私たちの11月31日 -その1-
※ POPMARTのフィギュアに物語を作っています。POPMARTをご存じの方、これがどのフィギュアか当てて見て下さい♪ -最後に答え合わせ
" 夏の踊りが遠のいていくと、
静けさはひとしお夢心地の世界に導く"
それが11月、別名"かぐら月"
私は、この静けさが好き。とても良く眠れる。
そして、爽やかな朝から始まる学生生活も満喫の文字そのものだ。しかも、その満喫の文字こそ私の夢物語の描写をより大胆に描かせてくれるのだ。
そんな私は、文学に精通する大学で"作家のたまご"を目指している。
私の名前は... ...
私「姫子ちゃん!」
姫子「んあ、どした?」
私「お尻の月が光ってる!」
姫子「んあ... ...やっべ!メッセージをシカトかましてたから、ママから直電(直接電話)きてる。」
お尻の月が光っている彼女の後を追うように私は、それなりに好きなこの講義から静かに退出した。
姫子「ウチのママさ、心配性なんだよねー」
私「どうして、メッセージを返さなかったの?」
姫子「ママじゃなくて、いつもは、おじいちゃんが送ってくるから。舐めてたわ。ママちょいオコ(怒る)。やばば、ツキってる」
姫子とは、大学からの付き合いで、初めて付き合うタイプの友達だ。いつも忙しなくお尻の三日月が光っては、慌てている。
正確に言うとやる事を後にまわす子。
私「(ツキってる?どういう意味だろう)」
お尻の三日月は、尻尾と適当に誤魔化していて、正確には本人にも分かっていない。買ってきたパンツに毎回穴を空けて、下着が見えてないか鏡で確認することが悩みらしい。
静けさが好きな私だが、姫子の騒がしさは、これはこれで、爽快で気持ちがいい。彼女にとっては、後味が悪いことだと思うが。
彼女が家族と会話するときは、とても綺麗な言葉をつかう。でも、姫子にとっては、他人に聞かれることが照れくさいのか、少し人騒がしいロビーに向かい、その音にまぎれ、いつも私をチラチラと見ながら電話している。
しかし、今日の彼女は私ではなく、私のずいぶん後ろが仕切りに気になっているようで、
私は、後ろを振り向いて、姫子の代わりに姫子の気になっている何かを探した。
私「(彼女がこの瞬間を後回しにしないように、たまには、助けてあげよう)」
ロビーは、よく混んでいて待ち合わせ以外にも、詩人の無許可のコンサートやテーブルを貸し切って恋愛についての詩を披露しあっていた。大体が妄想だと思う。見栄の張り合いだ。大体みんな恋愛の話をしている。怖い怖い。
そうと考えを巡らせながら、ガラス越しに照らされている何かに夢中になっている私もいる。
光が差していて、まるで後光が差していると言うか。いや、ただ、その何か自体も白すぎて光に埋もれているだけなのかもしれない。
気がつくと姫子が電話を済ませて、それに気づかない私の髪をわしゃわしゃとわざと触りながら、光に埋もれた何かに突っ込んでいった。
私は、三つ編みにしているので、いつものように編みなおす。その間に姫子に捕らえられた何かが、声を上げて姫子とこちらに向かってくる。
?「わわわわっ」
姫子「はい、可愛い娘Get〜」
姫子は、光の中から片目に包帯を巻いた女の子を連れ出してきた。しかも、その包帯を引っ張ると言う強引で豪快かつ強者の立ち振る舞い。単純に可哀そうだ。
私「(お姫様がギャルになるとこうなるのか)」
姫子「よく同じ学年の講義で見かけてたから、気になってだんだよね、あたしは姫子。こっちの子は、ゆめめ。あなたの名前は?」
「あ、え、えーと、その...まゆ... です。」
姫子「まゆゆじゃーん!ねっ、ゆめめんっ♪」
ゆめめ「そ、そうだね。まゆちゃん、急にウチのギャルがごめんね、大丈夫?」
まゆ「いえ、こちらこそ、ごめんなさい。こういうの、えーと、慣れてなかったから、驚いちゃって」
ゆめめ「(急に包帯を他人に引っ張られることに慣れている人はいないと思うかな。)」
姫子「(ハッシュタグ) #マブダチ の予感っと」
ゆめめは、まゆをじっと見つめた。
ゆめめ「綺麗な目だね。4月の目。」
まゆ「え!、4月の?、あ、ありがとうございます」
まゆは、そう言われると恥ずかしそうに顔を赤らがめる。
それに唇も少し血色がよくなって、頬から鼻に橋をかけたそばかすと相まって、プロのメイクをしているような鮮やかで温かい顔になった。
その化学変化を目の当たりにしたゆめめは、鼻から息を目一杯吸い込み体を大きくさせながら、ゆめめも赤ら顔で興奮し始める。
ゆめめ「可愛い!!推せる!ね!姫子!」
姫子は、三日月くらいに湾曲したスマホに夢中で見ていないが、ゆめめにグッドサインを突き立て同意した。
姫子「それな。推せる。マジで。ところでその包帯どしたん?」
ゆめのが敢えて、触れなかった箇所を出会って、数分で触れる姫子。ゆめのが一瞬凍りつくが、続けてまゆの片目をしっかり見て、話出した。
姫子「あたしね、強いから、なんか悩み事とか、あったら私に言うんだよ!」
姫子はギャルになる前に、レディース(女性だけで結成された不良軍団)にいたらしい。
とことん社会に反抗していたのは、育ててくれた義理のおじいちゃん、おばあちゃんを守るため。束縛される未来への交渉のカードとして築いて来たんだとか。ずいぶん先を見て、不良になるなんて矛盾しているような。
姫子には、この先の何をみているのだろう。
今は、まゆの包帯を見て、姫子の心に火がついたんだと私は理解している。
まゆ「あ、ありがとうございます」
姫子「敬語はいらない、いらない」
ゆめめ「うん、そうだね」
まゆ「ありがとう。姫子さん、ゆめめさん」
姫子「さん付けもいらない」
まゆ「は、はい」
姫子「はいの返事も敬語じゃなく... ...」
ゆめめ「何も言えなくなっちゃうよ!」
姫子「たしかに、それな。あっははは」
私も まゆも姫子の笑いにつられて笑う。
姫子「ははは、それでその包帯どしたん?事故った?」
ゆめめ「姫子、ここはゆっくり段階を踏んでから、まゆちゃんの言いたくなったタイミングで聞こうね、ねっ、まゆちゃん」
まゆ「本当に、お二人のお友達になってもいいんですか?あ、いえ、なっていいの?」
姫子が急に立ち上がり、まゆの髪をわしゃわしゃと触る。ついで、ゆめめの頭もわしゃわしゃする。
ゆめめ「ねーっ!また三つ編みを編み直さないといけないじゃない!」
姫子がにっこり笑い、姫子のお尻の三日月もそれに合わせて光った。
姫子「ねぇ、ゆめめ」
ゆめめ「なにー?」
姫子「4月の目って何?」
つづく