虚構を見に来たはずだった:映画『実りゆく』感想
映画『実りゆく』を公開初日に見てきた。
めちゃくちゃ心が揺さぶられた。いろいろな意味で。
見終わってTOHOシネマズから出て、しばらく放心状態のままショッピングモールを歩いて、そのままサンマルクに入って、チョコクロを食べながら感想文を書いた。
今落ち着いて読み直してみると、「まんじゅう大帝国大好きだ~~~!!!」の一心で書き散らしたオタクの日記である。恥っずかしい!
普通にネタバレ含むし意味わからないと思うので、未鑑賞の人はぜひ本編を見てください。
ほんと、すごくいいから。
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まんじゅう大帝国のお芝居を見に行ったら、まんじゅう大帝国がスクリーンにいた。
実とエーマというキャラクターを媒介として、お二人が普段しない表情や言動を見たい聞きたい、という下心のもと映画を見に行った。
結論から言えば、私の下心は大いに満足させられた。
あくまで淡く感情が表れた竹内さんの表情は実のものだったし、逆に感情剥き出しの田中さんの表情はエーマのものだった。
どちらもお芝居でしか見られないものだと思う。
ただ、最終的に私が動揺と興奮を味わったのは映画の最後、実とエーマが揃いの衣装で舞台に出てくるシーンだった。
これ、ただのまんじゅう大帝国じゃん。
『ピンポン』を下敷きにしたピンネタ、松葉杖がマイクスタンド代わりの神前漫才と、実とエーマから竹内さんと田中さんがひょっこり顔を覗かせる片鱗はあった。
しかしこの瞬間、ひょっこりを飛び越えてしまった。ご本人登場だった。
完全なる虚構として見ていたものが、「これは現実で~す!」と種明かしされた時の衝撃たるや。
「この映画はまんじゅう大帝国の結成秘話だったんだなあ」と思いながら、流れるエンドロールをぼんやりとしたまま見た。
もちろん、これは妄想に伴うちょっとした幻覚であり、しかもファンゆえのものであるということはわかっている。
まんじゅう大帝国のことを知らない人から見れば、紆余曲折あった二人がコンビを組んだ、というラストにしか見えないのだろう。
放心状態から脱してこの感情が言語化されたのは、伯山先生が映画に寄せたコメントがきっかけだった。
■六代目神田伯山
タイタンオールキャストで、虚と実がリンク。まんじゅう大帝国が売れた時に、この映画は本当の意味で完成する。
(出典:映画『実りゆく』パンフレット)
「虚と実のリンク」。私が動揺と興奮を覚えたのはまさにこのポイントだった(伯山先生は、浮いたコメントだとラジオで自虐していたけれど)。
今思えば、虚構と現実の境目を曖昧にする要素は最初からあった。爆笑問題カーボーイの空気感、タイタン芸人の大胆な映り込み、極めつきはエーマのネーミング。
これらの要素が「知っている人」へ向けたヒントとして配置されていたらいいなあ、と思う。八木さんによるまんじゅう大帝国のマネージメントとして愛を感じるし、私があのシーンに見た幻覚もヒントがあってこそのものだから。
一人の青年の感情の揺れ動きを描く青春映画を銘打ってはいるが、『実りゆく』は芸人が演じる芸人の映画でもある。
キャストを誰も知らない状態で見に行っても感動できる、とてもいい話だと思う。知っている状態で見に行くと、さらにいい話になると思う。
虚構と現実が溶け合っているのを目の当たりにして震えた人、少なからずいるのではないだろうか。
ほんともう、最高だった。
ところがどっこい、ここで話は終わらない。
公開初日である10月9日は、2か月に一度の事務所ライブであるタイタンライブ開催日でもあった。このライブは、『タイタンシネマライブ』として全国の映画館でライブビューイングが行われている。
幸運なことに、私が行ったのは『実りゆく』とタイタンシネマライブの両方を上映する館だった。ホクホクしながらチケットを事前に予約していたので、映画の余韻を引きずったままその日二度目のスクリーン。
まんじゅう大帝国のネタは『ピンポン』だった。
現実のまんじゅう大帝国は、『ピンポン』を自らのきっかけであると発言している(出典:『詰め合わせ』発売に際するインタビュー)。
虚構のまんじゅう大帝国もまた、同じだとしたら。
元は実のピンネタだったそれをマッシュアップして、漫才というかたちにしていたとしたら。
あのシーンで実とエーマが披露したネタは、おそらく。
こんな感じの妄想が一瞬のうちに頭の中を駆け巡って、ネタを見て笑いながら胸がいっぱいになった。
私は、虚構の続きを紛れもない現実に見ていた。
お二人は狙ってこのネタを選んだのかもしれない。だとしたらほんともう、狙い通りです。勘弁してください。
(10/13追記)
イベント『実りゆく収穫祭』の情報量すごかったですね……。井口さんの容赦ないツッコミのおかげで、ようやく現実に戻って来れそうな気がしています。
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