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真っさらな世界・前段(ジークアクス感想その2・ネタバレ含む)

はじめに

劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』の感想です。
タイトルにも入れましたが、いきおいネタバレを含むことになると思いますので、未鑑賞の方で内容を知りたくない方はご遠慮ください。

とはいえ、なるべく先行劇場版本編の内容は避けるつもりです。

また筆者はガンダム好きですが、ヲタクを気取るつもりはありません。当然ながら熱烈なファンからすれば見当違いな発言があるでしょうし、いわゆる宇宙世紀を愛してやまない方々には受け入れ難い内容を書くことがあるかもしれませんが、あくまで個人の感想なので、ご理解・ご容赦のほどよろしくお願いいたします。

私には前半も後半も面白く感じられたけれど

前回、ジークアクスの感想を投稿してから、「ほかの方々はどう思っているのだろう?」と、ネタバレ含むレビューをいくつか覗いてみました。
その結果、共通しているのは、「後半が面白かったからテレビ放映が楽しみ」という意見でした。
前半の感想は「原作(テレビ版)のリメイク」や「オールドファン向けの不要なパート」、「庵野の趣味全開または暴走」など、否定的に捉えている方が意外と多い印象でした。

そうかなあ? 冗長でもなく、さりとて端折っているわけでもなく、必要な仕事をきちんとこなしているように見えましたが……

私の読解力が低下してしまったのでしょうか。

ジークアクス前半、庵野監督の面目躍如か

前回の感想で、「今までとは違う、SF的エンタメ感満載のガンダムになることを、私は期待しています」と書きました。その前提としてジークアクスには、「原作および続編シリーズの人々は出てこないのではないか」という推論も述べました。

どうしてそう考えたかというと、サイド7に穴が開かなかったことと、シャアが「原作でガンダムのパイロットが言ったとおりの台詞」を原作と同じタイミングで口にしたからです。
ガンダムの動きも同様でした。
当然ながら前後の流れに矛盾が生じないようアレンジが加えられていたものの、逆によくあの程度の改変で最大効果を上げることが出来るなと感心するほど、よく練られたプロットだと思いました。

もちろん庵野監督なら手元に資料なしでも原作ガンダムのリメイクをしてのけるでしょうし、それは「シン・ガンダム」と呼ばれるべきものでしょうが、今回のプロット組み立ては単純な描き直し作業ではなかったはずです。
喩えが正しいかどうかは分かりませんが、映画バック・トゥ・ザ・フューチャーの大ヒットを受けて、予定していなかったPart2、Part3のプロットを書く作業にも似た苦労だったでしょう。

なによりも重大な改変は、コロニー内の環境が悪化せず住民避難の必要が生じなかったことです。

ガンダムの搭乗者変更のため、今作ではサイド7のコロニーに穴が開きませんでした。物語展開上は当然の成り行きでしたが、これによって原作からの乖離が生じました。

これだけでW・B関連のイベントが一切生じなくなり、原作の主要登場人物のほとんどがストーリーから外されることになりました。
言い換えれば、「どこかで生活しているのだろうけど、出演することはない」状態となったのです。
一例を挙げるなら、フラウ・ボウやカツ・レツ・キッカなどは避難民としてW・Bに乗らなければ、存在を消されたも同然です。原作どおりの設定ならば、アムロをはじめとする連邦のNTパイロットが世に出てくることもなくなります。
まあ、アムロほどのNTならばいずれ頭角を現したと思いますが、彼は別の方法で消されていると私は考えていて、いずれにせよジークアクスでの登場はないでしょう。

問題は、テム・レイが穴から宇宙へ吸い出されなかったこと。

原作でも先行劇場版でも、テム・レイはザクの襲来を受けモビルスーツ回収のためにコロニー内に降りていて、艦橋が破壊された時点ではW・Bに乗っていません。
ならば原作の主要登場人物が次々と消されていく中、彼は生き残ったのでしょうか。
V作戦の中心人物である技術士官がサイド7強襲から逃げ仰せ、酸素欠乏症にもならなかったとしたら、歴史が大きく変わるかもしれません。
開発中のモビルスーツをいくら破壊しても、頭脳とデータが残っていれば計画のやり直しは可能ですから、連邦に巻き返しのチャンスが生じるのでははないでしょうか。彼が生きている限りガンダムを上回る性能の機体や、それに乗るべき未知のNTが見つかる可能性があるからです。
ガンダムを鹵獲された場合、それを上回る性能の機体を作ろうと奮起して、一年戦争中にガンダムmkIIを開発してしまうかもしれません。

