Seven Questions#17 マーク・マクローリン(Palo Alto Networks)
原文はこちら ※原文は2018/10/3のものです
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マーク・マクローリンは、Verisignや最近ではPalo Alto Networksの社長兼CEOを務め、Palo Alto Networksでは6月で退任するまでに同社をセキュリティ業界の世界的なリーダーとしての現在の地位まで導きました。
元兵士であり、弁護士であり、スタートアップのVPとして、マークは人生の細かいプランを立てるのではなく、リスクを取り、新たな方向性を模索し、そして「本当に重要なことは何か」というシンプルな問いに答え続けることが大切だと言います。
Q1. あなたがこれまで学んできたことの中で、日々大事にしていることはなんですか?
キャリアの比較的後半になって、1日が始まる前に15~20分ほどの静かな時間と、30分のエクササイズの時間を取り始めました。私は特に、静かな時間がとても大切だと思っています。私はお祈りをしますし、ある人は瞑想をしたりします。ただ座って思考を整理するだけでいいのです。しかしもしあなたがそれらを無視して、寝てる間に溜まった洪水のようなメールに直行すれば、緊急性という暴君にあなたの1日はのっとられてしまうでしょう。
これに抵抗するのは大変です。もしあなたがテック業界にいる多くの人のようにイケイケで、アクション第一の人だったらなおさらです。しかしもし私が1日を平和的に始められれば、そういったメールの大洪水に潜った時もより考えた上で返信をすることができます。口調もより柔らかくなりますし、前日の夜に頭を抱えていたような意思決定も、突如としてよりクリアになるのです。朝の少しの時間をとるだけで、私は実際に仕事や人生をよりうまくコントロールできるようになったと思います。
Q2. 起業する人に何か一つアドバイスをするとしたら、どんなアドバイスをしますか?
あなたがすることで最も重要なことは、自分の会社のリーダーたちを選ぶことです。それが、チームのコミュニケーションの方法や、物事をうまく片付ける方法など、あなたの会社の文化全体のトーンを決めるのです。新しいリーダーを探している時、私はまず価値観から始めます。その人の強みやスキルは非常に重要なことですが、あなたの価値観に沿わない人は、たとえどれだけ仕事ができたとしても、組織を助けるよりもむしろより傷つけてしまいます。
真の誠実さや人格がありつつ、人を名指しで批判したりプレッシャーの元でやる気を失わないようなリーダーを見つけるのはとても難しいです。あらゆる人が自分はそういう人間だと思っていますが、あなたは実際にそういう行動や振る舞いをする人を見つけなければならないのです。私は大抵誰かにあった直後か、会う前の紹介から始めますが、それは彼ら自身が提供してくれる紹介を意味しているわけではありません。あなたが少し努力すれば、舞台裏の人間関係とつながることができますし、そういった会話からは多くのことを学べます。
もう一つ、私が昔小さな組織にいた頃にやっていたことは(これはクレイジーに聞こえるかもしれませんが)、リーダーを雇う前に彼らの家の夕食にお呼ばれすることです。誰かの家族に会った時、彼らが何に価値を置いているのかを観察し、壁にかかっている写真について尋ねてみながら、彼らの本当の人となりを知ることから始めるのです。
Q3. どんな小さな変化が、あなたの人生に大きな違いを生みましたか?
境界線を引くことです。朝に少し時間を取ることも、旅行の予定を確認することも、全体の時間の中ではちょっとした変化ですが非常に大きな影響を与えてくれます。仕事熱心な人にとっては、仕事が生活の全てになってしまうことは当然のことですし、私もそれで苦労してきました。しかし、私には3人の子供がいますが、たとえ1日の中でできることが家に帰って彼らを寝かしつけることが精一杯だったとしても、その20分は何もしないよりましだと思います。
2008年に初めてPalo Alto NetworksのCEOを打診された時、私はとてもそれをやりたいと思いました。人生で一度あるかないかの機会だと思ったのです。しかし私たちはバージニアに住んでいましたし、妻のカレンや子どもたちは真っ当な理由で引越しに反対しました。彼らの生活は全てその場所で完結していたからです。結局数年後にもう一度チャンスをもらうことができましたが、その時には子ども達もカリフォリニアに憧れる10代になっていました。しかしその最初のオファーは受けることができませんでした。家族にとってそのタイミングは正しくなかったと思いますし、もしあなたが野心的で成功したキャリアを持っているけれど、それがあなたのパートナーや家族との関係性を犠牲にして手に入れたものだとしたら、私はFを手に入れるべきだと信じています。家族が全てなのです。
Q4. あなたが知らないことで、知りたいと思うことは何ですか?
