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【ss】tie.candlestory-jaune

✽本編(漫画)のその後の小話でございます。
✽本編未読でもお楽しみいただけます。
✽以下の投稿とテーマが同じですが、ストーリーは違います。

イヴが日本に立って、1年が経った。
そばにいた時よりいっそう深く想っている。そんな春。

図書館に行っても、自分の部屋でも、ふとした時に彼女の面影を感じる。
胸が締め付けられるなんて、50のジジイが...まだ若いか。


「はぁ」

自分の深いため息も、わざわざ反応しない。
イヴが居なくなってエノワルトはずっとこんな感じだ。
生産性のない日々。

「エノワルト」
自分の名前に振り返ると、黄色の髪の医師がいた。
ここは、クリエイティブ系の学校で、もちろん彼女は部外者だ。
「ヨーテさん」

「ヨーテでいいですよ。」
「...ヨーテ」

彼女に会う度にしているトーク。
エノワルトの中では呼び捨てで呼ぶのはイヴだけだと決めていた。

そこでヨーテの荷物がいつもより多いことに気づいた。

「すごい本ですね。」
「うちの病院に、最新鋭の機材が投入されましてね。技術士が増えたり、勉強もあって」
「外に持ち出していいんですか?」
「いやいやダメですよ!」

風で飛ばされないよう屋内に入りましょう、と、エノワルト。
「すみません。息抜きに外の空気を吸いたくて...」
「それなら...」

「綺麗な植物園ですね!!」
「戦争のあと、外の人が1番に手当してくれたのが、この植物園なんです。」
「んー!風も気持ちいい」

「図書館が隣接されていて...私の特等席、そこです。」
「あら、ここからイヴちゃんのこと見てたんですか?」

ヨーテに言われて気づいたようだ。
少しだけ居心地が悪そうな顔をして、腰を下ろした。

「確かに見えますけど...もっといい席はないんですか?たまに横切るくらいじゃないですか。」
「イヴは、あそこでからなず足を止めて、手を振ってくれるんだ」
「......」

そう、このふたりの絆は、歪ではあったが成立していた。
ヨーテは、未だに2人を離れ離れにしたことに少し罪悪感を持っていた。

「仲良かったんですね...」
「今でも、愛している。遠くにいても、彼女のためならなんでもできるし、いつでもそばにいたいと思っている。」

「......」

「元気でやっていますかね?」
「え、あはい、最近では同居人の負担を軽くしようと、パートも始めたようですよ。」
「彼女は愛嬌があるから、言語は違くても、きっと馴染めるだろう。」
「私もそう思います。」

少しの沈黙。

「それを聞いても、安心できないのは、私はまだおかしいですかね?」

「そんな!大切な人の近況を心配するのは当たり前です!」

「よかった、自分の異常性には気づきましたが、何が正常なのか、分からずいて...お恥ずかしい。このままでは、学校からも追い出されてしまう。例の騒動以降、私の講義は誰も参加しません。」

「......見ますか?」
「?」

ヨーテは手帳から一枚の写真を取り出した。

「見せようか迷っていたのですが、日本で楽しくしてるみたいです。これだけ、見せるだけ...エノワルトさん?」

エノワルトの目からは大粒の涙がぼろぼろと。

「ああ、こんな笑顔、私も見た事ない...」

写真中欧に、イヴの笑顔、その後ろには....

「この花、この植物園にもありますね。」

「え?」

「ほら、そこ名前は...」

「jaune...」

ジョゥンヌという花は、日本でも咲いたらしい。
山吹と呼ばれる花は、ケイントラストでも花を咲かせ、2人が同じ世界にいると証明している。

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