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踊り場を抜け出し、再成長を実現する1年に【キュービックの年頭所感】

皆さま明けましておめでとうございます。

「おめでとう」という言葉が憚られるくらい2024年の年始は悲痛な出来事が続きました。令和6年能登半島地震により被災された方々、そのご家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。皆さまの今後の生活の安全と、被災地の一日も早い復興をお祈りいたします。

こうして社員一同、無事仕事始めを迎えられたことに感謝し、自分たちの事業でより世の中に貢献していきたいとより一層身が引き締まる想いです。

「年頭所感」として、昨年の振り返りと新年の目標についてまとめてみました。

成長が鈍化した2023年

キュービックの2023年は、事業・組織ともに踊り場を迎え、しんどい1年になりました。

過去数年は年平均成長率で40%を超えていたところ、2023年9月期は成長率10%ほどで着地。2024年9月期(今期)もスタートから苦しい展開です。組織も疲弊が続き、未来を創る営み以上に足元の問題解決に追われる時間が多くなってしまいました。

もともと事業は2022年以降しばらく好調で、2023年も積極モードでスタートしていました。実際に昨年は2社のM&Aや新規事業への積極的な投資など、遠心力を高めるための仕込みを本格化しています。

ただ、メイン事業のデジタルメディア事業が失速してしまったことで逆回転が始まり、シナリオはかなり崩れてしまいました。

停滞要因の振り返り

今思えば、もともとの好業績が出来過ぎだったところもあります。過去1〜2年は主要クライアントの積極的な広告投下を背景に大きく成長できていたのですが、この追い風が早晩止まるという前提が社内にありませんでした。

本来であればこの間に企業としての実力値を高め切りたいところでしたが……
・プロセスの磨き込みに集中する一方、クライアント・取引先とのやり取りが表面的になり市場の風向きを感じられなくなっていた
・社外情報の流通量が減ったことで環境変化に気づけず、戦略の修正が遅れた
・テクノロジーの変化に追いつかず集客技術力が相対的に低下して売上の維持が難しくなっていた

また、グループ会社が6社に増えたことで1つ1つの判断の精度や速度が鈍ってしまった感覚があります。

当然ながら、1社1社の個別の論点を処理することとグループ全体の経営の仕組みを検討することは全く別のゲームで、それまでのようにテンポよく判断できないのです。問題が発生するたびにリアクティブに対応する形になってしまい、プロアクティブに課題を追いかけることに十分集中できていませんでした。

最大の敵は「慢心」

この数ヶ月、改めてクライアントやユーザーの声を直接聞く機会をいただき、つくづくいちばんの敵は「慢心」だと振り返っています。

狭い業界ではありますが、一定のポジションを確立でき、トップクラスの評価をいただいた時期もありました。しかしいつの間にかディフェンシブな判断が増え、仕事の基準が自社都合のものとなり、市場や顧客が見えなくなっていたように思います。グループ経営に突入する際の準備や勉強の甘さも、危機感や集中力の薄れが招いたこと。

事業や組織のサイズが大きくなればなるほど、社内の仕組みづくりに閉じるのではなく、任せて手放すのでもなく、むしろ市場の解像度を高め続けて根拠を持った判断を常にできるよう経営の状態を保たなければいけない、ということがよくわかりました。

現在の不調は半年〜1年前の慢心による結果ですし、現在正しい危機感を持って戦えていれば必ず結果は上向いてきます。「組織が健全な危機感を持って取り組めているか」は精度の高い先行指標。顕在化した結果に慌てて対処するのは経営の仕事とは言えないので、この指標を常に見つめ「負けない経営」を実現できるよう、経営の成長が必要だと強く感じています。

2024年は改めて「チャレンジャー」として

現在は「雨降って地固まる」の雨が止んだところ、という感じでしょうか。
2023年のうちに不調の要因・解決すべき課題が明確になったことは明るい材料です。2024年以降フォーカスして取り組んでいくべき課題については、キーマンの中で認識と合意を得ることができました。

