Seven Questions#16 トッド・マッキノン(Okta)
原文はこちら ※原文は2018/9/26のものです
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トッド・マッキノンは、数百万の個人と数十万の企業に使われているクラウドIDソリューション「Okta」の共同創業者兼CEOです。昨年、彼はOktaを2017年で最も成功したテックIPOの一つにまで導き、また一流アスリートが競い合うCrossFit Gamesにおいて、「地球上で最もフィットネスな人間」のトップ15にランクインしました。
Q1. あなたがこれまで学んできたことの中で、日々大事にしていることはなんですか?
Oktaが大きくなるにつれて、会社の文化に影響を与えることが成功するCEOの役割の大きな部分を占めていることに気づきました。すなわち、あなたの日々の行動はあなたがチームに求める行動と一致しなければならないということです。コミュニケーションスタイルにも同様のことが言えます。例えば、もしあなたがスピード感のある文化を作りたいのなら、成果物を頼むときに半年間のリサーチプロジェクトなど求めていないことを明確にする必要があります。あなたは「3つの選択肢を絞ってきてもらって、それから詳細について詰めていきましょう。明日はどうですか?」と言わなければならないのです。
毎日の振る舞いもまた、コミュニケーションの一部です。他の人に親切にしていますか?他の人に敬意を表していますか?全社会議や主要なアナウンス、ユーザーカンファレンスなど、私たちは大きな物事についてとても頭を使っていますが、実際のところ、それらはあなたが会社の文化に影響を与える方法ではありません。会社の文化に影響を与えるのは、小さな、日々の細かな出来事であり、長期にわたる着実な進歩です。日々のあなたの行動こそが、大きな変化をもたらすのです。
Q2. 起業する人に何か一つアドバイスをするとしたら、どんなアドバイスをしますか?
長い時間がかかりますが、それで大丈夫です。いわゆる「一夜にして得た成功」も、そこに至るにはしばらくかかっているものです。古い言葉で、「千里の道も一歩から」というものがあります。私はいつも「千里の道は、千里がどれくらいの長さか知らない人から始まる」と言っています。もしあなたがそれを知っていたら、きっと始めないでしょう。
私にとって最も辛かったのは、それがどれくらいかかるものなのか、上手くいくのかどうかすら分からない時でも、実行し続けなければならなかったことです。今まで全く体験したことのなかった、疑念と不確実性に慣れなければなりませんでした。私はコンスタントに成長する良い企業で働いたことはありましたが、CEOをやったことはありませんでした。企業で働いていた時は、全てが自分の責任になることはありませんでした。Oktaを創業してからは、全てがはっきりしていなくても、気にせずとにかく進み続けるということを学ぶ必要がありました。
Q3. どんな小さな変化が、あなたの人生に大きな違いを生みましたか?
早いうちに、私と妻はいつも家族で夕食を取ることを決めました。私がOktaを創業した時私たちの娘は6歳で、その1年後に息子が生まれました。私には夜の11時まで仕事をし続けるような生まれつきの慣性が働いており、一緒にご飯を食べるという宣言がそれを上手く制御してくれているように思います。私は子どもが大きくなるにつれて後悔が増えるに違いないと思っていますが、毎晩夕食時にそばにいたことを後悔することはないと思います。
Q4. あなたが知らないことで、知りたいと思うことは何ですか?
何が過大評価されていて何が過小評価されているのか、つまり本当に私たちを健康で幸せにしてくれるものは何なのかを知りたいです。もしくは、ビジネス的な観点で言うと、どんなテクノロジーが予想を上回るほど盛り上がり、逆に予想したほどは盛り上がらないのかを知りたいです。株を買うのに似ていますね。もしあなたが素晴らしい会社を見つけたとしても他の人も同様にその会社を素晴らしいと思っていれば、それは役に立ちません。同じことは多くの人が弱いと知っている会社にも当てはまります。真のチャンスとは、あなたが他の誰よりも先に良い何かや、悪い何かに気づいたときにやってくるのです。
例えば私がOktaを創業したとき、多くの人がクラウドコンピューティングは過大評価されていると思っていました。今ではどちらかと言えば過小評価されていたことが明らかになったと思います。今現在、私が最も知りたいと思っているのはブロックチェーンです。仮想通貨が過大評価されていることは分かっています。しかしブロックチェーン技術そのものに関してはまだ確信を持てていません。誇大広告には必ず理由がありますからとても難しいですが、それは決して全くの出鱈目でもありません。しかし、もしあなたがノイズの中から確かな信号をキャッチすることができれば、あなた自身やあなたの会社、あなたが使っているツールを差別化できるチャンスです。
Q5. 今あなたの枕元にある本はなんですか?
