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#51 一戸〜九戸を全員集めてはいけない理由
私の名字は「四戸(しのへ)」といいます。結構珍しい名字で、家族以外では一人しか会ったことがありません。
この「~戸」というシリーズは、一戸から九戸まで存在しています。名字として、そして地名として青森県から岩手県北部にかけて点在しているのですが、残念ながら四戸は地名から消されています。「~戸」の由来やら四戸リストラ事件の真相などについては、気になる方だけググって下さい。
前述のとおり、この世には戸を冠する者が一戸~九戸まで存在していますが、それら9人を一度に集めることは禁忌とされています。これは、戸を冠する一族にとって常識であり、読み書きより先に教え込まれます。余談ですが、戸の一族に生まれ落ちた者は、出生直後に体にそれぞれが冠する数字の焼き印を押され、数え年で3つになるまで地下室で過ごすことが風習とされています。
本題に戻りましょう。では、なぜ一戸~九戸を一度に集めてはならないのか。単刀直入に申し上げますと、人類が滅びるからです。
戸族の体には、それぞれが冠する数字の焼き印が押れています。更に、焼き印が押される箇所は一族によって違っており、例えば四戸は足裏に「四」と、一戸は左胸下に「一」と、五戸は右鎖骨下に「五」というような感じです。この焼き印は、一族の人間である証拠という意味とは他に、人ならざる力を封印しているという役割もあります。
焼き印が封印してくれるので、普通に生活を送る上ではなんら問題ありませんが、一戸~九戸が一度に集結してしまうと、焼き印がトリガーとなり封印されていた力が一気に解放され、破滅が始まります。
どんなことが起こるか、具体的に書くと、まず9人の戸族が集まった瞬間に青森県と岩手県の県境の深い森の中にひっそりと佇んでいる廃れた小さな社が光ります。そして、その社を中心に5㎞間隔で置かれている社から社へと、円を描くように龍脈が流れていきます。
龍脈が流れると同時に、一戸から順番に体の中から魂の本当の姿が現れ始めます。九戸の魂が現れると、9つの魂は翼を生やし、ある者は「天使」と、またある者は「悪魔」と、そしてある者は「神」と呼んでいる存在の形へと変貌します。
この時、どこからともなくこの世の言語ではない謎の歌が流れてきます。もちろん、ピアノ伴奏つきです。
龍脈が地球全体を覆うと、戸族以外の人類の体内からも魂が現れ、全ての魂と戸族の魂が一つになり、巨大な「十」になります。
「十」が完成すると、その上に大きな扉が現れます。扉は、破滅のキーとなった社へ繋がっており、「十」が扉を介して社へ入ると、「十」は永遠の眠りにつきます。
扉が閉まると、龍脈による地球の浄化が完了し、かつて存在していた美しき自然がよみがえり、本来の地球の姿を取り戻します。
私は、人が好きです。時には怒り、時には悲しむ。辛いことも多いですが、人といることに喜びを感じますし、なにより生きていることが好きです。
環境保護を訴える過激派団体は、今すぐに戸族を集結させて地球を救うべきと叫んでいます。彼らの言うとおり、人類の繁栄に伴って地球は衰退を続けていますが、だからといって、全人類が「十」となることが正しい選択だとは思えません。人類と地球の共存の術は、絶対にあるはずです。
戸族に関する秘匿事項をここまでハッキリ公開したことは、長い歴史の中で一度もありませんでした。みなさんが知っている、半ば都市伝説のように吹聴されてきた戸族の真実は、外れているようで当たっていたということです。
この記事をアップした私は、戸族から追放され、処刑対象として近いうちに殺されるでしょう。
私から、最後のお願いです。私の死後、何があったとしても、一戸~九戸を集めて儀式を起こさないで下さい。
もし、儀式を行おうとする動きが見られたら、十和田湖のほとりに住む「レイ」と呼ばれている老人を訪ねて下さい。彼なら、力になってくれるはずです。