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邪念走 第21回~

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40代ライター 吉見マサノヴがランニング中に湧き出てくる邪念と煩悩について語るエッセイ。 走り始めからハーフマラソン、フルマラソン、そしてウルトラマラソンまでの過程と邪念。主に…
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#メンタル

【邪念走】第24回 タグを確認せずにセックスする。

ハーフマラソンデビュー戦ははっきりいって惨敗。後半10kmは荒川沿いを散歩するただの休日の会社員と化してしまった。デビュー戦といえどももう少しまともに走れると思っていたが、こんな結果を迎えるとは。人生のあらゆることがそうであるように「まあそれなりにできるだろう」と、あまりにも楽観的に考えていたのだ。 基本的に「なんとかなるだろう」と行き当たりばったりの思考パターンなので、挫折を経験したことがなかった。たとえ失敗したとしても「まあ、あんな準備だったらそりゃ失敗もするだろう」な

【邪念走】第23回 女スパイを追尾する。

人生初のマラソン大会のスタートの号砲が鳴った。大丈夫、いつも通りに走ればいつも通りにゴールするはずだ。思い煩うことは何もない。妻だって応援している。俺は決して大会の雰囲気に飲み込まれていない。気のせいかいつもより足取りも軽い……よし、いける! 約21kmのハーフマラソンデビュー戦、スタートわずか1kmで本番への強さを実感した私は、同時に勝利を確信した。 そして10km過ぎ、私は雲一つない青空を見上げながら月曜からの業務の段取りと見通しを考えていた。すなわち歩いていた。仕事の

【邪念走】第22回 完全に息を吹き返す。

ランニングが習慣になってくると、周囲から度々「マラソン大会には出ないんですか?」なんて言われるのだが、これまで私はただ気持ちいいから、ストレスが発散されるから走っていただけであって、いわば自分のため、自己の快楽のみを目的に走っていた。そしてこれからも独りでひっそりと走り続けようと思っている。なぜなら仕事では人の顔色ばかり窺って過ごしているので、自分の趣味くらいは自分のペースで楽しみたいと思っているのだが、ここまで考えて不意に妻の顔が脳裏に浮かんできた。 そうだ、マラソン大会

【邪念走】第21回 あわよくば敗北を狙う。

別にダイエット目的で始めたわけじゃないけど痩せればいいな、まあこんだけ走ってるんだから痩せるんだろうな、でもダイエット目的で走っているわけではないからね俺は。と、標準体重より6kgオーバー(68kg)で始めたランニング。5~10kmのランニングを週に2回ほど約1年続けて現在65kg。 思ったほど痩せてない。 まあ、ダイエット目的で走っているわけではないからね俺は、と、あらためて現状を否認するものの、1年走って3kgしか痩せていないことにはやはり疑問が残る。努力に見合った成