惑星対抗給食ウォーズ(前編)
チャイムが鳴る。
次々に銀色の円柱や直方体が運ばれてくる。
割烹着を着た給食当番が、慣れた様子で準備する。
朝8時半。1時間目だ。
ここは屈指の給食好きが集まる強豪校。
給食に魅了された子供たちが、全国から集まる。
その中でも、6年S組は選抜クラス。
小学校4年生になる時、厳しい試験を受けて、合格したものだけが入れる。
そこから3年間、クラス替えはない。
ここでは、1時間目から6時間目まで、すべてが「給食」の時間。
給食好きにはたまらない時間割だ。
***
あ、取材のカメラ?おーけー、おーけー、俺の班員を紹介していくぜ。
俺の隣に座っているのは、幼馴染の難波ハヤト。みんなには、疾風のハヤトって呼ばれている。3年生の時には、カレーを12秒で完食したことがある早食い。食べるスピードに加えて、最後部席からでも配膳台へと一番に辿り着く運動神経がある。その持ち味を生かして、颯爽とオカワリをする。昔は俺より背が低くて、足も遅かったのに、今では背の順で後ろから2番目だ。
それで、俺の向かいにいる大きなヤツが、丸ノブ夫。丸呑みのノブ。2年生の時には、口が大きすぎて、おぼんまで食べたという逸話がある。動きは遅いから、オカワリはいつも俺かハヤトまかせ。ノブが向かいに座っていると、あっという間に食べ物が消える。
んで、斜向かいにちょこんと座っているのが、大岩サヤ。小柄だけど、これでも選抜。彼女は、好き嫌い無く何でも食べる。納豆も、ゴーヤも、パクチーっていうヤツも食べるらしい。こいつがいなきゃ、勝てない給食は何回もあった。クラスでは、雑食のサヤって恐れられている。
最後に、俺がひょうきんものの、チャンヤマ。え、本名が気になるって?別に面白くないから、山田でも、山本でも、適当に想像してくれよ。
俺は、特に大食いっていうわけでもなく、早食いっていうわけでもない。じゃあ、なんでここにいるかって?人を笑わせられるからだ。自分の班じゃないぜ。他の班に行って、牛乳を吹かせるのが得意なんだ。給食中に牛乳を吹いたら大惨事。その班は、トイレットペーパーを取りに行ったり、牛乳まみれになったり、大きなタイムロスをする。行儀が悪いって言われているけど、実際、戦力になっているから、選抜から外されないってワケ。
ここまで、俺の最強の班員たちを紹介したけど、みんなはマネするなよな。俺らは、朝から晩までずっと給食のことを考え、厳しい訓練を受けて、ここまでの能力者になった。まあ、サヤみたいに、好き嫌い無く食べるのはマネしてもいいけどな。
あと、こう見えて、一人ひとりにパーソナルトレーナーがついていて、健康には気を遣っている。あまり無理した食べ方を続けると、美味しく食べられなくなっちゃうからね。元々、給食が好きでこの学校に入ったけど、好きなことを極めるってのも、大変だぜ。
で、色々、話してきたけど、なんで俺がこんなに上機嫌なのか、気になるよな。それは、みんなもご存じ、「惑星対抗給食ウォーズ」の出場班になったから。
え、知らない?じゃあ、なんで取材に来たの?
うんうん、ほうほう、上司に言われたから来た?
だから、オッちゃんは、何にも知らないんだね……。
仕方ない。ちょっとだけ説明するよ。
全日本給食連盟が主催している給食大会日本予選は知っているよね。その上位4班に入ると、給食大会地球本戦に出場できる。そこで優勝をすると、晴れて「惑星対抗給食ウォーズ」に参加できる。まあ、これも太陽系ブロックだけの話で、「アンドロメダ銀河杯」とか「ブラックホール食事会」とか、上には上があるんだけどね。
え?なんで、給食が大会になっているかって?はぁ、本当に何も調べないで来たんだね。「給食防衛軍」にふさわしい生徒を見つけるために決まってるだろ。
最近は、昔と比べて残飯が増えている。これは地球だけの問題じゃなくて、どの惑星でも増加傾向にある。オッちゃんは知らないかもしれないけど、技術が進歩していって、その残飯は宇宙空間に放出されるようになった。今や、宇宙には給食の残飯だらけ。
そこで現れたのが、「給食防衛軍」、みんなの憧れだよ。
各惑星の残った給食を食べたり、小学校を回って食べることの楽しさを伝えたりする人たちさ。もちろん、俺も目指している。
まあまあ、話はこれくらいにしよう。
明日が「惑星対抗給食ウォーズ」の初戦だから、実際に見に来てよ。
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