もちろん、地面はこれから固めないといけないのですが、僕自身は地面が固まったときのイメージを強烈に持つことができているので、すごく楽しみです。

2024年は慢心を完全に排除し、改めて「チャレンジャー」として戦うことを抱負としていきます。今年はより顧客に向き合ったり、市場や技術を研究したり、チャレンジャーとして柔軟に機動的にリスクを取って挑むことで、固まりかけた自分たちの殻を破っていきます。

新規事業の取り組み

2023年の振り返りは厳しいものが多かったのですが、もちろん良いニュースもたくさんあります(そもそも2023年9月期はグループ・単体とも過去最高業績(売上/営利)を更新しています)。

良いニュースのひとつは、会社としての念願だった新規事業がいくつか花開きかけていること。デジタルメディア事業以外から生まれるグループ売上は全体の10%を超えてきており、今年もその成長にとても期待しています。

デジタルメディア事業はメガプラットフォーマーのアルゴリズムやレギュレーションといったアンコントローラブルな事情により業績を左右されることが多く、爆発力はあるのですがなかなか利益率が安定しません。このためキュービックは新しい柱を作るべく本当に何年も前から新規事業のチャレンジを続けてきたのですが、上手くいった取り組みはほぼなく、長らく苦しんできました。

2022年10月には事業開発の体制を一新し、「これで新規事業が生み出せなければもう内製の事業開発は一旦諦めよう」と最後のチャレンジのつもりで後藤(現アンパサンド株式会社CEO)を起用したのですが、ようやく芽が出つつあります。今年はいくつか前向きなリリースを出せそうでとても楽しみです。

他にも、福岡支社の事業が黒字化して成長軌道に乗ったこと、株式会社パラソルのパーソナライズ婚活サービス「ヒトオシ」も困難を乗り越えて成長を継続できたことなど、2023年はようやく明るい兆しが生まれた1年でした。
もちろん本当の結果が出るのはまだこれからですが、会社の歴史の中でも大きな壁を突破しつつあるわけで、これはすごく嬉しいことです。

グループ経営へのチャレンジ

昨年新たにグループに加わってくれたのが、ギフトECのHYACCAとパフォーマンスマネジメント・人事制度ソリューションのハイマネージャーです。

HYACCAが挑むギフト市場は、オンライン・オフライン全体で10兆円ほどの巨大な市場です。その中でも近年はオンラインの市場が伸び続けていて、3000円ぐらいまでのカジュアルな金額の市場が特に好調です。

HYACCAはそのギフト市場の中で単価1万円以上の高価格帯にフォーカスしてしっかり売上を作ってきたサービスで、ポジショニングが面白いと思っています。キュービックのマーケティングやデザイン、テクノロジーを投入することで、この事業は着実に成長させられるという期待感を持っています。

一方のハイマネージャーはOKRや1on1、フィードバックなどの機能を揃えた“現場で働くミドルマネジメント層のための”パフォーマンスマネジメントツールです。

SaaSとコンサルを組み合わせたBPaaSと呼ばれるモデルなのですが、創業者であるPwC出身のコンサルタントが持つ理論的な裏打ちと、キュービックがこれまで取り組んできた組織開発の実務ナレッジを組み合わせてプロダクトを磨いていく過程が、非常にチャレンジングで楽しみです。キュービックはもともとヒトや組織にそこそこ投資してきた会社なのですが、ある意味10年以上かけてR&Dを積み重ねてきた組織運営ナレッジが、ビジネスとしてアウトプットされていく、その出口にいるのがハイマネージャーと言えるかもしれません。

新規事業やM&Aで事業の多角化を図る背景には、キュービックの持つマーケティングやデザインの技術をさまざまな事業のグロースに活用することで、社会に生み出すインパクトをより多面的に広げていきたい、という想いがあります。さまざまな事業をグロースする経験を蓄積して胸を張ってマーケティングの会社を名乗りたい、現在のケイパビリティはデジタルメディア事業以外でもきっと活用できるはず、ということでいろんな事業にチャレンジできることそのものが楽しみです。

また僕個人としては、2019年にM&Aでグループジョインとなった株式会社アーク・コミュニケーションズが、昨年創業社長の檜森から2代目の小倉に社長の承継を終えたこと、その上でM&A後の過去最高益を達成したことにちょっとした達成感を覚えました。

