Bチームで過ごした日々。就職編


楽なことばかりじゃないが幸せの味を覚えると全てを犠牲に出来るほど物事に取り組める。

1割のひと時と9割の努力。
楽しい時間はあっという間で苦しい事の方が多い。
人生は選択の連続。
人は選ばなかった道を過大評価するが選んだ道を正解に変えていけばいい。

例え自分が選んだ道が行き止まりだったとしても急がず回り道をしてたどり着けば良い。

簡単な道は1つも無い。
みんなが人生の主役で主人公。

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全国大会から沖縄に帰ってきた僕は学業とバイトをする普通の専門学生。
部活で培った負けず嫌いな気持ちは当時、居酒屋でバイトをしていた接客に生かされた。
業績は申し分ない。
他のスタッフには負けたくなかったのだ。
元々、人と話す事は好きな方でおしゃべりな性格はホールスタッフにもってこいだった。


全国大会を終え専門学校での部活動生活を終えた後、沖縄の社会人チームであるクラブチームに先輩の紹介を介して所属することになった。
僕が所属させてもらったチームは古豪のチーム。当時僕が高校生だった頃は県のチャンピオンを常に走るチームだった。
チームは主力選手の移籍により低迷。若返りをする中で再建を図ったのだ。


初めてのクラブチームでの県大会はベスト8に終わった。
4強との差は歴然としてて、古豪復活とはならなかったのだ。
そんな中、また一つ上のレベルでバスケをしていく中で感じた事が"とても楽しい"。

負けはしたものの小学生の頃に感じたあの何しても楽しい感覚にとても似ていたのだ。
バスケめちゃくちゃ楽しい!!
自分が成長しているのが自分で分かったのだった。
まだまだ上手くなれる。もっと上手くなりたい。クラブチームで強いチームに勝ちたい。

出てくる感情もあの頃と似た感情だった。

それからの僕はと言うと、バスケとトレーニングとバイトのサイクルで毎日を過ごしていった。

今振り返ってみると、バスケを中心に考えて時間を使うようになったのはこの19歳の頃からだった。

知識はなくどこをどう鍛えていいのか分からないが、高校の頃に出会ったトレーナーに教わったトレーニングをベースに思い出しながらトレーニングをこなしていった。

バスケの練習はと言うと、当時はまだバスケの発展はしておらず、スキルワークという事もまだ進んでなかった為シューティングをメインでワークアウトをしていたのを今でも覚えてます。

どんどん自分が上手くなる実感にどんどんバスケにのめり込んでいく。

そんな中、高校の頃に出会って今でも親交が深い"並里成"とトレーニングをする事になった。

海外挑戦でアメリカと日本の行き来をしていたナリトはオフシーズンで沖縄に帰ってきたのだ。

中学生の頃、僕はサッカー部だった為、ナリトがどれだけ凄い人かは当時、認知しておらず明るい性格だった僕はナリトの兄、タスクと仲良い事から仲良くなるのにそこまで時間はかからなかった。

バイトの無い日は、オフシーズンで帰ってきたナリトとトレーニングを一緒にする機会が増えていった。

プロの世界で活躍する選手と高いレベルのトレーニングを一緒にできる事は僕にとってこれほどでも無いぐらいの学びと至福のひと時だった。

この人と一緒に練習すれば確実に上手くなると確信が持てたのだ。

学びはトレーニングだけでは無い。バスケに向き合う精神論、身体を大切に扱うケア、メンタル、技術はもちろん選手としての在り方を一つ一つ噛み砕きレクチャーしていくナリトに無我夢中でついて行ったのだ。

確実に上手くなってる。

これでクラブチームの4強と張り合える。

しかしまたしても大会はベスト8に留まった。

悔しい。また勝てなかった。

チームは負けはしたものの、前回との違いが僕個人沢山あったのだ。

マークはキツく、警戒される選手になったのだ。
前回大会になかった感覚を今回は味わった。

少しずつ成長している。
自分が上手くなっていくのがとても楽しかったのだ。

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学生生活を過ごしていく中で、専門学生を1年で終了し、就職活動の時期を迎えたのだ。

当時の僕は物凄くアパレルに興味がありアパレル関係の面接を複数受けたのだ。

個人面接、グループ面接、書類審査、2時審査。
どれもこれも初めての経験で社会を目の前に自分が大人になってく感覚が当時あった。

結果を待つ僕は常にナーバスだったのを覚えてる。

一社。そしてまた一社。もう一社。

ことごとく落ち、就職活動で受けた面接は合計で5社。

全て落ちたのだった。

自信をなくし、バスケどころか先の将来が見えなくなった僕は深く落ち込んだ。
意欲もなく、好きだったバスケさえ手につかなかった。
周りを見渡せば、次々に決まる就職先。勉強に打ち込む学生。

