達を行う役割があると分かり、エクソソームは細胞間のコミュニケーションを担う重要な存在として注目を集めました。

細胞外小胞(EVs)とは?

細胞外小胞(EVs)とは、ほぼすべての生細胞から分泌される脂質二重膜で構成された小胞の総称です。EVsには、主に以下の3種類が含まれます。

1. エクソソーム  
   直径50-150 nm(ナノメートル:10億分の1メートル)で、細胞の後期エンドソーム膜の内向きの出芽によって形成され、細胞膜と融合して細胞外に分泌されます。

2. マイクロベシクル(MVs)  
   直径100~1,000nmと幅広いサイズを持ち、細胞膜が外側に出芽して形成されます。

3. アポトーシス小体  
   細胞がアポトーシス(計画的細胞死)を起こす際に生成され、直径50~5,000nmと非常に多岐にわたる大きさを持ちます。

エクソソームとマイクロベシクルの共通点と違い

エクソソームとマイクロベシクルは、物理的および生化学的な特性が非常に似ており、両者ともに細胞間のコミュニケーションや免疫応答、遺伝子転写の調節など、多くの生物学的機能に関与しています。

しかし、これらの小胞の形成プロセスには明確な違いがあります。エクソソームはエンドソーム膜からの出芽によって形成されるのに対し、マイクロベシクルは細胞膜から直接出芽して生成されます。


細胞間コミュニケーションとDDS(ドラッグデリバリーシステム)としての可能性


EVsは、mRNA、タンパク質、脂質などの生体分子を他の細胞に輸送する媒体として機能し、細胞間のコミュニケーションを活性化します。

特にエクソソームは、病気の診断や治療における新しい手法として期待されており、疾病の検出や予後の予測、さらには治療標的としての利用が注目されています。

また、エクソソームは生体内に存在する天然のドラッグデリバリーシステム(DDS)としても期待されており、創薬技術としての応用も進められています。

エクソソームは、異なる生物種間でも情報伝達を行っている可能性があり、その研究は医療や健康分野における幅広い応用が期待されています。

まとめ

エクソソームと細胞外小胞(EVs)は、細胞間の情報伝達において重要な役割を担っており、その研究は今後ますます進展すると期待されています。特にエクソソームは、ドラッグデリバリーの媒体やバイオマーカーとして、疾患の治療や診断に新しい可能性をもたらす技術として注目されています。エクソソームの多様な可能性により、未来の医療技術に大きな影響を与えることが予測されています。


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