【LC第3節】vsG大阪戦 2022鹿島アントラーズ 9歩目
両チームのスタメンは以下の通り。
鹿島は守備に関しては従来通り4-4-2の陣形で、前にベクトルを向けて守る。
ただ攻撃時にはこれまで無かった形にチャレンジ。
チームがボールを持てば、FWの位置で守っていたアラーノが降り、CHで守っていた和泉が前に出る。
さらに仲間とカイキが従来のSHよりも外に、そして深く位置取ることでWGのような役割を果たし、以下のような4-1-2-3の形へと可変した。
対するガンバの基本陣形は5-4-1。
ボール保持時では、鹿島の4-4-2ブロックからズレる3-4-3化することで、大外のWBを前進ポイントに設定。
大外WBの所まで鹿島がSBを前に出して守れば、それによって空いた裏のスペース目掛けてFWが飛び出してガンバ4人vs鹿島3人の好機を作り、
鹿島がSBを前に出さずに守ればWBの所からゆっくり着実に前進
という以下のような形に。
鹿島はヴァイラー体制になってから、より顕著に迷わず前にベクトルを向けてアクションを仕掛ける守り方を採用している。
発想としては、迷ったり下がる事で最終的に前進を許すくらいなら、ためらわず突っ込んで前で潰す、もしくは潰しに行く事で得られる時間を使って、最終ラインが調整して攻撃を凌ぐという考え方だ。
なのでこの日も実際には、ガンバの大外WBに対して、鹿島はSBを迷わず前に出して対応。
これがガンバの試合開始早々の先制ゴールへと繋がる。
前半3分のガンバのゴールシーンの構造は、ほぼ先ほどの図のまま。
ガンバの右WB小野瀬(ボールホルダー)に対して鹿島は左SB安西を前に出して捕まえに行くが間に合わず、そこで発生したズレを調整するためにCB健斗が大外まで飛び出して行くも、ここでもせき止められず。
そのあと結局藤春のヘディングシュートがポストを叩き、それがパトリックの正面に転がって押し込まれて失点するわけだが、そもそも藤春へのクロスが上がる瞬間に鹿島側ペナルティエリアで鹿島2人vsガンバ4人という状況になっている時点で構造としてやられており、「アンラッキー」として処理するのは難しいかなと思う。
とはいえ、鹿島の判断のラグを削ぎ落して前に飛び出す守り方が悪だと言うつもりは全くない。
あくまでこの場面ではこの守り方によるメリットを出せず、デメリットだけが出てしまったというだけで、直近の数試合ではむしろその逆、つまりメリットが出ている場面の方が多かったくらいだ。
なので今後に向けて守り方自体をなんとかしなければいけないとまでは思わず、あくまで修正は微調整で良いかなと思う。
今後の相手はこのように鹿島の守備を引き込む方式を採ってくる可能性が高いので特に、どの深さまでDFを前に飛び出させるのか、そしてその場合の後ろの調整についての所が対象になってくるかなと。
守り方的に「CBがやられない」のは前提になっちゃうけど、健斗関川なら問題無いと思ってるので、それ含めてやっぱり微調整で良いと思う。
そうしてガンバは早々にリードを奪ってから、それ以降守備ラインを下げて5-4ブロックを敷いて振る舞ってきた。
そうなれば展開としては鹿島が押し続ける展開に。
そこで気になるのが前の試合で上手く行かなかった押し込んでからの攻撃。湘南戦ではバイタルを活用できず相手の守備ブロックを困らせる事ができなかった。
しかしこの日の鹿島の攻撃はかなり整理されているように感じた。
最も大きく作用していたのは、攻撃時に上手く機能させられず宙ぶらりんになってしまう場面が多かったSHの選手に、WGムーブをさせた点だろう。
これによって、「誰がどこを突くのか」がかなり整理された。
サイド深くでSHがWGムーブをする事で、タメを作るためにFWの優磨がゴール前を離れてサイドに流れる必要がなくなり、さらに逆サイドのSHがしっかりゴール前に入ってこれるようになるため、押し込んでサイドでボールを持った時に常に2人のターゲットがゴール前に待機できるように。
さらにSHが中途半端に下がったり絞ったりしなくなったことで、ハーフスペースやサイド攻略のサポートに誰が入るべきかなのかが明確になった。
