【邪念走】第23回 女スパイを追尾する。
人生初のマラソン大会のスタートの号砲が鳴った。大丈夫、いつも通りに走ればいつも通りにゴールするはずだ。思い煩うことは何もない。妻だって応援している。俺は決して大会の雰囲気に飲み込まれていない。気のせいかいつもより足取りも軽い……よし、いける! 約21kmのハーフマラソンデビュー戦、スタートわずか1kmで本番への強さを実感した私は、同時に勝利を確信した。
そして10km過ぎ、私は雲一つない青空を見上げながら月曜からの業務の段取りと見通しを考えていた。すなわち歩いていた。仕事の