とてもたくさんあります。歳を取るごとに、自分がいかに無知であるかを痛感します。特に人についての話は顕著です。私たちは誰かについての結論をデータに基づいて導き出そうとしてしまいがちですが、概してそういったデータは不完全なものです。私は以前、人は会社から別の何かを求められている時に、どのように何か一つのことに集中できるのかということをを熱心に考えていましたが、彼らの母親がホスピスに入っていたり、先月は子どもの特殊な症例のために医者を探し回っていたりしたということを知りました。家族や友人、趣味、夢など、人は仕事の外にも生活があります。あなたが誰かについてどれだけ知っていると思っていても、全ては知らないのです。
それは、挑戦してみろということでもあります。大抵の人は、あなたが単純に彼らがどのように生活しているのかを聞いたら快く教えてくれます。しかし、あなた自身もより心を開いていることが重要です。相手の間違いや失敗を判断するのではなく、共感から始めるのです。疑念に対して考えうる限りのメリットを彼らに提供した時、あなたの考え方も変わるかもしれません。
Q5. 今あなたの枕元にある本はなんですか?
セラノスについてのジョン・カレイロウの『Bad Blood』を半分くらい読んでいます。基本的には、欲望と野心が真実と善良さの邪魔をして、それに続く列車が暴走してしまったという物語です。ロバート・カーソンの『Shadow Divers』という本も読み終えましたが、面白かったです。ニュー・ジャージー沖に沈んだ正体不明の沈没船に出くわしたダイバーのグループの話で、後々になってその船が第二次世界大戦中のドイツのUボートであることがわかります。ネタバレはしませんが、とても面白い本です。
全体的にノンフィクション、特に歴史物により興味があります。事実は小説よりも奇なりですし、地政学や事業、個人の振る舞いからは非常に多くのことが学べます。どんな困難にもかかわらず、正しいことをして人格とリーダーシップを発揮した人々。こういった物語は時代を超えて語り継がれるものです。
Q6. あなたが、自分が何かについて間違っていると気づいたのはいつですか?
ほぼ毎日ですね。データが全て揃っているということは稀なので、難しいのは何かを決める前にどれくらい必要なのかを判断することだと思います。これは非常にシンプルですが、にもかかわらず普段即座に決断することはできません。より情報を集めたり、異なる視点をヒアリングします。最終的には、直感に従うこともしばしばありますが、たくさんの情報を集めた上でのことです。
決断の結果をどう扱うかするかも同様に重要です。もしあなたが正しい決断をしたなら、全員にそれを周知する必要はありません。しかしもしあなたが間違ったら、まず真っ先にそのことを皆に伝えなければなりません。人はあなたに、常に正しい意思決定をすることを期待してはいません。それが自分の仕事だと思っているCEOは、自分自身にプレッシャーをかけすぎて信頼を失ってしまうだけです。自分の失敗に正直になれば、もっと先に進むことができるでしょう。
Q7. あなたにとって最も重要な時間の単位は何ですか?またそれはなぜですか?
いくつかのレベルに分けて考えられると思います。CEOとしては、次の四半期か次の3年でしょう。しかし私の性分としては大きな絵、永遠の時間や少なくとも人生の全てについて考えます。そういう意味では、今日の午後何をするかは非常に重要になってくると思います。人をどの様に扱い、どの様に決断し、そして突然のことにどんな優先順位をつけるのかは矢面に立ってくるでしょう。長い目で見れば、自分が何者であるかが重要なのです。
私は長い目で見て、Palo Alto NetworksのCEOを完全に退任することを決めました。私の一番小さい息子は8歳で、私は彼ともっと時間を共にしたいと思っていました。旅行やディズニーランドなどの大きなイベントをねじ込むことはできますが、それらは最終的に自分の人間関係を気付いたり子どもがどんな風に成長するのかを知る手段ではありません。それは日々の行動です。壮大な計画の中では、仕事はただの仕事なのです。
Hard-won advice(努力して得た教訓)
1. Values before competency(強みよりも価値観を見よ)
2. Start with empathy(共感から始めよ)
3. Family is everything(家族が全てである)