スナイパーの意外な使い方

「楽しかった、修学旅行」
「みんなで汗をかいた、運動会」
「美味しかった、給食」
「メーカーが変わった瞬間臭みが増した、牛乳」
「課題曲がテンション上がらない、合唱祭」
「たまに間違えて持ってきてしまう、弟の体操着」
「なんでここだけカーペットなんだ、視聴覚室」
「武器にしたらかっこいい、黒板用の三角定規」
「クラスの一軍だけ使える、T字ほうき」
「ポンッと音がする、卒業証書入れ」
「憧れのあの音を胸に」
「僕たち」
「私たち」
「卒業します」

円滑に卒業式が進み、全員に卒業証書が授与された。

しかし、期待していた筒状の入れ物ではなく、卒業証書が折れにくいように考慮された平たいものだった。

僕たちの青春は期待したようにならなかった。
身長伸びることを考慮して買ったのにブカブカなままの制服みたいだ。

その時、教室にポンッという音が響く。
スナイパーが空砲を鳴らした。期待していた音に、僕らは湧く。

スナイパーが僕たちの青春の最後のページを紡いだ。

(407文字)

以下企画に参加させていただきました。


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