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この手を離せば、もう会えないと知っている。
柔らかな肌にも白く滑らかな背にかかる艶やかな髪にもう触れられないことも。

日が昇る前には、この部屋を出て行く。
せめてあともう少しだけ。
腕の中で、温かなあなたのぬくもりを感じさせて欲しい。
今はあなたの背にかかる長い髪に顔を埋めて、あなたの香りで肺を満たしたい。
流れる涙で背を冷たくさせても、どうか振り向かないで。
そのまま、気付かない振りをして欲しい。
もう少しだけ。
明日には閉ざされる、あなたへの切ない想いと共に、重ねる指にそっと力を込める。

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