イライラ棒からゲームバランスを学ぶ
若い方でも「イライラ棒」というゲームや遊びはどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。1995年から2000年まで放送されていた「ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー これができたら100万円!!」というテレビ番組の中のチャレンジの一つで、正式名称は「電流イライラ棒」でした。
電流の流れた太い針金のコースに沿って、直径5cmほどの棒をコースに触れないようにスタートからゴールまでを目指すというものです。コースに触れると電流が流れ、爆破。ゲームオーバーです。細い隙間を慎重にそっと通す、でも時間制限があるから急がないといけない、、、イライラする、、、というのが名前の由来かと思います。
チャレンジ成功となると、「スーパー電流イライラ棒」「ウルトラ電流イライラ棒」とコースはどんどん難しく改良されていきました。また、ゲーム化もされ、プレイステーションやニンテンドー64で発売されていました。
イライラ棒を知ったのはこの番組が最初でしたが、その起源はもっと昔からあったようです。
こちらは大阪の「エレメカ研究所」というゲームセンターにある、イライラ棒の原点とも言えるものです。アメリカではカーニバルゲームという、日本で言うお祭りの出店のような形式のゲームが今でも多く、上記の写真と同じようなものは今でも存在しています。棒ではなく、リングではありますが、上から下までらせんの金属に触れないようにリングを通すことができれば景品がもらえるのが一般的です。(上記のお店では景品はもらえません。)
一見簡単そうに見えますが、このらせんは回転します。反時計回りに回るため、同じ高さでリングを操作しているつもりでも、気がつけば上に上にと戻されているという不思議な感覚になります。なので、見た目以上に難しいのです。
こちらも同じく「エレメカ研究所」にある「ワールドリング」というゲームです。右から左まで、リングを通せればクリアです。シンプルならせん型から進化(?)して、最初は緩やかなカーブで簡単ですが、後半は難しいというコースという概念が生まれています。
私がこのイライラ棒からゲーム開発者として学んだことはいろいろありまして、
コースの最初は簡単で、自分でもできそう感。
人がミスったところを自分でクリアしてみたいと思う気持ち。
イライラ感(ドキドキ感などの感情)をプレイヤーと見ている人が共感する。
ゲームのコースを考えたり、レベルデザインを考えたり、アーケードゲームのような人からも見られつつ遊ぶゲームを考える良いお手本だなと今でも思っています。
イライラ棒のコースと、ゲームのレベルデザインは似ているなと思うことが多いです。横スクロールアクションゲーム、例えばマリオもそうだと思います。
最初は誰でも「?」ブロックを叩き、クリボーを踏みつけるとこは簡単にできます。少し進むと落とし穴が登場したり、敵が増えて難易度が上がります。最後はボスが登場し、難易度は最大となりますが、盛り上がりとクリア時の達成感が得られます。
こちらは中学生の頃、私が文化祭で作ったイライラ棒です。モザイクには日付と名前が書いてあります。畳1枚サイズぐらいで、理科室の電源で電球やフザーが鳴るようにしました。
コースも最初は簡単すぎたので、友人たちにプレイしてもらい、後半は難しくしたり、背が低い人のために難易度の高い(コース幅が狭い)所は下の方に配置するなどを工夫していました。
(余談ですが、この時の失敗は、棒が一瞬だけ触れても電球やブザーがならないということです。電気的な反応が遅く、また導通の保持もされないためです。どうしたら一瞬触れただけで電球やブザーに通電し続けることができるのか?を疑問に持ち、私は電気工学の道に進みました。まさにイライラ棒作りから将来の道が進んだようなものです。)
イライラ棒は名前は違えど、子供向けの工作キットとして売られていることも多く、今の子供達も知っています。
こちらは昨年、甥っ子と作ったイライラ棒です。左下に写っている電子回路は一瞬でも触れたらリセットボタンを押すまでLEDが光続けるようにしたもので、私が作ったものですが、コースは小学生の甥っ子が作りました。
簡単にクリアできると、もっと難しくしようと針金を曲げて工夫します。難しすぎればリングを広げてみたり。
私が手助けとしてアイデア提案したのは、「中間の休憩ポイント」と「アルミホイルを太く巻いて団子にする」というところです。
「中間の休憩ポイント」
目標が遠すぎると飽きてくる。一息つけるセーブポイント。
「アルミホイルを太く巻いて団子にする」
ボスや中ボス的な存在。グッと気を引き締めるポイントを入れる。
ゲーム開発者(プランナーやレベルデザイン)を目指す方ならば、一度イライラ棒のコースを考えてみるのはいかがでしょうか?
ただ針金をグネグネ曲げただけと思われるかもしれませんが、その単純な形状で、ゲームバランスを表現しなければなりません。また、実際に遊んでもらうことで、初めて気がつく「プレイヤー目線」は多いと思います。