日本の中小企業の承継問題は大きな社会課題ですが、残すべき会社をちゃんと残していく、そのために(会社の魂を保存しつつ)ビジネスモデルをアップデートし経営のサイエンスを注入していく、という仕事には意味があると思いましたし、今後もチャンスがあればライフワークとしても取り組んでいきたいテーマです。

キュービックグループの一つひとつの事業・会社はどれもとても魅力的なので、2024年はグループ全体でこれらの事業を成長させることはもちろん、同じグループで共に目指すビジョンや戦略を明らかにしていくことに、改めてコミットしていきたいと思っています。

既存事業の再構築と、改めて磨きたい自社の強み

2023年には成長が失速してはしまったものの、デジタルメディア事業の伸びしろも強く感じています。僕自身が今年最もフォーカスしたいのはデジタルメディア事業の再構築です。

2023年後半に顧客や取引先とさまざまな情報交換をさせていただきましたが、その過程でこの事業を強くできる可能性がすごく見えてきています。1年前は「既存事業は信じて任せる」だったところから、「僕も一緒にやっていきたい」へと変わっていきました。

過去は「選択と集中」で効率を高めることで成長した背景もあるのですが、現在の状況はその副作用とも言えます。新規の取り組みが大きく減退し、競合に遅れをとる局面も増えました。新たなジャンルのメディアの開発や新しい技術のメディア適用など、試行回数をまずは増やすこと。そのためにユーザーにしっかり向き合いヒントを拾い続ける文化を取り戻すことにコミットしていきたいと思っています。

「ユーザーインタビュー年間2000件」を掲げる理由

僕もかれこれ20年近くこの事業と向き合っていますが、この領域で十年以上成長し続ける会社はほとんどありません。

理由の1つは、手法の陳腐化の早い業界であること。1つの武器が3年以上効果を持った試しがありません。テクノロジーのアップデートサイクルやユーザー行動の変化が早く、競合の学習速度も凄まじい。一度作った勝ちパターンを磨きつつも絶えず新規のチャレンジを行う、それができなければ成長どころか生き残ることもできません。

一方で、プラットフォーマーの評価(機械による評価)を追いかける文化が行き過ぎてしまうと、悪気なくユーザーにとって害悪となるような広告やコンテンツを撒き散らすことにもなってしまうのが、デジタルマーケティングの怖いところです。

一般的に新しいプラットフォームほどエンタメ性・時事性が求められ、レガシーなプラットフォームほど信頼性・権威性・専門性が求められる傾向にありますが、新興プラットフォームを主戦場とするプレイヤーの中には、刺激的なコンテンツを用いたりアルゴリズムの穴を突いたりして、ハック的にアクセスを獲得することを得意とする人達もいます。

その手法自体を否定するつもりはないのですが、機械の評価やKPIにフォーカスすればするほどユーザー目線は失われやすくなるもの。最終的にはプラットフォーマーもユーザーの役に立つことを志向しているため、こうしたプレイヤーも短期では強くても長期的な成長は難しく、ある日突然姿を消してしまうなんてことを過去何回も見てきました。

キュービックは、ユーザーの生活を前向きに前進できるような、長く残るコンテンツをしっかりと時間とお金をかけて作っていくことを強みにしています。「ヒト・ファースト」のコアバリューのもと、「ユーザーの課題を解決するためにインターネットを良くしていきたい」という思想を持った人たちが集まっているためです。

今期は再び原点に立ち戻るべく、「ユーザーインタビュー2000件」の全社目標を掲げて走り始めました。第一四半期が終わった時点で200%以上のペースで推移しています。

サイクルの激しいテクノロジーの変化にキャッチアップしながらユーザー目線で価値あるものを生み出していく、この両立は簡単なことではありませんが、意味のあるチャレンジだと思っています。

短期業績に左右されすぎず、本質的な価値に長期で向き合えるのも、非上場ベンチャーの良いところ。苦しんだことで原点に立ち帰れたことを前向きに捉え、今年も取り組んでいきたいと思っています。

2024年、心機一転「チャレンジャー」として再出発するキュービックグループを、どうぞよろしくお願いいたします。

2024年1月6日
株式会社キュービック
代表取締役CEO 世一英仁

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