湘南戦では和泉がトップ下として1人で両サイドに顔を出し、しかも宙ぶらりんのSHの出方を伺いながら振る舞う必要があったが、この役割をIHとして2人がかりで取り掛かる事で、常にボールのあるサイドでガンバの守備陣形の溝にポジショニングをとって相手守備ブロックを困らせる事に成功していた。
先制されて試合再開直後のプレーから、さっそく良い形が見られる。
4:30から。
左CB健斗から右SB常本へのスキップパスで相手ブロックを横に振り、右サイドからの攻撃開始。
ここで右SHカイキが、これまでの鹿島のSHにはないWG的な動きでサイド最奥で相手WBをピン止め。相手WBが出てこれないことで空くガンバ守備の溝に、IHのアラーノが顔を出してパスを受ける。
そこから無理してゴールに迫らずとも、溝を突かれたガンバ守備はブロックのバランスを崩してそこのケアに回る必要があるので、鹿島はそれを見てから今度は左サイドからの攻撃を狙う。
今度は左SHである仲間がこれまた降りるのではなく最奥を狙うバックドアの裏への飛び出しを見せ、今度は溝にIHの和泉が入る。
7:45も同じく。
またも左CB健斗から右WGのカイキへとナイスフィード。(あとシンプルに試合通しての健斗の左CBとしての判断と精度がめちゃくちゃ高い)。
今度はこの溝にSB常本が入ってきて落としを回収。
湘南戦と異なりこの日は2人体制で分担してるおかげで、その瞬間すでにアラーノがハーフスペースで受ける位置に入ってこれてる。
このサイドでのSB+IH+WGの3人による連動、この流れがとにかくスムーズだった。
結果的に前半はゴールを奪えず終えてしまうが、個人的には湘南戦より遥かに良い攻撃が展開できていたと感じた。
ガンバの守備を崩すために、誰が、どこに入って、何を狙うのか?の整理に関しては、湘南戦からの6日間で明白に進歩を見せたなと。
本当に少し、もう少しの所の精度とタイミングと慣れが足りなかっただけ、という印象だ。
11:00からの一連の攻撃からもかなりの整備を感じる。
まず左SB安西にボールが入り左サイドで攻撃開始。
すぐさまIHアラーノが溝を突く動き。そうして押し込んでから逆の右サイドへ展開し、さらにまた左サイドへ振り直すことでガンバのブロックをズラす。
そこからまたも逆サイドの右サイドに展開。ここまで振れればガンバはスライドが間に合わない。
大外で常本がフリーでパスを受け、そこからカイキがペナ角で受けるためにバイタルを使う動きを見せる。
結局常本はクロスを選択し、これがアラーノに通ってシュートまで行くが、これも形としてはだいぶ良い。本当に個人単位で細かい所が足りないだけ。
以下の図は左右逆だしこのシーンとは状況が違うけど、つまりはこういうこと。ここに常に和泉orアラーノ、もしくはプラスαで樋口が出てくる事で、ただクロス放り込むだけの攻撃ではなく良い攻撃になっていたように感じたというやつ。
14:40からも良い。
相手ゴールキックの流れから、左WGの仲間が相手の右CBの柳澤を連れ出す事で、DFラインにズレを起こして、そこを突ける位置にちゃんとアラーノが居て、パスを受けてから一気にスピードアップして押し込む。
そしてまたも左→右→左サイドと相手陣地で振り続け、そこから左CB健斗がまたナイスフィードで逆サイドの右WGカイキめがけて良い判断でフィード。
そして右サイド奥深くまで侵入してから、今度はもう1人のIH和泉がバイタルでパスを受け、湘南戦のレビューでまさに作図していたような形で角度のあるパスを繋ぎペナ角を攻略し最後は樋口がシュート。
23:10からも同様。ペナ角でIH和泉が受けて角度を作って縦パス。
まさにこれをするために、あそこに人が入ってくる必要があるんだよなという感じだった。
暇な人は、先制されて試合が再開した前半4:30~前半16:00の10分間ちょいだけでも見返して欲しい。
WGとIHの設置によって、とてもうまく攻めれるようになってるので。
良いシーンを列挙してたらキリがないのでこの辺で。
それとここにほとんど名前が出なかったが、やはり樋口の活動範囲とその効力は凄まじかった。
