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【第2話】初めての取り調べ
この記事は平凡なサラリーマンであった私が、逮捕された経験を自戒の念をもって書いたものです。自己紹介記事を先に読んでいただくことをお勧めします。
やはりカツ丼・・
警察署に到着した。私の乗った警察車両を取り囲むように警察官がたくさん立っていた。だいぶ物々しいなと思ったが、被疑者の乗った車が出るとき、または入るときは警察官が外に出てきて車を取り囲む決まりらしい。
そして、すぐに取調室に通された。3畳ぐらいの狭い部屋にデスクとパイプ椅子が向い合せに置いてある。これもドラマで見るやつだ。しばらくすると初老のこれまたドラマでは人情派の刑事みたいな人が入ってきて「もうお昼だいぶ過ぎちゃったけど食事用意させてるからね」と言ってくれた。
正直、空腹を感じるような余裕はなかったが、これからどうなるかわからないので食べておかなければと思った。
その10分後ぐらいに遅れた昼食を出してもらった。カツ丼だった。
「えっ、やっぱりそうなの?」と思ったが、イメージと違ったのは店屋物ではなく、コンビニ弁当のカツ丼だった。とりあえず無理やり胃に押し込んでお茶を飲んだ。
取り調べと動機
遅い昼食が終わると部屋に田中さんが入ってきて、本格的に取り調べが始まった。田中さんは声を荒げたり、机を叩いたりせず、車内で話をしていた時と同じ調子で動機や違法コンテンツの入手経路について聴取をはじめた。
恥ずかしいのと、情けないので言葉に詰まることは多かったが、もう観念していた私は素直に話すことにした。
私の動機は足りない生活費を補填するためだった。技術職で上昇志向があまりなく、業界的にも低賃金な仕事をしていたため生活はあまり楽ではなかった。そのうち子どもたちも進学や塾などで教育費がかかるようになり、これは何とかしなければと思った私は副業をするようになった。
副業は会社の仕事と違って、自分でやっている感があって、とても楽しかったし、順調にいっている間はとても充実感があった。
しかし、世の情勢の変化や素人の副業がそんなにいつまでも上手くいくわけはなく、だんだんまた生活に影響が出てくるようになった。そこで安易にキャッシングをして生活費を補填しながらいろいろな副業に手を出したが、数年経つと借金ばかりが膨れ上がり、深刻な状態になってしまった。
そこでまたさらに安易に違法なことに手を出してしまったという私のダメ男ストーリーを田中さんに話した。
数時間話したところで、今日はここまでにして、また明日からしばらく取り調べが続くということと、今夜は別の警察署に留置されるのでその前に夕飯を食べましょうということになった。
さっき食べたばかりなので大丈夫ですと言ったが、明日の朝まで何も食べられないので食べて下さいと言われた。
しばらく取調室でボンヤリしていると、今度は私の部屋でズバズバと答えずらい質問をしてきた女性の警察官がコンビニ弁当を持ってきてくれた。
弁当を食べながら「仕事とはいえ、聞きずらいことをズバッと聞くんですね。私も答えずらくて参りました」と言ったところ、女性警察官は「なんか職業病と言うか、そういう感覚が麻痺してるのかもしれないです」とあっけらかんと言って笑った。
まだ若そうなのにすごいなと感心しながら弁当を食べた。
そして留置場へ
取調室を出る前にまた手錠と腰縄をつけられた。そして、留置される別の警察署までしばらく警察車両に乗って移送された。朝から予想もしなかったことが立て続けに起こり、緊張の連続だったので、自業自得とはいえ、もう結構くたくただった。
移送される車内で急に「そういえば、留置場ってどんなところなんだろう。1人部屋かな?超コワそうな人と相部屋だったらイヤだなぁ。しかもどのくらい拘留されるのかな」そう考えると不安がみるみる大きくなってくる。
しかも「今頃、妻と子どもたちはどうしてるかな・・もうしばらく会えないかもしれないな」「警察の人は妻になんて説明したんだろう・・」そんな考えが頭の中をグルグルまわって、さっき食べた昼食と夕食をもどしてしまいそうになるが、なんとか喉に力を入れて耐えながら車に揺られるしかなかった。
<続く>