「帰りの会」というバンドの話

1/13 『失くしたイヤホンの見つけ方』
一番好きなバンドのライブに初めて行った。
初めて知ってから毎日聴いていたアーティストが、目の前で、生で、楽しそうに音を奏ででいた。そんなの最高に決まっている。まだ知って半年も経っていないが、ライブ終わりの溢れる「帰りの会」愛を何とかするためにどうかこのバンドの話をさせて欲しい。知らない人には知って欲しいし、知っている人には温かい目で読んで欲しい。

帰りの会の音楽を初めて聴いたのは去年の夏が終わる頃、Spotifyのおすすめで流れた「ユーリカ」という曲だった。
一目惚れだった。
まず耳に入るのはボーカル春原染さんの最高の歌声。
どこか儚く、透き通る素敵な歌声で、歌詞をひとつひとつ大切に語るように歌う。こんなにじぶんに刺さる歌声ははじめてで、衝撃だった。同じ世界にこんな素敵な声で歌う人がいたなんて、と、ぼくの中の世界がいつもより何十倍も輝いて見えた。

作詞作曲を担うのはギターのやまもとこうだいさん。
彼の紡ぐ言葉は綺麗で、情景が浮かび、親しみやすい。それでいて特別だ。曲調はポップでありながら、不思議な密度を持っている。好きなフレーズを引用しようとすると、好きなものがありすぎてどれにしたらいいか選べないので、前述した「ユーリカ」から、特に好きなフレーズを紹介する。

思い出すのは笑っていたこと
頬に指を立てるいたずらで
あれ実際なにが楽しかったんだろう
忘れていくのはどうしてだろう
僕の記憶のふたりぶんの景色が
いつまでもお揃いでありますように

「ユーリカ」 / 帰りの会

「帰りの会」の歌詞には、日常の中に埋もれた宝石のような瞬間を切り取り、言葉にする力がある。この「ユーリカ」の一節も、誰もが経験したかもしれない情景や感情を繊細に描き、聴く人の心をそっと掬い上げるような魅力がある。

そんなやまもとこうだいさんの歌詞と春原染さんの歌声の相乗効果がとんでもないのだ。

明けない夜はないなんて
誰でも知ってんだから黙ってろ馬鹿

「暮れない」 / 帰りの会

優しく温かい言葉が大部分を占める中、一見鋭いこのフレーズも春原染さんが歌うとどこか丸みを帯び、可愛らしく、それでいてしっかりとメッセージ性が感じられる。

「帰りの会」は、ライブと音源どちらかといえば音源制作に力を入れていると言っていたが、ライブならではの良さがいっぱいあった。みんなが楽しそうだった。そんな姿を間近で見れるなんて幸せすぎる。曲間のMCやメンバー同士の掛け合いには絶妙なゆるさと温かさがあり、その光景はまるで放課後の教室にいるようだった。そんな彼らが、彼らの音楽の世界観をより際立たせていた。

溢れ出る「帰りの会」愛の一割も話せていないだろう。このバンドの素晴らしさを言い表せないじぶんの言語能力が本当に悔やまれるが、少しでも誰かにこの気持ちが、このバンドの魅力が、届いていればいいなと思う。

ライブの終盤には次の公演の告知があった。こんどは「世界の終わりの終わりの終わり」での、せんちゃのギター!と、「ユーリカ」を生で聴けたらいいな。次にまた会える日が決まってるなんてなんて幸せなんだろう。ありがとう、帰りの会。

僕らは何処までも行ける!

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