だから彼は確実に退場させる必要がありました。
でも原作と違いサイド7に穴は開かなかった。それではいったい、どうやって消したのでしょうか。

大外しは覚悟の上で大胆な仮説を立てます。

彼は、迎撃してきたガンキャノンに乗っていたのではないでしょうか?
02/14 追記:
テム・レイは現れたガンキャノンに対抗して立ち上がったガンダムを見て、「誰が動かしている?」趣旨の発言をしています。彼はモビルスーツ回収のために近くにおりました。タイミングを勘違いしていたため、推察は完全に誤りでした。訂正いたします。

ガンキャノンの撃ったビームは、掠めただけでザクのシールドをぼろぼろにしてしまいました。連邦のモビルスーツは脅威だ、ということでシャアがガンダムで迎え撃ちます。ただ民間人アムロとは違い、動力炉を破壊してはいけないことくらい、彼は承知していました。
モビルスーツの核融合炉を爆発させないためにビームサーベルでコックピットだけを狙ったのは、サイド7に穴を開けないためです。

原作のガンダムの動きをトレースしただけかもしれませんが、それ以外に「プロット上の整合性を図る」という目的があった、とは考えられないでしょうか。

ふつうに考えればガンキャノンにはV作戦のテストパイロットあたりが乗っているはずですが、ガンダム起動時、周辺に彼らの姿はありませんでした。原作でうろちょろしていたアムロの姿はどこにも見えず、テム・レイだけ存在が確認できました。
原作どおり、立ち上がったガンダムを見上げて、誰が操縦しているのか、と疑問を口にしています。

ここで、「キャノンに乗っていたのはアムロじゃないの?」という異見も予想されますが、高確率で違うと思います。(その話は後段で)

傍証ですが、ジークアクス前半の一年戦争部分において、原作で誰かが言ったことや為したことをシャアが代わりに行った場合、オリジナルの登場人物とそのイベントが消えてしまう……という現象が起きています。
既述のサイド7避難民やブライト以下W・Bのほとんど全員、ララァ(大佐が「拾わなかった」から不在・エルメスは開発されない)、などが該当するでしょう。

ならば短い映画の中わざわざ尺を取って絶対に必要とは言えない描写をしたのは、原作を忠実に再現するためだけではなく、存在されては困る人物=テム・レイを消すためだった(02/14訂正:キャノンには乗っていませんでした。すいません)かもしれません。
ただガンダムに体当たりを仕掛けてきた(原作ザクの代わり)ガンキャノンは、ガンダムに向けて至近距離で双肩のビームキャノンを発射しています。かなり近い場所にいたテム・レイとお付きの士官(?)は、着弾したビーム砲かの巻き添えになって、やはりお亡くなりになってしまったのではないでしょうか。
理由はやはり、サイド7に穴が開かなかった(生存してしまう)からです。

あえて極端な例え方をすれば、居抜き工事ではないかと。

とても個人的な考えですが、今回、鶴巻監督から庵野監督に出されたリクエストは原作の主な登場人物とその後の派生作品への可能性を一切消して欲しい……というものではなかったでしょうか。
繰り返しを恐れずに言いますと、舞台設定をそのままにして、原作の未来に出てくる人物やイベントが発生しないようにする作業です。

ΖやΖΖ、いくつかのOVAなどの「地球連邦軍が勝った未来」は、これまでのガンダム・ワールドを形づくり、多くのファンに支持されています。この人気や皆が馴染んだ設定は残したい……でも、ジークアクスという新しいガンダム作品の世界観には、それがとても邪魔になります。

まだおそらく2話分しか見ていない作品の世界観について語ることは本来できません。ただ、ひとつだけ確かだと思えることがあります。

ジークアクスは一年戦争から5年後だそうですが、Ζガンダムなど旧来の作品世界は、地球連邦軍内の覇権争いやジオン軍残党が暗躍する軍事国家的世界でした。それでは今作のようなリベラルなストーリー展開は起こり得ないと思えるのです。

だから一年戦争を大きな転換点からやり直した……必要な設定だけを残し、邪魔な軍人やNT、派閥、思想を消す作業が行われた……そういうことではないでしょうか。
前半最終パートはつまり、仕置人イレイザー役のシャアさえも消し、ついでに「逆襲のシャア」の未来に繋がる余地すらも完全に絶って、鶴巻監督へ真っ新な世界バトンを渡したのではありませんか。

後段へつづく

まあガンダム作品の半分も観ていない素人の言うことなので、ドレッドノート級の外し方をしても、それはご愛嬌。
あしからず。

以前の記事:
ガンダムはSFか(ジークアクス感想・ネタバレ含む)

つづきの記事:
真っさらな世界・後段(ジークアクス感想その2・ネタバレ含む)
真っさらな世界・因果の外(ジークアクス感想その2おまけ・ネタバレ含む)

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