焦りが止まらない僕は不安が襲ったのだった。

好きな事はバスケットボール。
興味があるのはアパレル関係。

したい事、やり甲斐を感じるものが見つからなかったのだった。

当時落ち込んでいた僕に1通の連絡が入った。
その相手は琉球ゴールデンキングスに所属する"山内盛久"からだった。

盛久『何してる?ドライブしようぜ?』

僕『家にいるよ!行こう!』

小学校からの先輩で、小学校から親交の深い盛久からの連絡だった。

事あるごとに連絡を取り合ってはアドバイスを貰っていたのだ。

盛久『調子はどう?』

僕『面接全部落ちて凹んでる』

盛久『別にいいんじゃない?』

僕『・・・』

盛久『それだけが全てじゃ無いじゃん』

僕『・・・』

盛久『アラハビーチ行こうぜ』

僕『いこ!』

盛久が車で僕を拾い、その足でアラハビーチに向かったのだった。

アラハビーチに到着し、日が沈む海を見ながら語った。

盛久『お前最近バスケ頑張ってるよな』

僕『ナリトとトレーニングするのめっちゃ楽しいし上手くなってるのがめちゃ分かる!』

盛久『お前もプロ目指してみれば?』

僕『いやいや!オレそんなレベルじゃないしプロになれるわけがないよ』

盛久『いや、マジで言ってる』

僕『いや、絶対無理』




一度アパレルの会社に入社してプロを目指した自分のストーリーを僕に話してくれたのだ。

盛久『お前が本気で目指すならオレは手伝うよ』


プロを目指す。僕にとっておこがましい事だと認識していた。
生の声、肌感を知っている人からのこの一声に僕の心が少しずつ動くのだった。

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オフシーズントレーニングが進んでいく中、いつものようにナリトから連絡が来る。

内容はトレーニングする予定との事。
迎えにくるナリトをお家で準備して待った。

いつものようにパーソナルトレーナーが付き、高いレベルのトレーニングを行った。

トレーニングを終え昼飯を食べ、ナリトのお家で昼寝をする事に。

お家へ到着するとナリトが一言。

ナリト『キングスの練習にこの後行くからお前も来い』

僕『えっ!?!?!?』

ナリト『オレのリバウンドだけ取っとけばいいから大丈夫』

断る事が出来なかった。
なぜなら僕には車がないからだった。

それを見越したナリトの提案だった。

僕『部外者の自分が行ったら絶対怒られるって!』

ナリト『オレが説明するから大丈夫』

答えは既に決まっていたのだった。



気持ちを落ち着かせ準備を始めた。
練習会場に到着し、とうとうその時間がやってきた。

初めて見るプロの裏側だった。
普段試合で見る緊張感とはまた違った雰囲気だった。

ナリトがコーチに説明してナリトの自主練へのお手伝いの許可が降りた。

僕が何かする訳ではないがとりわけ緊張がおさまらない。
コートは2面押さえてありチームの練習が始まった。
僕はと言うと空いてるコートでナリトの自主練習のリバウンド、手伝いをしていたのだ。

練習が進んでいく中、コーチがナリトの元へ。
するとナリトは練習に参加する事になった。

僕の役目が終わりどうしていいかわからない。
なにかする訳ではないが緊張が収まらない。

舞台に座り練習を見る事に。
初めて見るプロの練習は全てが新鮮で刺激を受けた。

チーム練習が終わり選手達は自主練へ。
トップの選手がこんなにバスケに向き合うとは思ってもいなかった。
語彙力の無い僕は"すごい"以上の言葉が出てこなかった。

選手たちの自主練も終わり奥のコートが空いた。
リング下でドリブルをしながら軽くシュートを打っていた。

すると奥の方から当時アシスタントコーチに就任していた伊佐勉、むーさんが来たのだ。

むーさん『盛久から話しは聞いたよ。バスケしてるんだって?』

僕『はい。今ナリトと盛久のおかげでバスケがとっても楽しいです』

むーさん『本気でバスケしてみたい?』

僕『はい!やってみたいです!』

むーさん『キングスの練習生になる?』

僕『えっ!?僕でいいんですか?』

むーさん『履歴書を書いて明日持ってきて』

僕『はいっ!持っていきます!よろしくお願いします!』


後ろでニコニコ嬉しそうにしてたのは盛久だった。

後日、履歴書を約束の時間に球団事務所へ持って行き面接をした。

晴れて琉球ゴールデンキングスの練習生へとなる事が出来た。

まさか自分がプロ選手と行動を共にするなんて思ってもみなかった。

帰って両親に報告。

挑戦期間は1年だけ。
それを胸に秘め、これから始まる茨の道への挑戦が始まった。

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会社の面接に落ち途方に暮れた。
手を差し伸べてくれた友に救われ道は拓かれた。

どこで誰がどう繋がるかわからない。

見てる人は見てるのだとその時感じた。
ピンチはチャンス。


急がば回れ。

道は必ず拓く。

新城 真司

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