直感的な思考プロセスと論理的な思考プロセスの対立について書かれた、ダニエル・カーネマンの『Thinking Fast and Slow』を読んでいます。世に出てから数年経っており、この本に影響された多くの記事やブログを読んできましたが、やはり原典から綺麗にまとめられたものは良いです。
私は業界ものを読むのも好きです。ちょうどジャッキー・マクニッシュとシーン・シルコフの『Losing the Signal』を読み終えました。BlackBerryの興亡について書かれた本です。エリック・シュミットとジョナサン・ローゼンバーグの『How Google Works』も読みました。この本では、Googleがいかに技術的に優れているか、そしてボトムアップの意思決定を促すためにいかに人々をエンパワーメントしているかについて良い事例がたくさん載っています。そのうちのどれくらいがGoogleが実際に取り組んでいることで、どれくらいが彼らがGoogleに期待している取り組みなのかは分かりませんが、どちらにせよ私の考え方に影響を与えました。
私はいつもノンフィクションを読みますが、最近読んだデヴィッド・ベニオフが書いた『City of Thieves』と言う小説は良かったです。第二次世界大戦中のレニングラード包囲戦のロシアが舞台です。私の世界とは真逆の世界という感じでしたが、その時代にその場所にいたかのように感じさせてくれるほどよく書かれています。
Q6. あなたが、自分が何かについて間違っていると気づいたのはいつですか?
あなたはどれくらい間違えたことがありますか?私はいつも何かを間違えますが、最も重要なのはタイミング、つまり「いつ自分が間違ったと認めるか」ということだと思います。あなたは説得するのが難しい人間であるべきです。さもなければ、たとえ相手側が正しかったとしても、物議を醸すような議論に固執しなくなってしまうからです。ただ、頑固すぎるというのも考えものですが。
Oktaの創業当初、私たちは使いやすいSMBプロダクトを作ればいいだけだと思っており、それは軌道に乗ると思っていました。しかし1年挑戦し続けてもさっぱり軌道に乗りませんでした。なので私たちは注力事業をシフトさせ、より高性能な市場へ参入しました。そのときは、私たちはある程度の柔軟性があったと思います。なぜなら、もし私たちが方針転換したとしても、全てを投げ捨てて振り出しに戻らなければならいわけではないと知っていたからです。決断を下す前に、自分たちが間違っていることを完璧に受け入れるだけの時間がありました。しかし、もし私たちが180度異なる方向へ方針転換しなければならなかったとしたら、もっと早くギアを変えなければならなかったでしょう。
Q7. あなたにとって最も重要な時間の単位は何ですか?またそれはなぜですか?
私にとって最も重要でないこと、つまり中期的なことから始めます。少なくとも2~3年後のことは考えていないといけないというプレッシャーが、特に株式公開後などはあるように思います。しかし、私は3~5年の計画がそこまで有用だとは思っていません。私たちの具体的なプロダクトプランは、大抵数ヶ月のスパンでしか立てられていません。
超長期と超短期というのもとても重要です。あなたは自分の究極的な目標、すなわち向かっているビジョンが分かっている必要があり、さらにそのビジョンに対して自分が今日、明日、そして来週何をするのかを確認しなければなりません。今日や明日の行動が、長期的なビジョンに紐づいていますか?もしそうでなければ、他のことをするべきです。
Hard-won advice
1. Set a cultural example(文化を体現せよ)
2. Timing matters(タイミングこそが重要である)
3. Get comfortable with uncertainty(不確実性に慣れろ)