試合を通して、場所を選ばず寄ってって効いて、寄ってって効いてをひたすらずっと繰り返してる。恐ろしい。
それと反対に、ここまで攻撃が整理されると、SBからもう一工夫あるボールが供給されればなとか、そういったところが気になるようになってくる。
ここから面白いボールが出てくるようになれば、何年も何年も苦しめられてきた撤退5-4,5-3ブロックを敷かれても怖くないと思える。
こうして良い攻撃を続けた結果、前半終了間際に惜しいチャンスを作り相手ゴールに迫る。
しかしガンバがそこをギリギリで耐え、前半は0-1で終了。
バック側の副審の基準が緩いとわかるや否や、それに合わせてガンガン腕使って笛吹かれないまま相手を跳ねのける守り方をしてきた昌子は、場数とか諸々さすがだなと思わされた。
そして押し込み、それも良い形を作れながらもゴールを奪えなかった鹿島としては、これは正直嫌な展開。
しかもここまで2戦終えて0勝1分1敗と、勝利が欲しいこのルヴァンカップのグループリーグ第3節。
このスコアのまま進行していけば、時間の経過とともに焦りがマイナスな要素として働き始めるところ。
だからこそあそこでセットプレーで追いついたのは大きかった。
後半7分、樋口のコーナーキックから健斗がヘディングを叩き込み同点。
樋口の速くて低い、GKから見て遠い所からゴールへ向かってインサイドに巻くファーへのキック。そしてマーカーを振り切ってこの雰囲気を断ち切るゴールを沈めた健斗。どちらも最高。
それから鹿島は前半から色んな所に走って顔を出し効いていたアラーノを下げ中村を投入し、和泉を右SHに。代わりに樋口がCHから前に出てIH化する形をとった。
これにより優磨の1FWではなくカイキとの2FWに。
ただ優磨が基本左で待つような形になったため、前半通して2人がかりで取り組んでたIHムーブは、樋口と仲間で担うような形となった。
そして後半20分、ここも健斗のナイスフィードでのエリア獲得から、
WG和泉+IH樋口+SB常本の3人によるスムーズなサイド攻略に取り掛かる。
一度クリアされるものの前線で回収しなおしすぐさま2次攻撃。
右からの樋口の素晴らしいクロスを、左で待ってた優磨が合わせて鹿島逆転。
どこまで指示があったのかわからないが、アラーノ→中村の交代を踏まえて、これほどまでスムーズに右に樋口が寄っていき起点となって攻撃を作り、優磨がそれを決めるため左で待つようになり、それに潰されないよう仲間がWGムーブを辞めてIHムーブにスッと移行したのには驚かされた。
後半3分くらいにアラーノが交代したので、もしかしたらハーフタイムに指示が合ったのかも。逆にいえばそうでもないと移行があまりにもスムーズ過ぎる。
まぁどっちにしろ凄い。
コーチングスタッフ陣がハーフタイムに選手達にこの選択肢を与えたにしても、選手達がピッチ上でこうした方が良いんじゃねで移行したにしても。どっちにしろ凄い。
そして明らかに気持ちが入ってた優磨がここで逆転ゴール決めるあたりも素晴らしい。
健斗も、優磨も、本当に勝たせる選手の空気が出てきた。
そしてやっぱり樋口のクロスが素晴らしい。
前半はアンカーとして自陣ペナルティエリアから相手ペナルティエリアまで走り回って利き続け、後半はIHムーブで4アシスト。圧巻。1000点。凄すぎる。
その後、前半3分にリードを奪ってからの約70分引くサッカーをしてきたガンバはここからギアを急に上げることができず。反対に鹿島は勢いを増し、再びコーナーキックで樋口の素晴らしいキックから、パフォーマンスが徐々に上がりこれまた雰囲気が出てきた5番関川がゴールを決め、小田が復帰を果たし、最後は優磨がハッパをかける染野がまたもや樋口の蹴るセットプレーからヘディングを沈め追加点。
4-1勝利。
最高。
セットプレーに関しては、もちろんキックも重要だし、中の選手がマーカーを振り切るもしくは上から叩く能力があるかも重要だけど、やはり決まる時は決まるし決まらん時は決まらんので。
良いチャレンジと取り組みの成果を前半に出せた事が生んだ追い風という事で。
次も勝つ。
以上。